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2F/当番ノート

イベント Kendama Fest! Japan X SG 2

当番ノート 第26期

シンガポールの留学も終わり、予定では今日日本に戻っている予定です。風邪をひかないように気を付けないと。

先週の続き、Kendama Fest! Japan X SGの様子を書いていきます。座談会からですね。

指導会で場が暖まってきたところで、次は座談会です。座談会では、橋詰七段、Hansさん、Wenがけん玉について話します。けん玉との出会い、けん玉の魅力、けん玉の将来などについて、20分程度話して頂きました。Hansさんによれば、けん玉人気はシンガポールで昨年に比べて落ちてきているということですが、それを必ずしも悪いこととは受け取っていないようです。少しでも本当にけん玉が好きな人がいれば、その人たちから再び芽吹くと。
他のけん玉団体の経験を聞く限り、座談会はあまり聞いてもらえないのではないかと危惧していました。子供たちはあまり興味がないようです。想定通りという感じもしましたが、聞いている人も一定数いて、良かったと思います。

座談会

その間に向井六段はパフォーマンス用の衣装に着替えていました。いよいよ次は向井六段のパフォーマンスです。この企画は向井六段のたっての要望で加えたものです。僕自身、日本でもなかなか見られないので、非常に楽しみです。

KendamaSGの創設者、Raziさんからビデオを頂いたので、間の時間に流しました。KendamaSGはシンガポールでのけん玉の先駆者と言える存在で、けん玉イベントを開くなど非常にアクティブな団体の一つです。急用でRaziさんはいらっしゃることはできませんでしたが、8分間のビデオを作って頂きました。Raziさんの話からはけん玉愛を感じます。日本に旅行に来た時にけん玉を買って、その時以来自分でビデオを見ながらけん玉を練習したようです。

Kendama Fest! Japan X SG Razi-san

3時になり、いよいよパフォーマンスです。まずは、37thflowというシンガポールのグループが技を披露してくれました。KendamaSGからの2人が組んだチームで、2人ともフリースタイル大会に出てくれています。ストリング系の技を多用し、かっこよく技を決めます。
次は向井六段のパフォーマンスです。天井が低かったため、ステージを降りたところ、部屋の隅で行うことになりました。演技が始まると、会場がピタッと静かになりました。普段はとても元気でいつもけん玉を触っているシンガポールの子供たちの目も釘付けです。技を着実に決めつつ、音楽に合わせるけん玉でした。魅せるけん玉とはこういうものかと思い知りました。自分もパフォーマンスをすることはあるのですが、衣装から考え、練習に多くの時間をかけている向井六段のパフォーマンスには到底及びません。

パフォーマンス1

パフォーマンス2

audience

イベントの責任者として時間を常に意識していたので、実はイベント中、ずっと心は落ち着きませんでした。でも、この向井六段のパフォーマンスには本当に心から引き込まれました。興奮しました。自分のけん玉の原体験を思い出しました。小学三年生の時です。けん玉協会北摂支部の練習会に初めて行きました。北川五段(当時)のパフォーマンスは今でも脳裏に焼きついています。両手を使って、けん玉を操る。それはマジックのような感じでした。けん玉でこんなこともできるんだ。自分にとって、けん玉の可能性がぐんと広がった瞬間でした。
恐らく今回の向井六段のパフォーマンスはけん玉の可能性を広げる、ある種の原体験になりうるのではないか。僕がかつて経験したように。こういう原体験があれば、一度けん玉から離れても何かけん玉に戻ってくる拠り所になると思うのです。たとえけん玉に戻ってこなくても、その人の中で大切な思い出になるのではないかと。将来、参加者の一部でも構いません、「このイベントが今もけん玉を続けている原体験になったね」と言ってくれるイベントになったとすれば、非常に嬉しいことです。
向井六段のパフォーマンスはそういう意義を持ったのではないかと思うのです。
さらに、けん玉をしている人に限らず、皆さん息を呑んでご覧になっていました。会場全体が湧いていました。けん玉を知らない人、興味もない人にとってもけん玉のかっこよさを感じてもらえたのではないかと思います。大盛況にてパフォーマンスが終了しました。

そして、最後にフリースタイル大会の決勝戦です。7人の予選を勝ち上がった選手と招待選手の向井六段、合わせて8人で戦います。向井六段はパフォーマンス後で、お疲れの様子です。
優勝賞品はGlokenから頂いた夢元無双-Spring Yellow-というけん玉です。その凄さを知ってもらうために参考として価格を紹介すると、1万円です。もう一度言います。1万円です。シンガポールではもっと高いです。誰が夢元無双を手にするのか。結果は誰にも分かりません。

1位賞品

演技の前に選手には意気込みを語ってもらう時間を作りました。MCのElliotがうまく回してくれて、演技前の選手の緊張と興奮が伝わってくるようです。
流石、決勝戦。高度な技が飛び出します。Kendama World Cupの昨年のレベル10の「竹馬渡りからうぐいすの谷渡り」を決めてきました。ありえません。
竹馬渡りからうぐいすの谷渡り

フリースタイル大会決勝戦

人によってプレイスタイルが違うので、見ていて面白いです。
来場者も応援のまなざしを向け、手に汗を握りながら見ています。

半年間準備してきて夢に見ていた決勝戦がまさに今行われている。
自分が子供のころを思い出しました。自分自身、大会に出たことも何度かあります。大会前はひたむきに練習して、いざ本番には緊張感に打ち勝とうとしていたなあ。かつての自分自身を選手たちに重ね合わせました。
それに、自分が大会を開いている。シンガポールで大会が開けている。世界にけん玉が広がっている。人が集まって、ステージで戦っている。
2週間前には場所すら決まっていなかったのです。開催すら危うかったこのイベントが、ようやく終わる。嬉しいとか悲しいとか特定の感情はないのに、それでも、なぜか涙が出そうになりました。

審判のお三方に評価シートを埋めてもらいました。計算したところ、まさに接戦です。協議を行いました。本選の評価項目は難易度、成功度、独自性、技のつなぎ、姿勢の美しさの5つあります。それぞれを10段階評価し、難易度を3倍、成功度を3倍、創造性を2倍、技のつなぎを1倍、姿勢の美しさを1倍して、それぞれの点数とします。

10分くらい協議したかと思います。素点だけではもはや評価ができません。何を重視するか。難易度、創造性・・・それで結果が変わってきます。美を評価するのはめちゃくちゃ難しいですね。配点を2月に考えたとき、産みの苦しみのようなものを感じました。だからこそ、審判が非常に大事になってきます。

ようやく結果が出ました。

授賞式の前に、来場者の方対象に、Lucky Drawを行いました。日本のけん玉やアメリカのけん玉が対象です。何と、一等の日本のけん玉セットは向井六段が引き当てました。そういうこともあるんですね。

そして、授賞式です。夢元無双を手にするのは誰なのか?

結果、1位はJerel君、2位はAriel君、3位は向井六段になりました。1位のJerel君はきちっと難度の高い技を決めていっていました。
橋詰七段から講評を頂きました。成功率を高めること。これが大事だとおっしゃっていました。自分でも、ストリング系の技でもきっちり決まっていたら、点数が伸びていただろうなと思う子はたくさんいました。成功率が順位を分けたのでしょう。

最後にみんなで写真撮影をしました。

全体写真

片付けを終えて、RedhillのMRT駅に着いたとき、実感がありませんでした。まさに準備に向かうかのような感覚でした。長く待ち望んでいたことが成就すると人間こんな状態になるのでしょうか。

本当にたくさんの人に来て頂きました。色々な困難もありました。2週間前には場所も決まっておらず、綱渡りでした。NUSではテスト期間中にも関わらず、チームメンバーも本当に頑張ってくれました。不安をいい方向に裏切ってくれました。
今回、控えめに言っても、来場者のほとんどの方に満足して頂けたのではないかという自負があります。イベントを通じて、けん玉の可能性の広さを感じてもらえたとすれば、とても嬉しいことです。けん玉がシンガポールでも続いていくといいと思います。

松尾 健司

松尾 健司

けん玉歴15年。小4のときにけん玉4段を取得。交換留学先のシンガポール国立大学(NUS)にてKendama Club Enを立ち上げ活動中。4月30日にシンガポールにて、Kendama Fest! Japan X SGを開催する予定。
他に鉱物採集、語学、旅行を趣味にしている。

Reviewed by
青木 直哉

"恐らく今回の向井六段のパフォーマンスはけん玉の可能性を広げる、ある種の原体験になりうるのではないか。僕がかつて経験したように。"

(記事より引用)


僕はかつて「あなたがステージでジャグリングをしている姿を一年前に見て、娘がジャグリングに夢中になりだして」というイギリス人の親子に会ったことがあります。
いうまでもなく、とてつもなく嬉しかったのを覚えています。

何かの「上手さ」は、それを見せる人も、受け取る人も幸せにするんだな、と感じた。

だから折に触れて時々そのことを思い出さないと、なんで自分がこれをやっているんだったか、上手くなる必要性というのはなんなのか、忘れてしまうことがある。

上手くてかっこいい、というのは見る人を希望で満たすのだ。

もし一年後とか、五年後とか、このフェスティバルのことを、引き出しの奥にしまってある大事な古いもののことについて語るように語ってくれる人が現れたら、きっとそれはこのフェスティバルを作った松尾さんのこころを存分に満たすのでしょう。

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