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2F/当番ノート

けん玉流行の秘密

第26期(2016年4月-5月)

こんにちは、松尾です。

シンガポールにいると、本当に季節感を感じないものです。日本のFacebookの友達が投稿した紅葉の写真に殊更に秋を感じてしまった11月です。

12月のある日、道路を歩いていると、反対側でスコールが降り始めているのが見えました。対岸の雨!30秒後、スコールがこちら側にも襲いかかってきました。天気の変化を1メートル単位で感じられるとは思いませんでした。
その日食べた、炒果条はペナンで食べたものくらい美味しくて、写真を撮りました。朝、寮で食べる炒果条に比べて麺にコシがあり、味がしっかり付いています。

たまたま入った雑居ビルの5階で巡りあった、炒果条。300円くらい。

たまたま入った雑居ビルの5階で巡りあった、炒果条。300円くらい。

実は、Japan Creative Centerにけん玉イベントを見に行っていたのでした。この場所は大使館肝いりの日本紹介施設で、よく日本関連のイベントをやっています。今回は山形県の産品の紹介を行っているのでした。山形県には有名なけん玉会社があり、シンガポールでけん玉が流行っているということもあり、イベントが企画されたようです。僕が使っているブランドの「大空」の展示なので、とても親近感がわきました。
会場には既に人が多くいました。日本人もいますが、特に多いというわけではありません。子供たちにはけん玉が無料配布されていました。10年前だったらもらえたのに…
生憎の雨なのに、大盛況でした。

1時間のけん玉イベントのあと、山形県の職員の方、大使館の方やKendamaSGの方とお会いして、話しました。2015年はSG50と言って、シンガポールは独立50周年でした。2016年は日本シンガポール外交樹立50周年(SJ50)の記念すべき年です。今後につながっていく繋がりができたようです。

子供達とても楽しそう

子供達とても楽しそう

日本けん玉協会の方、CerealKendamaの友達、KendamaSGの方から話を聞くうちにいろいろなことが分かってきました。

シンガポールではけん玉が流行っています。分かりやすい写真がこちらです。こないだ4月のイベントですが、100人くらい集まっていました。

CerealJam5

CerealJam5

流行り始めたのは1,2年前くらいかららしいのですが、けん玉を扱う店も増えています。

Spinworkx:世界各国のけん玉を取り扱う

Spinworkx:世界各国のけん玉を取り扱う

今、世界にけん玉が広がり始めています。「世界」を冠する大会やイベントも日本で開かれるようになりました。10年前には数えるほどしかなかった、けん玉ブランドは今や世界中にたくさんあります。
世界中でプレイされるようになったけん玉ですが、そのスタイルは大きくけん玉道とフリースタイルの2つに分類できます。とても簡単に言うと、けん玉道は伝統的なけん玉のプレイスタイル、フリースタイルはストリート系のビジュアル重視のプレイスタイルです。後者はここ数年で発展してきました。特に、ある日本のけん玉プレイヤーに聞いたのですが、アメリカが一つ頭を抜けているようです。

今けん玉は世界に広がっていますが、僕はアメリカのけん玉プレイヤーのビデオによる影響が大きいと思っています。2年前にKendamaUSAの動画を見たときに衝撃を受けたのを覚えています。これまでのけん玉に対するイメージを打ち壊してくるような感じでした。

https://www.youtube.com/watch?v=SNwUFDMSkZE

かっこいい。これが世界でけん玉が流行っている一つの大きな要因なのだと思います。「伝統」を気にすることのないアメリカのプレイヤーがけん玉の可能性を気づかせてくれました。

僕自身、15年間けん玉をやってきたわけですが、けん玉については色々と思うところがありました。
まず、なぜけん玉を「日本の伝統文化」と呼ぶのか。これはずっと前から疑問に思っていました。けん玉って、日本では伝統玩具として認知されていますが、今の見慣れた形をしたけん玉はたかだか100年くらいしか歴史がありません。しかも、最古のけん玉に似た遊びの記録は16世紀のフランスのビルボケというけん玉です。

実は、けん玉クラブを作った一つの理由は「けん玉の可能性を試す」ということです。例えば、サッカーと聞いて、どこの国が強いとは言いますが、どこの国のスポーツだとは言わないですよね。けん玉もサッカーと同じように国を超えて、誰でもどこでも楽しめるものだと思ったんです。
自分自身、これまで海外に行ってけん玉を見せることが何回かありました。どこの国でもけん玉を見せるとうけます。やってもらうと楽しいねと言ってくれます。でも、続けてもらうにはそれなりのハードルがあるようです。それを乗り越えてもらうためには、長期的な活動が大事だと思い、クラブを作ったわけです。

国際地学オリンピック(アルゼンチン)での披露 今年は8月に三重で開催です!

国際地学オリンピック(アルゼンチン)での披露
今年は8月に三重で開催です!

「普遍的なけん玉」を目指すべく、当初はけん玉を日本と結びつけることを極度に嫌がっていました。けん玉がシンガポールに広がった時に、日本という一つの国と結びついたイメージが根付くのが嫌だったのです。しかも、自分がけん玉の「日本文化性」を理解していないのに、日本を押し出すのもおこがましいなと。

それでも調べていくうちに、けん玉道の良さにも少し気づけたと思います。
そもそもけん玉「道」という以上、「けん玉を通じて精神鍛錬をする」という意味がこもっていると思います。自分自身、もともとけん玉道とほかのけん玉の遊び方の違いはよくわかっていませんでした。北摂支部の方と相談するにつれ、ほのかに分かった気がします。
日本のけん玉道の大会では完成度を高めていくことを求められます。兼好法師が「この一矢に定むべしと思へ」という言葉を残しています。おざなりにする心を持たないために、弓矢の初心者が2本の矢を持ってはならないという戒めの言葉ですが、求められるところは似ています。
また、日本のけん玉の特徴ですが、子供だけでなく大人もやっているということがあります。シンガポールでは圧倒的に子供の競技人口が多いです。また、成功率も高く、精緻な技のこなしが特徴です。
日本のプレイヤーはシンガポールでも一定の尊敬を集めているようです。僕自身、シンガポールのプレイヤーには正確性で驚かれることが度々あります。

技術はまだしも、頭は最新のけん玉界に追いついてきたようです。じゃあ、Big Projectで何をしようか。
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告知 けん玉イベント”Kendama Fest! Japan X SG” (4/30まで、毎週告知していきます。)
今月末、クラブ主催でけん玉イベント”Kendama Fest! Japan X SG”を開催します!
https://www.facebook.com/events/1703933343182294/
4/30(土)、シンガポールにて開催予定です。日本、シンガポールのけん玉有名プレイヤーが参加します。フリースタイル大会、日本けん玉協会による指導会、座談会、けん玉団体パフォーマンス大会、向井六段とシンガポールのけん玉団体によるパフォーマンスという内容です。
けん玉を見るのもよし、選手として参加するのもよし、けん玉の話を聞くのもよしというイベントです。是非、お越し下さい!!

松尾 健司

松尾 健司

けん玉歴15年。小4のときにけん玉4段を取得。交換留学先のシンガポール国立大学(NUS)にてKendama Club Enを立ち上げ活動中。4月30日にシンガポールにて、Kendama Fest! Japan X SGを開催する予定。
他に鉱物採集、語学、旅行を趣味にしている。

Reviewed by
青木 直哉

ジャグリングをしているとよく「ジャグリングってどこの国のものなの?」と聞かれます。
ですが実際は、たとえば「ジョギング」と同じくらい普遍的なものです。

「『ジョギング』はコンゴ共和国北東部の人々が成人になるために行う通過儀礼が、フランス人によってヨーロッパにもたらされ、東インド会社を経由し、アジアにもたらされたことから世界的な広がりを見せた」
わけではないのと同じように、今私が扱う「ジャグリング」は、ほぼ動詞でしかなくて、ものを手に取って操れば、それは「ジャグリング」なのです。

「文化の国籍」は、21世紀のアツい話題。
面白ければいいじゃん、とごった煮を開き直るか、たとえば「ジャパニーズ・カルチャー」という色をかたくなに固持するか。
文化の輸出入が簡単になった今、エキゾチシズムは積極的に「付与」しないといけないのも事実です。
エキゾチシズムが「広い世界」に憧れを持つ人を惹きつける一方で、そんなものを夢見るより、何が一番優れているかこそを競おうじゃないか、という意見だってあって当然です。

「けん玉」と言ったらもちろん日本の伝統玩具。
しかしそれが"Kendama"というオープンソースとしてひとたび国籍や伝統を剥奪され、新しいまっさらなキャンバスとして「スキル・トイ」「自己表現の形」として提示された時、そこには今までと全く違った「虹色の文化」が生まれます。

問題は、虹は綺麗だけど、それを構成する各々の色も独立して存在していてくれないとちょっと困っちゃうな、ということです。虹のない世界を想像することはもうできないし、かといって虹ばっかりだと、ちょっとつまらないかもしれません。

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