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2F/当番ノート

1020号室

当番ノート 第29期

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ひとはいつもすれちがう。

瞬きの間に、すれちがう。

ことばは待ち合わせ場所だ。

絶対の目的地なんかじゃない。

重なり合うことなんてない。

イコールで結び会うことなんてない。

それでもどこかで会いたいと

かすかなことばをならべたりする。

そのことばをまた、ことばでつないでいく。

あなたに、あなたに、つないでいく。

すこしでも、ちかづけるように。

いちばんちかくへ、いけるように。

そうして、あ、。

瞬きの間に

ひとはいつしかすれちがう。

それでも、あ、。

瞬きの間を

すれあえるだけ、うまれるひかり。

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今週は、いつかの10月20日に、ことばを継いでみました。

「ことば」というかたちあるもの

たしかそうなものに失望していた時代があって

多分それは、過信していたからなんだと、いまはおもいます。

「すれちがい」は別れのことばのようだけど

たしかにそれは出会っているよね、って

失望の中、気づいた瞬間

からだのなかに火花が散ったみたいな気持ちになりました。

だからいまは

あのときの失望の瞬間にだってひかりをみています。

福永マリカ

福永マリカ

役者、脚本、音楽。24歳。
「いつかのわたし」が書いたメモを、
今のわたしが受け取って
「今」として、ぴちぴちのことばにしてみます。

Reviewed by
はらだ 有彩

福永マリカさん「1020号室」に寄せて

『「すれちがい」は別れのことばのようだけど
たしかにそれは出会っているよね、って
失望の中、気づいた瞬間
からだななかに火花が散ったみたいな気持ちになりました。』

もう会わない。もういない。もう帰らない。戻らない。
「すれちがい」の理由は100組いれば100通りですね。
一度離れてしまったらもう私たちにはどうすることもできない。
すれちがってもう二度と会わない先生。
すれちがってもう二度と会わない犬。
すれちがってもう二度と会わない女の子。
すれちがってもう二度と会わない男の子。

だけどマリカさんの言葉のように、「もう」会わないこと、すれちがっていることは、
必ず一度は出会ったということだ。
出会っていなければ思い出すことができない。知らない人には手紙を書くことができない。
その手紙は投函されず、誰にも読まれず、ずっとしまわれているかもしれない。
だけど封筒にはきっとこう書かれているだろう。

「1020号室 宛て」

/終

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