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2F/当番ノート

223号室

当番ノート 第29期

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雪はもう雨になっちゃって

あいたいってもういえなくなっちゃったよね。

せっかくつもった雪が雨に溶かされてゆくのをながめて過ぎる時の中で

この部屋は、あいも変わらず

しんと冷えて澄みとおっています。

気づけば青い朝が来て

じゃあきっと今日は晴れなんだろうね。

晴れた空を無視して、あたたかな部屋で珈琲を飲もうか

なんて

またあたらしい口実を

実らない口実をさがしたりしたけれど

布団をかぶせて、かき消してしまったね。

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今週は、いつかの2月23日に、ことばを継ぎました。

めんどうくさそうなかおをしてうれしいときや

おこったようなかおをして泣きたいときもあって

どうも感情の出口を間違えがちなわたしです。

冬は一層、ひえてこわばったからだが

出口をふさいできやがるからなあ。

また冷たい風が吹いて、今年も口実探しがはじまる。

「コーヒーゼリー」とよばれたはずの

タイトルに似合わず目出度すぎたコーヒーゼリータワーは

居心地悪そうにポツリと夜景に浮かんでいました。

福永マリカ

福永マリカ

役者、脚本、音楽。24歳。
「いつかのわたし」が書いたメモを、
今のわたしが受け取って
「今」として、ぴちぴちのことばにしてみます。

Reviewed by
はらだ 有彩

福永マリカさん「223号室」に寄せて

「晴れた空を無視して、あたたかな部屋で珈琲を飲もうか
なんて
またあたらしい口実を
実らない口実をさがしたりしたけれど
布団をかぶせて、かき消してしまったね。」

曖昧な直方体にカットされたコーヒーゼリー。そのやわらかな層の上にソフトクリームの雪が積もっている。そして、赤い果物。
私はこの写真を見たとき、冬山のようだと思いました。

真っ白な雪が積もっている間しかあなたに会えない。雨に変わってしまったらもう会えない。
だけど雪が残っているうちは、黒いゼリーに化石が眠っているかどうかも分からない。
コーヒーゼリー・タワーは、春がせまるコーヒーゼリー・マウンテンにも、目覚めを待つコーヒーゼリー・ベッドのようにも見える。

「また冷たい風が吹いて、今年も口実探しがはじまる。」

だけど闇夜のはるか向こう、ずっと遠くであなたも雪どけを見ているかもしれない。
あたたかい部屋でコーヒーゼリーの地層を掘り返して、いつかの口実を発掘しているかもしれないから。/終

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