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2F/当番ノート

私と向島百花園

当番ノート 第34期

百花園    
このたび火曜日を担当させていただく事になった、佐原まどかと申します。
 
 私、佐原まどかは生まれも育ちもスカイツリーのお膝の先、東京都墨田区東向島です。仕事は向島百花園という都立庭園の中で、お土産物・喫茶販売と、園内併設の集会施設でクラス会や法事をされるお客様への仕出し料理・飲み物の提供をする自営業をしております。
 一回目の今日は私の源である向島百花園の事を書かせて頂こうと思います。

 向島百花園は、江戸の末期・文化元年に私の先祖が作った開放型の庭園です。庶民も文人墨客も将軍様も、当時園内にあった隅田川焼きの窯で絵付けを楽しんだり、お茶を飲んだりお土産を買ったりしてゆっくりと「庭の空間」「季節の移ろい」を楽しむ場所として「時」の人々から愛されていました。しかし、大地震、大洪水、大空襲等の様々な困難を経て東京都に寄贈され、現在は都立公園として運営されています。都立公園の多くは、大名や富豪の屋敷内にあった個人の庭を開放しているので、大名庭園や洋式庭園が主流となっています。しかし向島百花園は江戸の庶民が、いつでも田舎を感じに来られるような「自然のままの趣をもち風流の極致すをゆく庭園」として開園当時から夏は草木が鬱蒼と茂り、冬は裸木ばかりとなる、まさに四季の移ろいを感じ取れる庭の造りとなっています。季節ごとのイベントも企画され、今は大輪朝顔展が8月6日まで行われています。手のひらサイズの朝顔が毎朝開花し、その開花サイズを計って「優・秀・佳」と分けられ展示されています。暑さ厳しくなる前の午前中がお勧めですので、お時間ありましたら是非ご来園下さい。
 こんな百花園に少しでも興味が沸いた方、来園に際して今の時期の不安は「暑さ」ですよね。いま夏本番の我が庭は本当に暑いです、ここは常に常温です。エアコンはなく、売店に扇風機1台があるだけです(しかも、お客様の方は向いてません)。しかし皆さんが想像するような、都会のアスファルトや室外機の「ムワッ」とした鉄板の上に居るような暑さではなく。畑横の雑木林近くのような感覚で、土の地面と木々の作り出す木漏れ日が多いこの庭は、園外の道路やオフィス街とは確実に異なる常温なのです。水をまいたり、かき氷を食べたり、ぬらした手ぬぐいを首に巻けば、大概耐えられる程度の暑さです。汗をかいても木漏れ日に避難し木々のそよめきや団扇で仰ぐ風で汗を冷やす。人間が太古の昔から行ってきた暑さのしのぎ方は、土の地面と木々があるとそこそこ効果を発揮してくれます。とはいえ日の高くなる正午間際は余りお勧めしかねます、朝の涼がまだ残る午前中や、夕方近づく3時のお茶タイム辺りをお勧めします。

 さて、夏は暑くて冬は極寒な我が職場を私が継ぐ理由はいくつかあります。代々続く家業である事もしかりですが。例えば、都会の中なのに、緑溢れる贅沢なこの空間を毎日感じられること事。地域の方達との繋がりも代々強く続いていることで、街を歩くと顔見知りと気軽に挨拶を交わし合えること。そして、何より庭にいらっしゃるお客様から、フッとしたことで心に潤いをもらえる職場だと思えることが多いからだと思います。

 百花園には様々な方が訪れます。年間パスポートを持って360日くらい通い、日々の草花の変化を観察する人。大きなカメラを持って風に漂う草花、渡り鳥や蝶蝶、虫のベストショットを半日かけて狙う人。お孫さんと一緒に来るお爺ちゃん・お婆ちゃん。初デート感満載の10代カップル。手を取り合って歩く老夫婦。若い人達に車イスを押してもらいながら遊びに来るデイサービスの団体。保育園の子ども達のお散歩。介助人の人と一緒にいらっしゃる視覚障害者の方。木陰のベンチで休憩を取っているスーツの人。修学旅行生。団体のお客様。作句に勤しむ方・・・
 売店に寄ってお土産を買われたり、いろいろ質問やお話しをされていく方々もいらっしゃいます、庭でボ~~~~っとして帰られる方も多くいらっしゃいます。皆さん思い思いにこの庭に来て、それぞれの思い出や時を楽しんで帰られます。
 集会施設でよくクラス会をされる方の中には「ここでクラス会始めた当初は俺の子供まだ学生だったのに、俺もうお爺ちゃんだよ」とおっしゃっる方や。法事で利用の方も「昔、お爺ちゃんとよくココの庭に遊びに来たんだよね~懐かしい!」と話されていたり。「40年前くらい前に来たときは、こんなに小さな庭じゃ無かったけど、庭小さくなった???」などとおっしゃる方がいらっしゃったり。十人十色の百花園の思い出や、百花園への想いを聞かせていただけます。
 そんなお客様の思い出づくりに関われる「場」を提供し、売店や集会施設にてお客様の思い出の確認や共有ができる事が大好きで嬉しいのです。これはやはり、私の先祖が細々とでもこの売店と東京都との関係を維持していてくれたからだと思っていますし、気楽に来られる庭として、今までのお客様が通って下さっていたからだと思っています。だから私もできる限りこの売店と集会施設での仕出し業を続けて、「あ~~懐かしいねぇ」とお客様が言えるお店の人を続けて行きたいと思っています。
 なんだかダラダラと書いてしまいました。私の百花園愛がうっとうしく無い程度、適度に皆さんに伝わり、どなたかが百花園に興味を持って頂けたら幸いです。拙い初回を読んでいただき有り難うございました。

7月30日~8月6日まで向島百花園では「大輪朝顔展」が開催されています。期間中は朝8時半から開園いたします。午前中までが朝顔の見頃です。詳しくは公園協会のイベントサイトをご覧下さい
https://www.tokyo-park.or.jp/event/2017/05/mukoujima-20170517.html

8月24日~27日は「虫聞の会」夜20時半まで開園いたします。売店前ではテーブルを出し、生ビールや軽食販売を致します。江戸の頃から続く虫の音を聞く粋なイベントお時間ありましたら是非ご来園下さい。

まどか

まどか

東東京にある、よく言う下町在住です。生まれも育ちも墨田区東向島。二十歳から実家を出て
大田区→スイス→白金
と移動して二八歳くらいから墨田に戻ってきました。今は家業のお土産物屋をしながら、墨田の飲み仲間とゆるゆるとでも濃密に地域の事やら、子育ての事やら(私は子無し)数ある土地で墨田区を選んでくれた人達が少しでも楽しく生活できれば良いかなぁ~と思いながら動いています。

Reviewed by
猫田 耳子

ものづくりをしていると、古くから遺っているものに立ち還るときが偶に来ます。
「どうしてそれは長い時を超えて今もなお在り続けるの?」そして「今あるものが同じ時間をかけて未来に遺っていくためには何をすれば良いの?」

忘れてはいけないのは、大抵のモノコトにはそれを守り続けていた存在がいること。

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