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2F/当番ノート

制作プロセスを綴る前に|in_out

当番ノート 第50期

アパートメントに入居しました、中野目崇真(なかのめそうま)といいます。

最も長く続けてきたことは、3歳から始めたタップダンス。
表現にすることもあれば企画にすることもあります。2016年頃からはジャンルとフィールドを広げながら音を基軸に音楽へと昇華させたり、文脈を描いたり写真に納めたりもしています。

考えと思いを文章にして伝えることがとても苦手なので癖がでてくる場合もありますが、捉えにくいところがあれば直接連絡をください。
そこから対話が始まるのも嬉しいです。


昨年、2つの事故を目の当たりしたことによってPTSDを発症し、日常にノイズが走り出しました。
日々生きる命の重みは視える世界を逆さにさせたような居心地わるさと思考・想像・言動に歪みが現れ始めました。

足元が1.5cmほど浮遊しながらでも歩いて道路に出ると、車のクラクションや走行する音は脳内に鋭いペン先で突くぐらいに当たる。
雨が降った後によく漂うペトリコールもほのかな香りから傷みを生む香りに変わってしまう。
カフェ・仕事場・電車の中、どんな空間にいても縛られながら地面が沈みだす。
日常が夢の中にいる感覚でいっぱいになりました。

日常に少しずつ馴染みだしてはいますが、ふと睡眠中にうなされてしまったり無意識なときにショッキングなイメージが現れてしまったりします。
その経験を活かして、音楽にて再現をしたりデザインとして落とし込んでみたりして自己治癒もおこなってみてます。

踠いたり足掻いたり、現状を打破できない無力さに苛まれてしまう事象に面しているのかも… と。
その反面、今対峙するべく接する困難がそびえたっているのではないかとも思える。
最初はアレルギーが表出するけれど、矛盾することに対していろとりどりのアプローチをしてみたり、内在する尺度と外在する尺度をマッシュアップして測ってみたり。
その事象相応に、自分の声を大事に休息をとりながら乗り越えていきたい。


今回のタイトルである”in_out“。わたしが2018年に公開した楽曲の題名にしました。
〜 内と外 〜
この楽曲の生まれる元は、眠れなかった夜にみた夢と朝方に御茶ノ水から池袋に歩いて移動していたとき、2つのソースを織り交ぜてできあがりました。

1つ目のソース。
夢の中での出来事で、薄っすらとしたイメージの断片というか、埃のような部分のみが記憶に残りました。
神殿のような建物の中にてじっと黙って目を瞑る人がいました。
(自分の姿に似ていた)
それを天井右側からみているような視点で眺めていた。
神殿の真ん中で座っていたり立ったり、周ることもしながら落ち着かずにずっと正面を気にしている。
窓の外は雲が高速に流れ、黒い霧で覆われている。
電気はないが、白い炎が地面あたりからたくさん燃えていた。
自分に似ていた人物は後方にある扉から光りながら歩みだした。

もう1つのソース。
2018年の9月頃。
自身が主演させていただいたショートフィルムをきっかけに会うようになった友人たちと終電も逃して夜が更けるまで話していた日のこと。
御茶ノ水あたりにある歩道橋の上からみた朝焼けがいつも以上に美しく、瞬時に写真へとおさめた。
「生涯儚くとも懸命に志をもって生きることは美しく、その想いを常に抱けることは生きる原動力になる」
その言葉が脳裏に焼きつきとても熱くなった。
自然がうみだす美しさと人間がうみだす美しさに共通項があるのをみつけたきっかけだったのかもしれない。

この2つの体験をブレンドさせてみたらどうかなと興味があり生成した”in_out“。
つくりながら、ゆったり腑に落としてみる。
そしてイメージを膨らましたり、発生した仮説を検証しながら全体的にでも局所的にでもリストラクチャーしてみる。
思考と想像を巡らせた音楽的遺跡、聴いてみるみなさんにぜひ発掘してなにか発見もらいたいです。


今、全人類が手をとりあいながら、みえない敵の襲来と拡大を食い止める為に意識を集中させている。
学校・仕事場・家庭環境、それぞれのシーンでのルーティーンを変えなきゃいけない状況となり、フィジカル面においてもメンタル面においても疲弊感が蔓延しているはず。
一旦、深呼吸。
まず、今までの経験則や習慣は気にせず、直感的に『私の命の灯し方』ってなんだろうなと探りだしてみる。
その習慣の延長で他者との相違の差をそのままにしたり重ね合わせたりしてみる。
目の前に突きつけられる現実に対して、肉体と精神を落ち着かせてみるメソッドのひとつかなと時々試してみる。

次の当番ノートではぼくなりの不安との接し方とみなとみらいに訪ねた体験から生まれた楽曲”wind flow”のバックストーリーを綴りたいと思います。
読んでいただきありがとうございます。またアパートメントでお会いしましょう。中野目

中野目 崇真

中野目 崇真

2000年、池袋生まれ。実験音楽家、写真作家、体験設計。3歳からタップダンスを用いて活動し、音と共に歩んできた中での体験をここでは綴ります。

Reviewed by
福島 光帆

真っ白い部屋に鮮烈であざやかな色が現れては消えるような文章を書く人だ。

私が普段書く文章は「遅くに起きてお昼を食べて、それから散歩に行きました」という極めて具体的なものだ。
こういう、抽象的なのにはちょっと弱いんだよなあと思いながら彼の音楽を聞く。

夢の記憶と御茶ノ水で見た朝焼けの美しさからつくったのだそうだ。
これならわかる、と思った。足音のような鼓動のようなリズムと光の層のように広がりをもって重なる音。人工と自然の美しさの交わり。

前に友人がつくっていたショートフィルムの主演を務めていた彼。
その神殿に何が浮かんでいるのか覗いてみる。

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