当番ノート 第25期
君がぼくのことを、一番好きだった瞬間に それはたぶん、ぼくの予想では2年くらい前だと思うけど もしいま、10秒だけ あの時の君がぼくの前に現れたとしたら ぼくは、なにをするだろう なにか言うだろうか 休みの日、雨。 起きたらもう昼前で 寒いしベッドから出れないでいるぼくは ぼんやりとそんなことを考えています 休みの日の、頭の悪い…
当番ノート 第25期
“私、考えるんだよね。欲しいものは手に入ったなって。好きな仕事でしょ。ボーイフレンドでしょ。この町もしっくりくる。 “……でも何かひとつ、たぶんあとひとつなんだけど、足りない気がする“ その言葉たちを聞いたとき、パズルのピースを集めているみたいだなと思った。 今をずっと続けられれば、それで幸せだと思うんだ。それじゃいけないのかもしれないけど……” “ ◎ これが大切だと思うものを、ひとつずつ集めて…
当番ノート 第25期
“僕が旅にでる理由は だいたい百個ぐらいあって”*と、くるりの岸田さんが歌の中で歌っていた。 私がニューヨークに来た理由も、百個はないが結構ある。一つ目の理由は、その曲の一節とまた似ていて、その時自分がいた場所で息が詰まりそうになったのと、小さな理由が山ほどと、大きな理由としては、この街に溢れるエンタテインメントと、行動さえ起こせば巡ってきそうなチャンスの影に心奪われたから…
当番ノート 第25期
家の扉が叩かれたのは午后のハーブティーを淹れようと読書の顔を上げ、立ち上がった時だった。 窓から差し込む光は淡昏く、雨音は朝からずっと硝子を叩き続けていた。細く降り注ぐ音の中で読書をするときほど、幸せな瞬間はない。 こんな雨の日にわざわざ訪ねてくる人間はそういない。よっぽど急ぎの用か、よっぽどの変わり者かのどちらかだ。おとなしく本を読んでいた相棒が扉の方を見るなり、慌てて巣箱に帰っていくから…
当番ノート 第25期
東京から単身三重に飛び込んでNAGI編集部に入舎。ローカル出版物に携わる仕事がスタートした。慣れない土地での日々は目まぐるしく、入って間もなくして山登り取材に駆り出され毎日があっという間に過ぎていった。学生の頃のようにコンスタントにモノクロ写真が撮れない。焦りを感じつつも日々の生活に追われていった。事務所の窓に広がる田んぼが掘り返され水が差し鏡のように浮かび上がっていく。植えられた稲が茂りだし穂が…
当番ノート 第25期
別れた人に会ってきた それ別れてないじゃんね 魔が差したというかなんというか、 さみしかっただけなのかもしれないし もしかしたら、どんな顔だったか思い出したかったのかもしれない 結果から言えばね、 会うんじゃなかったなって思う たのしかった たのしかったけどね 2メートルくらいの長さの棒の端を お互いのおでこにあてて 棒を落とさ…
当番ノート 第25期
旅先の窓の外に海が見える部屋で、ホゼの言葉を思い出していた。 「光はまだ知らないこと」 ああ、あなたの言った通りだ。と私は思う。 ホゼに会いに行った5年前、私は彼に「あなたにとっての光と影って何?」と聞いた。 怪訝な顔をした彼に、慌てて「陽射しがあなたの顔に素敵な陰影をつけていて、だから聞いてみたくなったの」と言い訳をしたのだけれど、あのとき私は切実に人の中にある光と影を知りたいと思っていた。 あ…
当番ノート 第25期
ニューヨークで暮らし始めて7か月。日々どこかで、思いっきり笑っている人、びっくりするぐらい泣いている人、何があったの?と聞きたくなるぐらい怒っている人、なんだかよくわからないけど楽しそうな人、とにかくエモーショナルな人々をよく見かける。 かっこいい靴を履いている人を見かければ“それどこで売ってるの?最高にクールだね!”と話しかけ、困ってそうな人がいれば声をかけ、当たり前に手を差し伸べる。と同時に、…
当番ノート 第25期
今日も西のはずれにある海岸へ来て、手頃な細さの流木を探した。 冬の海は濃い藍を湛えていて、海岸を歩くひとは私以外いなかった。天は鈍いろの雲が垂れ込め、砂浜は実にさまざまな漂着物であふれている。古い空き壜、硝子の浮き玉、ケルプ、小型の冷蔵庫、潰れたホヤ、靴、箒。 漂着したごみを数えながら貝殻を拾っては、そっと耳に当てた。昆布を踏んだ拍子にぐに、と気持ち悪い感触がした。 しばらくぼうっと歩…
当番ノート 第25期
「あんどろまらけの歌」2011年、インクジェット、手製本 写真家になるにはどうしたらいいんだろうとぼんやり考えていた。学生時、地方に在る余白のようなものが気になり休みを使っては青春18切符や夜行バスで各地方へ足を運び撮影していた。車窓に流れ込む平原や集落、濡れた浜辺に肥大する植物群。それを重ね手製の写真集を作ることが好きでいつかは自分の写真集をと思い描く学生だった。卒業のリミットがちらつき、自分の…
当番ノート 第25期
鏡を見ている ちがうか 鏡にうつってる私をみている そういう観点からいくと私も、あの人にとっては鏡みたいなものなのかもしれない あの人は私を見ているようで、私を見ていないんじゃないかと思うことがある あのひとはあのひとを見ているんだ 目ん玉が、ひっくりかえったらいいのに それでも私は、まぬけにも化粧をしている ほんとうはもっと質…
当番ノート 第25期
昨年の春、夢を追い求めニューヨークに引っ越してきました。現在は、ブルックリンのアパートで陽気なルームメイト2人と楽しく生活しています。初めての海外暮らし、不安で胸がいっぱい、、、なんてことは来る前も来た後も一切なく。生き心地は抜群にいいけれど、生きていくにはなかなかの気合いが必要なこの街で、日々切磋琢磨しながらも、のびのびと生きています。 不安はないけれど、驚くようなことは山ほどあります。多様な人…