当番ノート 第24期
雅楽をご存知でしょうか?雅楽は中国大陸、朝鮮半島から渡ってきた千数百年に及ぶ日本最古の音楽で「世界最古のオーケストラ」と言われています。面白いのは複数の弦楽器、管楽器、打楽器によるオーケストラ編成であるにも関わらず指揮者がいないということです。西洋音楽的な主役による絶対的な統括力によって推進するのではなく、各奏者の阿吽の呼吸によって合奏されるというのは非常に日本的な姿勢のように思われます。 雅楽を…
当番ノート 第24期
ラジオDJとしてデビューした時から、40代になったら本格的に朗読がやりたいと思っていた。 高校生の時、NHK杯全国高校放送コンクールの朗読部門に挑戦した。 放送部の顧問の先生と何度も練習をしたが、コンクール当日はあまりの緊張で上手くできなかった。 今でもキリキリ痛むくらいの記憶。 その時点で朗読がイヤになってもおかしくはないのだが、 何故か私は物語を声に出して読むことが好きだった。 FM802でデ…
当番ノート 第24期
歌舞伎町の区役所通りを新大久保方面に少し進むと、左手に風林会館というビルがある。風林会館は、新宿歌舞伎町の中でもとりわけ付近のアウトロー密度が高い事で有名な総合レジャービルだ。1990年代の危険な歌舞伎町のイメージの最先端にあった場所で、1階にある喫茶「パリジェンヌ」は暴力団関係者による会合が頻繁にあったり、銃撃事件が多発するなど伝説的な喫茶店として名を轟かせていた。 その向かいに思い出の抜け道と…
当番ノート 第24期
大きなチャイムが12時を告げた。 僕は勉強をしていた手をとめ、顔をあげると同時に、彼女のくっきりした二重の瞳を捉えていた。お互いの目が合った。いつもと変わらず。その瞬間に目が合うことを僕達はもう既にわかっていた。 僕と彼女は図書館の自習室にいた。そこは、四人掛用の木製テーブルが計八台あり、休日は受験生や読書をしにくるお年寄りで、すぐに席は埋まる。ただ、その日はいつもと違って、ちらほらと空席が目立っ…
当番ノート 第24期
かつてこの国には『FADER』という音楽雑誌があった。。というわけで今回はこの音楽雑誌FADER編集発行人でもあった佐々木敦さんの著書を取り上げてぜひ紹介したいなと思います。自分の知る限りこれまでご紹介してきた音楽含めたこの周辺の分野(とりわけインプロヴィゼーションとサウンドアート)について同時代性のある内容を日本で初めて書かれた方だと思いますし、自分にとっても影響は大きく、フリーインプロビゼーシ…
当番ノート 第24期
2016年が始まった。 今年の自分がどう行動していこうかと考えた時に、私はどうしても“難民”のことを考えてしまう。 2015年12月6日。 エイズ孤児支援NGO PLAS 世界エイズデーチャリティパーティーで司会をした。 PLASのイベントでの司会は2008年から続けている私の大事な活動の一つである。 私が番組で社会問題を初めて扱ったのは、1993年。大学2年生の夏。 帝京大学放送研究会TUBEに…
当番ノート 第24期
新年あけましておめでとうございます。 今年も引き続き、ご一読いただけるとうれしいです。よろしくお願いします。 早いもので、連載も折り返しを迎え、今回を除けば、残すところ、あと4回。 フェイスブックやツイッターで反応してくれる人以外は、誰が読んでくれているか、いまいちわからないのだけれど、年末に出先のイベントでたまたま会った知人が、「連載読んでるよ~」と言ってくれたりすると、「あ、意外とみんな読んで…
当番ノート 第24期
「今年は良い年だったのかなー」 と、うしろにはてなを浮かべてしまうようなことを、ここにきて不意に考えます。少なくとも嫌な年ではなかった気はしますが、ただこれは時間の仕業で、都合よく嫌な記憶だけが薄くなってしまったからなのかもしれませんし、よくよく思い返すと嫌な年だったような気もします。忘れているだけで。 12月31日を担当するのも何かの縁ということで、ふと立ち止まって、今年あったちょっとした自分の…
当番ノート 第24期
今年はやたらとアルバムリリースが重なりました。自分の場合は物書きなんかと同じで作品毎の題材と内容に合わせてレーベル(作家でいう出版社にあたる)を決めるという形なので、結果として各レーベルのリリーススケジュールが重なったということなのですが、それでもそれなりにパブリシティやるとなると結構大変だったりします。。が、我が子の晴れ舞台に何もしない親でいるわけにはいきませんからねっ。殆どがヨーロッパのレーベ…
当番ノート 第24期
ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。 今年はこの曲と生きたと言っても過言ではない。 ストレイテナーを初めて知ったのは、ラフォーレミュージアム原宿で開かれたイベントライブ。 そのイベントに出ているART-SCHOOLを観に行き、彼らの出演が終わって帰ろうかと扉に手をかけた瞬間、 私の後ろで鳴っている音に惹かれた。 えっ?何??と思って振り返ったら、ステージにはヴォーカルとドラムのみ。 えっ…
当番ノート 第24期
実家から荷物が届いた。母ちゃんからは、クリスマスプレゼントのニット帽と手袋。母ちゃんはけっこうマメで、誕生日やクリスマス、バレンタインと毎年、何かしらプレゼントを送ってきてくれる。実家からの贈り物は、そこに言葉がなくたって、いつも温かい気持ちにさせてくれる。 父ちゃんは自家製の油みそと豚の燻製、島らっきょを送ってくれた。父ちゃんの手料理は絶品で、今までシェアハウスやCan’s BARな…
当番ノート 第24期
改札を出てきた僕に気付いたみち子さんは、軽く会釈をしにっこりと笑っていた。 ベージュのダッフルコートに白のスカート、緑と赤の混じったチェックのマフラーという格好の彼女に、ごめん待ったかな、と訊くと、ううん全然だよ、と静かに言った。いかにも初めてのデートだというやり取りを済ませ、新宿から六本木に向かうため地下鉄を目指し歩き出した。 「今日はどんな授業だったの?」 口を切るのは決まって僕のほうだ。 「…