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3F/長期滞在者&more

世の沈鬱を水カンで凌ぐ。

長期滞在者

2015年11月は色々あった。

やきものの仕事用のウェブサイトを作ってみた。
名刺も持っていないので、最低限これくらいはしなければ、
ということで作ったのだけど、こんなので役に立つのだろうか、
という危惧が無きにしも非ず。

友人が送ってくれたYouTubeのリンクで
水曜日のカンパネラを知る。
ハマりすぎて今でも毎日聞いている。
ほぼ中毒状態。
「ミツコ」
「マリー・アントワネット」
「ディアブロ」
「モスラ」
「千利休」
「桃太郎」
「西玉夫」
などなど、とにかく聞き続けている。
ラップなのに歌詞にアグレッシブな攻撃性がないところがいい。
というか、ヒップホップが持っているそういうところを
遊び倒しているところが素晴らしい。

ヘルシンキに住んでいる息子が、ロッククライミングの合宿で
スペインに一週間滞在した。
彼が生まれる直前に作った舞台作品中でぼく自身が着ていたシャツを着て
岩によじ登っている写真を彼の母親が送ってくれた。
感慨深いものがあった。

パリでテロが起こり、それが計画されたのがブリュッセルで、
しかも今ぼくが住んでいるモーレンベークという地区だということが判明した。
ブリュッセルの警戒レベルが最高の4に引き上げられ、
物々しい武装をした警官隊が市内いたるところに配備され、
装甲車をあちこちで見かけた。
その割には、道行く人々は普段通りの生活を淡々とこなしているように見えた。
その日は、朝からアカデミーで作陶していたのだけど、
前日より冷えてきたと思っていると、みぞれ混じりの雨が降り始め、
すぐに雪になった。
街の空気も天気も重苦しい日々がしばらく続いた。
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数日後にはトルコがロシアの戦闘機を撃墜した。
警戒レベルが上がったせいで、公共施設は閉まってしまい、
急遽アカデミーも休みになったので、特にやることもないまま、
カフェで読書をしている時に、そこのテレビで速報を見た。
世界中が不穏な流れに乗ってしまったような気がした。
プーチンだけがその流れに乗せられまいと奮闘しているように見える。

警戒レベルが意外に早く下がり、
それにつれてアカデミーが再開してみると、
以前から相性の悪かったそこの教師と一悶着あり、
その人がいる時には行かないことにしてしまった。
これで週の4日は陶芸以外のことをやる時間ができた。
ので、とりあえずは吉川英治の作品を片っ端から読み続ける。
彼の作品は青空文庫にあるので、ただ読みである。
有り得ないくらい有り難い。

そうこうしているうちに、なんと水木しげるさんが亡くなってしまった。
そういえば水木氏は自分の体験をもとにして、反戦の意思を込めた作品をたくさん描いていた。
安全保障関連法案や改憲に反対する人に対して「平和ボケ」と切り捨てる人がいるが、
そういう人たちは水木さんや井上ひさしさんのこともそう呼ぶのだろうか。
というか、戦争の悲劇を覚えていたり、忘れないようにしたり、それを学んで引き継いでいこうとする、
その結果、平和を求め反戦を主張するというのは、とても理にかなっていることだ。
その人たちは戦争が最悪のものだという認識をしっかり持った上で、
平和を求めているのだから、平和の中にあって、平和についてボケてはいない。
長い平和の中で戦争の痛恨を忘れ、それを共有できず、
さらには、もうそろそろ戦争したっていいんじゃね?みたいな方向に
突き進もうとする人たちこそ平和ボケしているのではないかと思う。
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ひだま こーし

ひだま こーし

岡山市出身。ブリュッセルに在住カレコレ24年。
ふと気がついたらやきもの屋になってたw

Reviewed by
鈴木 悠平

大きな事件が起こり、世間はざわめき、街の暮らしは意外と早く落ち着き、自分の暮らしも平時に戻り……そんな中に、だけど少しの変化がある。

アカデミーの教師との決別(というと大げさだが)。生まれた余白時間、自由気ままに文庫の海を泳ぎまわる。沈鬱な出来事があったからこそ、世の行く末が分からないからこそ、自分の心が向かないことは思い切って投げ捨てても良いのかもしれない。

BGMは、水曜日のカンパネラ。

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