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3F/長期滞在者&more

人類悦子化計画。(初妄出)

長期滞在者

あけましておめでとうございます。
2017年がハッピーな年になりますように。

と始めてはみたものの、これを書いているのはまだ12月末。
まあ、無理せず、いつも通り現実に沿って書き流すことにします。

とぼとぼと
師走の足に
追い越され

今日という日は、異常に面倒な失業保険関係の書類をやっとこさ提出し終え
(ちなみに失業保険を停止してもらうための手続きをしてきた)、
そのあとで行きつけのカフェに向かい、
このアパートメントで今、週刊連載をしている松渕さいこさんの原稿を
その紹介文を書くために一読したら、すごく元気付けられ、
(まだ読んでいない人は是非。)
そこから電気屋さんに行ってiPad用のキーボードを探したけど思うものが見つからず諦め、
帰宅後、今ちょっと欲しいと思っているDAB(Digital Audio Broadcast)対応のラジオについてリサーチし、
その流れで、おそらくは放映された直後だと思われる、
伊集院光の応接がいつも素直かつ本質を突いていて楽しみな
「100分de名著」のクロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』についての
3、4回分をロシア系動画サイトで見つけたので、立て続けに視聴し、
野菜スープを作って昼食をとった後、近所のカフェでこれを書いている、という、
この時点までのぼくにとっての今日は、とりあえずそういう日で、
前日に日本では次の戦隊モノが何と前代未聞の9人組(!)の
「キュウレンジャー」であることが発表され、
その夜、最後のSMAPxSMAPが放映され、
そのせいで多分多くの人が何かの変わり目を感じてたりしていて、
その前の日には英国でジョージ・マイケルが53歳の若さで天に召され、
そのせいでもっと多くの人々が、今年亡くなった
デビッド・ボウイやプリンスやレナード・コーエンたちを念頭に置きながら、
(なるべくドナルド・トランプの顔は思い出さないようにして)
ああ今年は何かの変わり目の年だったのかもなあ、やっぱり、
という感慨を抱いたりしているという、そういう日です。
(うわ〜、ちょうど今、レイア姫の訃報が… なんなの2016年……泣)
GeorgeMichael

princess-leia-stormtroopers-high-definition-star-wars-1

レヴィーストロースのことは最近ちょっと思い返していたので、
ぼくとしてはタイムリーな番組でした。解説が中沢新一というのも良かった。
それを見ながら、やっぱりブリコラージュ的な発想の方がしっくりくるのを再確認。
なかなか「野生の思考」的な、つまりは神話的で呪術的な考え方や言動は
当然のように、今の社会では受け入れられにくかったり、
真剣に言ってることが冗談だと思われたり、
下手をすると、すごくかわいそうな目で見られたり、
もっと下手をすると、キ○ガイ扱いされたりするので、
同士を見つけるのも難しくて、その点では寂しい思いをすることも多かったりする。
なので、こういう番組には素直に勇気付けられます。

マレビトや
サンタクロースも
なまはげも

(ちなみに初句の「や」は
関西弁の断定の助動詞。
ニュアンス的には「やん」
の感じで読んでほしい。)

そういえば中沢新一関係で別のことも思い返してたんでした。
ちょっと「秘密」ということに関して思いを馳せていて、
その流れで彼の書いた『森のバロック』という南方熊楠についての本を思い出したのでした。
世の中にはいろんなレベルの「不思議」ということがあって、
かなり多くのことが人間の能力で明らかにすることはできるはずだけど、
どうしても分かることのできない、というか触れることも想像することもできないような、
そういう「法」のようなものがあって、それを熊楠は「大日如来の大不思議」を呼んだ、
というようなことが南方曼荼羅と呼ばれる図をめぐってその本に書かれていたのを思い出したのでした。

南方曼荼羅
大日如来の大不思議

究極の「秘密」があるとしたらその「大日如来の大不思議」に含まれているようなことなんだろうなあ、
それなら「秘密」と言ったって言わなくたって、絶対わからないものなんだからどうしようもないよなぁ、
あぁ、そうか、「秘密」という「言葉」になる以上は、きっといずれ暴かれる可能性のある、
でも今まだ隠されてある知識やら事柄のことなんだろうなあ、
ということはそれはきっと人間についての「秘密」ということでもあるんだろうなあ、
で、多分、その人間レベルの秘密とはいえ、それは尽きることがないんだろうなあ、
というか、人間レベルって言っても、そもそも人間が認識する以外のところに「秘密」があるんだろうか???
結局、人間ってのはわかりそうでわからないものつまり「秘密」をわざわざ見つけて歩いて、
その謎解きをするのが趣味みたいな存在で…
なんだ、人類みんな市原悦子の家政婦なのか…
と、むっちゃ下世話なところに着地してしまい、
またやっちまった…と軽い自己嫌悪を感じながらも、
ふっふっふ、してやったり…と思ったりもするという妙な気分になったり…

家政婦に
人類見立て
年の暮れ

宇宙人カセーフ

ということで、ぼくの年末はこんな風に暮れていっているところです。

この原稿が公開される頃には、すべての人がこの年末年始を平和に過ぎ越せていますように。
そして2017年が霊感と共感と快感に満ちた年になりますように。
Boulevard du Jubilee

ひだま こーし

ひだま こーし

岡山市出身。ブリュッセルに在住カレコレ24年。
ふと気がついたらやきもの屋になってたw

Reviewed by
カマウチヒデキ

秘密とは「暴かれる可能性のある、でも今まだ隠されてある知識やら事柄のことなんだろうなあ」というひだまさんの文章を読んで、しかも文中に触れられている南方熊楠つながりでもある、水木しげるのことを考えた(水木しげるは『猫楠』という南方熊楠の傑作評伝漫画を描いている)。

水木サンが描いてきた「あちら側」の世界というのは、彼特有のわかりやすい表現が逆にアダをなして、絵空事のように思われているかもしれないけれど、あの人はちゃんと世界の「秘密」を知ってる人なんだなぁと思う。

砂かけ婆ぁが実在するか、とかそういう話ではもちろんない。
砂かけ婆ぁや塗り壁や一反木綿を作り出した人間の心性にまで降りての話になるから、「いないじゃん」とか言われてもつまらない。

あちら側の世界が見えるとか見えないとか、そういう話はわかりやすすぎて嘘くさいけれど、僕みたいに「別に何も見えない人」も「見えちゃう人」も、同様に間違っているのだと思う。
世界の秘密というのは隠されていて、解かれるのを待ってはいるのだけれど、そうそう、たかだか僕とか、「見える人」とかに、かんたんに「わかる」ような話ではないのだ、ということはわかる。ややこしいな。

世界のわからないことに対して、みんなもっと敬意をもつべきだ(笑
知ったふうなことで終わりにするな。
わからないということに対して、もっと誠意を尽くそう。
なんか、そんなことを考えていた年末に、ひだまさんのこんな文章が届きましたのさ。

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