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3F/長期滞在者&more

家日記 2020年8月

長期滞在者

8月。私はずっと、日本の夏は喪の季節だと思っていた。日本の歴史的にもそうだし、私の大好きだった祖父母も夏に死んだから。

夏には、蝉の鳴き声や空の色を眺めながら死について考える時間が必ずあった。それが今年はなかなか外に出ないせいか、季節感もないまま時間が過ぎている。何かが欠けている。

けれど欠けていることに違和感を持つのもおかしなことなのかもしれない。常に何かが欠けたまま、世界は動いているから。

ただ、蝉の鳴き声を録音してしまうほど噛み締めたのは、今年が初めてのことだった。

8月1日(土)
夕方、昼寝しまいぼんやりしながら居間に行くとれいちゃんも今井くんも昼寝あけだという。今日はそういう日なのか・・・。

8月2日(日)
家に人気がない。ここぞとばかりにお風呂にカビキラーを噴射。カビよ滅びよ。昴君は夕方起きてきた。どうやら朝まで起きていたらしい。

暑いからなのか、それとも感染症のせいなのか、めずらしく出かける気が全く起きない。

8月3日(月)
純君の誕生日!去年は体調不良でケーキがお預けだったので、今年は去年の分も合わせてふたつ!
5人揃ってケーキを食べる。こういう時間は久しぶり。

8月4日(火)
体がだるく、とうとう夕方は仕事もできず横になってしまう。熱はない。この時期なので無理せず休まねば。

8月5日(水)
体調が少し回復してきたものの、油断できない。こまめに体温を測る。熱はないけど、体がだるい。昨夜は節々も痛かった。インフルエンザじゃないだろうなと思っていたら、夕方になるにつれて楽になってきた。

家にいてもわかる、夏の暑さ。体が暑さにびっくりしているんだろうか。とにかく今日もはやめに休まねば・・・。

8月6日(木)
れいちゃんの実家から、びっくりするほど大きなスイカが送られてきた。嬉しい!れいちゃんは「冷蔵庫を埋めて悪い」と言うけれどいやいや、スイカならあっという間に食べられます。夏だなあ。

8月7日(金)
居間でぐったりとしている純君。過労に違いない。

8月8日(土)
梅雨明けして初めて、日中の散歩。こりゃ暑い。というか、マスクをしながら歩くことに限界を覚える。御茶ノ水駅の木々に蝉が集まっていたので、思わず立ち止まって耳をすませる。きっと今年の夏は夏らしいことがほとんどできずに終わってしまう。

8月9日(日)
なんと、Gに2回も遭遇してしまう。最初はお風呂場で、小さいやつに。私の奇声を聞いて、れいちゃんが殺虫剤を持ってきてくれた。次は昴君の部屋の前。昴君の嘆き声が聞こえてきて、私が殺虫剤を持っていった。いずれも今井くんが処分してくれた。これは緊急事態宣言ものだ・・・。

8月10日(祝)
とうとう新しい洗濯機がきた。今井くんと純君とれいちゃんが洗濯機用の台を組み立ててくれた。音が静かになったので、一安心・・・。

8月11日(火)
冷房をつけているのに部屋が暑いなと思ったら、外は体感温度が46℃もあると知って仰天。家が劣化してしまわないだろうか・・・。

8月12日(水)
今日も引き続き部屋が暑い気がするので冷房の温度を下げ続ける。自分に熱があるんじゃないかと思い、体温を測る。平熱。

8月13日(木)
深夜にGが発生し、絶叫してしまう。昴君に電話して殺虫剤を持ってきてもらい、ドタバタの末に駆除。興奮してしまい、朝まで眠れなかった。

8月14日(金)
れいちゃんと今井くんに「昨日は大きな声を夜中に出してしまい申し訳ない」と事の顛末を話す。どうやられいちゃんのおばあちゃんは、数十匹(!!)のGが薬で倒れているのを見ても「倒しといたよ」とけろりとしているらしい。おばあちゃん、東京で私達と暮らしませんか。

8月15日(土)
災害級の暑さ、と言われても外に出ないと食べ物がないので・・・と思って外に出たら「歩いていることが間違いなのでは」と思い始めるほど暑い。

れいちゃんの親は、東京の感染者数のニュースを見て心配しているらしい。こちらからすると、東京以外のところだと感染した場合の社会的な影響のほうが心配になるし、お互い違う世界にいるのだなと感じる。

8月16日(日)
昨日は東京のずっと西のほうに行っていたという純君。遠くに行きたくてたまらないんだろうな。私もなにか、自分の中でよくないなにかが起きている気がして、その原因のひとつは旅に出られないことのような気がしている。別に行こうと思えば、国内であれば行けないことはないのだけれど・・・。

旅が私にとってどんな存在だったか、思い知らされる。

8月17日(月)
夏バテだろうか。頭痛がするので、水分をとってはやめに横になる。心なしか目も痛い。

8月18日(火)
やはり、眼精疲労かも・・・?と思い、終業後に外に出たらGと遭遇。在宅勤務している純君を部屋からひきずり出し、退治してもらう。我ながらひどい。純君、ごめんなさい。そしてありがとう・・・。大きかったのでとても対処できるような気がしなかったのです・・・。

8月19日(水)
純君、どうやら過労が続いているらしい。私は数年前に過労で動けなくなってしまったことがあるので、はやめに休むのが大事だよ、と強めに言う。本当です。早めに休まないと、その後大変なことになるのです・・・。

8月20日(木)
今日は外へ行く日。こまめに水分補給していたのに、夜、体がほてってぐったり。

8月21日(金)
テレビでコクリコ坂を見ているれいちゃんと今井くん。私はまだ見たことがないのだけれど、れいちゃんがすごく好きらしいので今度ゆっくり見てみよう。しかし金曜ロードショーということは金曜なのか。実感がない。

今日会った人は、花火の音や浴衣を着ている人を見かけないと、時間がただ過ぎているだけで夏という実感がないと言っていた。そう、私も夏という実感がない。だから外に出るとき、空の色とか蝉の鳴き声とか、夜に鳴く虫の音をひたすら感じるようにしている。

8月22日(土)
久しぶりに友人と会う。何ヶ月ぶりだろう。二人で美術館へ行くと、検温とアルコール消毒と連絡先の記入があった。緑あふれる公園で、蝉の鳴き声を聞いていると夏をしみじみ感じた。

8月23日(日)
ひさしぶりの雨。夏の雨はほっとする。埃っぽい街が綺麗になるのがわかる。

8月24日(月)
夏季休暇、どこに行くか決めていないという純君。きっといつもどおり、直前に決めるのだろう。

8月25日(火)
大学の課題が終わった!夏の終わりに必死で課題をやるなんて、小学生みたいな気持ちになる。

8月26日(水)
ここ最近、うすうす気づいてはいたのだけれど、お腹の調子がおかしい。何度もトイレに行ってしまう。気をつけなければと思い、仕事をはやめに切り上げて横になったり、ぼんやり音楽を聞いたりする。

8月27日(木)
外へ出る。日差しが、先週に感じたそれよりも弱く感じる。季節はちゃんと移ろっている。私は夏をあまり享受できていない気がして少しさみしい。

昴君から、Gの幼虫のようなものが部屋にいたと聞いて戦慄する。気を抜いてはいけない。

8月28日(金)
夜、外を出たら風が気持ちよくて、でもそれをやはり寂しいと感じてしまう。純君は夏季休暇で、家にいない様子。今頃どこにいるんだろう。

8月29日(土)
久しぶりに友人と球場へ。席が離れていると話しづらいけれど、カメラで選手を捉えるのが容易になる。帰り道、乗り換えたあとに方向を間違えてしまい、どんどん南のほうへ・・・。疲れてると思う。

今井くんが髪を切ってさっぱり。深夜に夕食を食べている昴君。本日は17時起床らしく、安定の夜型生活を送っている様子。

8月30日(日)
久しぶりにじっくり物を書いて過ごす。昨年末に悲しいことが起きたり、世の中の混乱とそれに伴うどろどろとした闇のようなものにうんざりして、会いたい人にも会えず、友人はもっと危険な国にいたりして、あーあ・・・なんじゃこりゃ、という思いが少なからずあった。でもそういった思いが糧となってくれるはずだと思う。

8月31日(月)
先日、Gはもしや排水溝から上がってくるのでは?と住人間で話題になったことを受けて、今井くんが早速排水溝にはめる網を買ってきてくれた。行動力!

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

遠くに行きたくてたまらない、という文字列だけで、自分もそんな気持ちになってしまった。なにテロだろうこれは。旅テロ? もう少し涼しくなったら、緑の多いところへでも行ってみたい。
そういえば今年まだスイカを食べていないな。

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