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3F/長期滞在者&more

家日記 2020年12月

長期滞在者

理想的な年の終え方。早めに仕事を切り上げること。友人と語り明かすこと。旅に出ること。旅先で心に風を通すこと。旅から帰って家族に会うこと。

どれも叶わなかった。失望しているかというと、そうでもない。この家で笑って過ごすことができた。

ため息を吐くと福が逃げるという。けれど、私はべつに逃げても構わない。福はまたやってくるに違いないし、何なら捕まえてみせる。

強かに生き延びようではないか。

12月1日(火)
大掃除の日程が決まった。正直、まだ信じられない。年末が近づいているということが。

れいちゃんがこたつのなかに埋まっているのを見ると、そうか、もう冬なんだなと思う。実に季節感のない一年だった。

12月2日(水)
実は今週からスタンディングデスクを始めたのだけれど、調子がいい。昴君も知人からパソコンを置けるラックを譲り受けて、スタンディングデスク用に改造しようとしているらしい。健康生活へシフト。

12月3日(木)
出社日。混んでる時間を避けて電車に乗るものの、なんだかなあ、と先週に続き思う。

以前我が家に住んでいたさゆりちゃんが、今の家から引っ越すことにしたと連絡をくれた。新しい生活に幸あれ。引っ越しか……とまた考えてしまう。広い家がもう一軒ほしいのだ。

12月4日(金)
最近買ったジェーン・スーさんの著書「女のお悩み動物園」を今井君とれいちゃんで読む。Oggiで連載されていたお悩み相談が本になったものなんだけれど、なかなかリアルである。職場のいじめ、離婚したあとの悩み、仕事で独立したあとの悩み……。こういう悩み、あるよね…と語り合う。

12月5日(土)
純くんからふるさと納税でみかんを10kg買ったと連絡受ける。10kg!!すごい。毎日みかんパーティーを開けそうである。

12月6日(日)
鬼滅の刃の映画をひとりで観て、れいちゃんによかった!とあふれる感想を送る。こんなふうにひとつのコンテンツを住人の誰かとわかちあうのは珍しいことで、嬉しい。

近所のケーキ屋でクリスマスケーキを予約した。みんなで分けて食べよう。

12月7日(月)
純君の買ったみかんが届いた。ずっしり。これがなくなったら私も買おうかな。

12月8日(火)
昴君は近々ライブがあるのでリハへ。最近はリハが終わって軽く飲もうとしても、22時以降お酒を飲める場所がないのだそうだ。

12月9日(水)
純君が買ったみかんを食べる。美味しい。ひとつだけ、と思いきや続けてふたつめを食べてしまう。

12月10日(木)
純君、かなり過労気味。顔色もおかしい。みかんを食べつつ話を聞くと、色々と抱えすぎな様子が伝わってくる。こういうとき、純君だったら一人旅で遠くに行くとすっきりするんだろうけれど。

12月11日(金)
眼精疲労のせいだろうか。ひどい頭痛。純君が午後休をとったというのでちょっと安心。私もちゃんと休もう。

12月12日(土)
明日は大掃除だから大掃除グッズを買わねば……とセスキスプレーや塩素洗剤を買う。一軒家を大掃除するのは骨が折れる。事前準備も大事。

12月13日(日)
大掃除の日。5人で2時間強、必死で掃除する。靴箱、窓、台所、浴室、トイレ……。ピカピカになったところでエリックサウスのお取り寄せカレーをみんなで食べて、満足して終了。

12月14日(月)
明日はれいちゃんの誕生日だ!ということで、れいちゃんを抜いた住人メンバーでケーキを買いに行く計画を立てる。どうやら明日は恋人とディナーなので、お祝いは16日にすることに。

12月15日(火)
れいちゃん、恋人と食事して帰ってきたらしく、おしゃれな装い。いいなぁ。ただし指を怪我してしまったらしく痛そう。

12月16日(水)
れいちゃんの誕生日をみんなでお祝い。仕事がうまくいきますように。昨夜怪我した指はやはり痛かったらしく、病院にいって溜まった血を抜いてもらったらしい。包帯が痛々しい……。

12月17日(木)
れいちゃんと台所で「なんて寒いんだ」と言い合っていたら、今井君が凍えながら帰宅し、手を洗うと速攻でこたつに入っていた。家日記では繰り返し書いているけれど、この家は冬になると恐ろしいほど冷え込む。外気とほとんど変わらない寒さなのではないか。

12月18日(金)
純君、日付変更くらいの時刻に帰ってきて居間でお弁当を食べている。大丈夫か。

12月19日(土)
昴君は部屋でバンドの忘年会。本当なら集まってやる予定だったのを、急遽リモートにしたという。確かに、ここ数日で感染者数があまりにも増えてしまった。

今井君はカレー、純君はキムチ炒め。インドと韓国が居間でぶつかる。私はゴルゴンゾーラのクリームペンネを作る。

12月20日(日)
外にいる時間を一秒でも減らしたいと思うような寒さのなか、今井君と純君は登山に向かったという。登山!彼らは本当に私と同じ国にいるのかと疑いたくなる。

12月21日(月)
昴君が昨日誕生日だったため、みんなでケーキを囲んでお祝い。フルーツ盛りだくさんのタルト。

12月22日(火)
こたつ付けっぱなし問題が発生。数年前はコントローラーを必ず見えるところに置いておくようにしたけれど、他の家庭だとどうやって防止しているんだろう。

12月23日(水)
夕方、喉の痛みを感じてすぐに龍角散のど飴を舐める。そのあとマヌカハニーも。しばらくすると楽になったけれど、油断できない。

12月24日(木)
今井君から燻製鮭をおすそ分けしてもらった。ご飯に合う……!北海道の知人からのいただき物らしい。ありがたい。

12月25日(金)
クリスマス。近所の名店で予約してあったクリスマスケーキをみんなで食べる。ケーキはピスタチオの生地にラズベリーのムースが合わせてあるドーム型のもので、すいすいと食べれてしまうほど美味しい。こういうクリスマスもいいねと言い合う。

12月26日(土)
誕生日を迎える。34歳になってしまった。ケーキ続きだったからというみんなからの気遣いで、アイスクリーム屋さんのアイスクリームがずらり。柿味というレアなフレーバーまで。嬉しい夜。

12月27日(日)
まだまだ仕事が残っているのだけれど、年末の空気で気が抜けてしまったのか爆睡してしまう。気圧の問題だろうか……。

12月28日(月)
昴君が熱。心配である。熱以外の症状はないらしいが…コンビニでGREEN DAKARAを買って差し入れする。

12月29日(火)
昴君がすっかり回復したそうで安心。年末は相当冷え込むというニュースを見て、風邪予防のためにも生姜シロップを作る。昨夜、400〜500gの生姜を砂糖に漬けておいたので、しっかりエキスが出た。ここにスパイスと水を加えて煮詰める。

12月30日(水)
れいちゃんが居間でくつろいでいるのを見ると年末だなと思う。私は変わらず仕事しているせいで、あまり年末感がない。生姜シロップを飲んでもらったら好評で一安心。

12月31日(木)
昼に仕事納め。夕方に買い出し。純君は南に一人旅、れいちゃんは恋人の家にいるので、3人で大晦日の夜ご飯。ローストビーフを作って、蕎麦を茹でた。

紅白歌合戦を見るなんて何年ぶりだろう? 最後の紅組、白組の投票のシーンになって「そういえばこういう番組だったね……」と言い合う。

来年、みんな健康に過ごせますように。

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

最近「手渡す」という言葉がよく頭に浮かぶ。人が人に手渡せるほんとうに大事なものなんて、生きている間にいくつあるのだろう。いくつ起こるのだろう。ずっと昔に誰かが手渡してくれていたものに、最近になって気が付くことがあった。自分は誰かに、時間がかかっても、なにかを届けることなんてできるのだろうか。
などと考えながら年越しの後に帰宅したら、ぴかぴかに大掃除された家が待っていて気分が良い。場所を整えておくことも、なにかを渡してあげることになり得る。去年の私とパートナーへ、とりあえずありがとな。

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