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3F/長期滞在者&more

家日記

長期滞在者

ienikki201805
特別な経験よりも何気ない日常に光をあてることに、私は面白さを感じます。

私の住む家は20代後半から30代半ばの男女が5人住んでいます。
それぞれが個室を持ち、何か困ったことがあれば話し合って暮らしています。

この連載では家で起きたことを日記形式で綴っていきます。
こんな世の中にこんな生活があるのだと、愉快に思っていただけたら幸いです。

※住人のプライバシーを守るため、名前は仮名を使用しています。

5月1日(火)
GWの中日。少しだけ家で仕事をして、たまった家事を片付け、プールで泳ぎ、夜は神田で会社の人たちとお好み焼きを食べた。

そんな折に純君から「今井君の誕生日ケーキどうしよう?」というメッセージを受信する。うっかり忘れていた。慌ててケーキの購入を頼む。帰宅すると今日からうちに数日滞在する恵子さんと今井君がくつろいでいたのでその輪に入り、しばらくしてからケーキを切り分けて食べた。ケーキは薔薇のリキュールと食用薔薇をあしらったなんともオシャレなケーキ。みんなで「食べたことのない味だね」と言い合った。

一番遅く帰ってきたのは昴君だった。恵子さんはこの連休中にアトリエに通って絵を習うのだという。

5月2日(水)
純君は今日仕事らしい。夜、私がお風呂から上がると今井君と純君と恵子さんの三人が居間に揃っていた。お風呂場から出ると廊下を挟んですぐ居間なので、ふすまを閉めておかないと化粧をしていない顔や部屋着姿を客人に晒してしまうことになる。

湿度が高いのでエアコンで自室を除湿した。そろそろパウエルの出番かもしれない。パウエルというのは2年前に共益費で購入した除湿機で、この家の除湿と衣類乾燥を担っている。

5月3日(木)
居間がほこりっぽかったので掃除機をかけた。掃除の分担は決まっているけれど、誰かが気付いたらやることもある。コタツ布団をクリーニングに出す時期かもしれない。居間の隅に置き去りになっているDVDデッキや食器の持ち主を確認したけれど返信がない。不燃ゴミだっただろうか・・・。

深夜、昴君の部屋からソース焼きそばの匂いが漂ってきた。テロだ。

5月4日(金)
宿泊客が2名。この家に泊まるときは基本的に居間で布団を敷いてもらう。宿泊客が2名いるわりには静かな夜だった。

5月5日(土)
絹枝ちゃんのお昼ご飯がネギ塩パスタだった。あまりにも良い匂いだったのですっかり感化され、私の夕食はネギとアンチョビのパスタになった。焼いたネギはどうしてあんなに良い匂いがするのだろう。

先日のゴミの処遇が決まったので、納戸に移したり捨てたりした。納戸は玄関のすぐ脇にあって、これが自転車を格納したり粗大ごみを置いたりとなんだかんだで役立っている。

22時。近所から女の子の発声練習が聞こえてくる。

5月6日(日)
夕方、絹枝ちゃんから家にお客さんを連れていきますと住人チャットに連絡を受ける。しかしそのとき私は外出中。帰ってきたら誰もいなかった。ゴールデンウィーク最後の日。家が静かだ。

5月7日(月)
ハンドソープを買うのを忘れていた。この家の共益品は分担して買うことが決まっている。純君が気を遣って買ってきてくれたのだけれど、残念なことにそれはビオレのハンドソープだった。申し訳ないがビオレは肌に合わないのだと言ったら、実は純君もだという。どうして買ってしまったのか。とにかく明日はハンドソープを買わなければ。あとサランラップとトイレットペーパーも。

5月8日(火)
お風呂場に今井君のシャツとパンツが置き去りにされていたので回収をお願いした。こんなふうにして時々、脱衣所で住人の忘れ物を発見することがある。私が忘れるのは主にピアスである。女性が私と絹枝ちゃん以外にも住んでいた時代は、下着の忘れ物を発見すると女性の住人だけに「誰の?」とこそこそメッセージを送り合っていた。

湿気が酷いので洗濯物を居間のパウエルの上に干しておいたら見事に乾いていた。さすがである。

ここで補足しておくと、居間の天井の一角には物干し竿と竹刀を設置している。パウエルはその下にあり、住人は自分の部屋で干しきれないものをそこに干す。なぜ竹刀があるかという点についてはいつか説明する機会があるだろう。

5月9日(水)
今井君が小さなスーツケースを持って北京へと旅立っていった。今年何回目だろう?住人の中でもっともアジア諸国に行く回数が多いと思われる。今日は絹枝ちゃんが家で自炊している。絹枝ちゃんがよく使う木製の平たいお皿は盛り付けると料理がぐっと美味しそうに見える。

ようやくサランラップや洗剤を買って帰った(ハンドソープは今井君が買ってきてくれた)。共益費はクラウド上のドキュメントで管理しているので、後でレシートの金額をぽちぽちとそこに打ち込む予定である。

5月10日(木)
この日体調を崩してしまい、ほとんど記憶がない。

5月11日(金)
どうやら扁桃腺が腫れている模様。最悪である。ほとんど寝て過ごす。

5月12日(土)
今朝、純君が玄関先で寝ていたらしい。純君はよく居間で寝落ちするけれど、まさか玄関で寝落ちする日がくるとは・・・。酔いと疲れが原因とみられる。

夜、台所からカタカタと不審な音がすると思ったら絹枝ちゃんが酵素玄米を炊いていた。これは玄米だけでなく小豆やもち米が入っていて、雑穀の香ばしさとモッチリ感が合わさった面白い食べ物である。

5月13日(日)
体調が回復しない。扁桃腺は一度腫れると厄介である。

家にほとんど人がいない。22時過ぎ時点で見かけたのは居間で仕事をしているらしい純君のみ。昴君から小松菜のおひたしを分けてもらった。体調が悪いときは優しい味のするお惣菜がありがたい。

5月14日(月)
こんなに体調不良が続くとは・・・。ほとんど寝て過ごす。

昴君が近所のカレー屋で夜ごはんを買ってきてくれた。今井君はここのカレー屋の常連で、お土産にプチトマトやインドのお菓子など持たされるくらいである。今日は何のカレーなのかよくわからなかったけれど、美味しかった。

5月15日(火)
ようやく体調が戻ってきているような気がする。

最近純君の帰りが遅い。いつも遅いけれど。今日は日付が変わってから帰ってきて、部屋に戻ったと思ったらノートパソコンを抱えて居間へ向かっていった。今週はどうしてもやらなければならないことがある、などと供述している。毎回似たようなことを言っているけれど大丈夫だろうか。昴君は先日PS4のパワプロを買ってしまったので生活が崩壊しており、今日も甲子園に行けなかったと嘆いていた。

住人チャットで小バエの発生が話題になる。そろそろ小バエ取りを買わないといけない季節だ。

5月16日(水)
今井君が中国から帰国。しかし帰宅後すぐに出かけていった。彼のバイタリティーは少なくとも私の3倍はある。真面目な話。

19時過ぎ、近所からピアニカの音が聞こえてくる。家は人がいなくて静か。小バエ取りを買って台所に設置した。

最近、洗濯機が脱水時にエラーを起こすので買い換えようかという話が住人チャットで持ち上がる。今の洗濯機は今井君が一人暮らししていた時代から使っているものなので、この家で使ってきた期間も合わせると10年ほど使っていることになる。5人それぞれ自分のものに加えて共益のタオル類も洗うので一般家庭よりも洗濯機を回す回数は格段に多い。よく耐えてきたと思う。

5月17日(木)
洗濯機の意見募集について、絹枝ちゃんから「動けば何でも良いです!」という潔い回答が届く。彼女のサッパリ加減はお酒で例えるならジンライムである。

居間からカレーの匂いが漂う。今日の今井君の夕食はフレッシュトマトチキンカレー。

5月18日(金)
絹枝ちゃんの妹が遊びに来た。絹枝ちゃんは3姉妹の長女で、この3姉妹は小説に出てくる人物のように面白い。それぞれ驚くほど頭が良く、強い意思を持っている。彼女達の会話を笑わずに聞くのは難しい。今日は2人で近況報告しているところを片耳立てて聞かせてもらった。妹は夫の仕事の都合で来月からベルギーに移住するのだという。寂しい。

妹が帰ったあとは絹枝ちゃんと私で近況報告。彼女とはこの家に住み始めた頃から仕事や恋愛事情について語り合っていて、私にとっては非常にありがたい存在である。

5月19日(土)
湿度がべったりと肌にまとわりつく昨夜とは変わり、夜風が心地良い夜。昴君が自室のドアを開け放している。彼の部屋は二階の窓の正面に位置しているので風通りが良いのだ。とはいえ、ドアを開けっ放しにする住人は珍しい。

5月20日(日)
今井君がお客さんを連れてきた。純君、昴君、私もタイミングが合ったのでみんなで夜ご飯を食べた。居間に5人揃うとそこそこ賑やかである。こんなふうに住人の知り合いと突然話す機会が訪れる。もちろん気が向かなければ適当に挨拶をして終わらせることもできる。

5月21日(月)
貧血のような症状になり、横になっていたら昴君がカレーを買ってきてくれた。とても助かる。

22時を過ぎても純君と絹枝ちゃんは帰ってこない。彼らは働き者で偉いなぁと思うのだけれど、同時に疲れてしまわないのか心配である。私は遅くまで働くことがなかなかできない。

5月22日(火)
家賃と光熱費を振り込んだ。

様々な支払いを楽にするために、この家には専用の口座がある。住人は家賃と光熱費をその口座に振り込み、あらゆる引き落としはそこから行われる。家賃の引き落とし期日までに振り込むのを忘れないよう、全員宛てに振り込み完了の報告をするのがルールである。

5月23日(水)
今井君とコタツ布団を撤去した。週末に純君がクリーニングに出してくれるとのこと。コタツからコタツ布団が無くなると途端に居間が夏らしくなる。

このコタツはこの家を始めたときに仕入れたものだ。6人入っても余裕なほど大きく、頑丈そうだったのでネットオークションという慣れない方法でも頑張って手に入れた代物である。

5月24日(木)
よく考えたら日付が変わる前に全員家に揃っているのは久しぶりな気がする。一番遅く帰ってきたのはやっぱり純君で、お弁当を買っていた。

5月25日(金)
居間のこたつの上に、明らかに社用のPCが置き去りにされている。きっと純君のだ。大丈夫だろうか。

日付が変わっても家にいるのは昴君と私だけ。今井君は今朝またスーツケースを持って出て行ったような気がする。Facebookを確認するとウラジオストクへ向かったと投稿されていた。ウラジオストク!

5月26日(土)
昼になってもみんな起きた気配がない。今のうちに台所の掃除を済ませてしまう。

夜、純君がめずらしく自炊していたので昴君と私で一時鑑賞。豚しゃぶを作るのに小麦粉をまぶして形が崩れないようにするのだと言っていた。お米が無くなりそうになっていることに気づき、慌てて発注。

5月27日(日)
今井君以外全員家にいる、日曜の夜22時過ぎ。私は自分の部屋でこれを書き、純君は居間で夕食を食べている。昴君はこれから食事を作って食べるところで、絹枝ちゃんは現在入浴中。

共益のお米が届いたので米びつに補充した。この家のお米は私が10kgのをAmazonで買い、使った人が私の小さい箱にお金を入れていく仕組みである。

5月28日(月)
家の前に見慣れない自転車を見かける。住人のではないはず。誰かが置いていってしまったのだろうか・・・とりあえず一晩様子を見る。

5月29日(火)
自転車は絹枝ちゃんのものということが判明。絹枝ちゃんが自転車に乗るとはちょっと意外であった。

お風呂に入ろうとしたところ、コンタクトレンズを外そうとした純君と洗面所でバッティング。そういえば「お風呂でばったり事件はないの?」と聞かれることがあるけれど、答えは「ある」。浴槽に浸かっていた絹枝ちゃんと遭遇したし、上半身半裸の純君とも脱衣所で遭遇している。気まずくなることはないけれど、そういうとき私はびっくりしすぎてなぜか声をあげて笑ってしまう。最近はそういう事件はない。

5月30日(水)
今井君が帰ってきた。ウラジオストクはとても良かったとのこと。その後中国に行って帰ってきたという。私も旅行に行きたくなってきた。中東かヨーロッパに行きたい。

雨で湿度が酷いので、パウエル稼働中。

5月31日(木)
22時過ぎに帰宅すると純君が居間にいた。こんなに早い時間にいるなんてめずらしい。
今井君に旅先の写真を見せてもらった。ウラジオストクから国境を越えて延辺という朝鮮族自治州に行ってきたらしい。街中や市場の写真を見て、ぜひとも出版してほしいと頼む。どうやらそういう話は今回が初めてではないらしい。

今日一番遅く帰ってくるのは昴君。下北沢でライブをやっていたのだ。パートはドラム。私は昴君のバンドだけ見て帰ってきた。少し疲れが溜まっている。

◎今月の振り返り
そろそろ台所の布巾がくたびれてきたから買い換えること(これは振り返りではなく、備忘録だなぁ)

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

気の合う友人同士で一緒に住むのは、想像以上に楽しい。「嘘でしょ」みたいな笑えることが起きるし、ちょっとした、簡単だけれど美味しい料理の仕方を教えあったりも時にはできる。シェアハウスやシェアアパートのような住み方は日本にもっと広まってもいいのではないだろうか。間近に感じる他人や自分の生活感というものは案外愛しいことが、家日記のさっぱりとした言葉の端々から伝わってくる。

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