新宿で生まれ育った私には、一人になりたい時に必ず行く、新宿高層ビル街のふもとがある。
ある夜、一人で想いを巡らせたくてその場に座り込んでいた時に、突然降ってきた大粒の雨。
雨が、思考の流れも、時間をも遮っていった。
自分が無になっていくような感覚。
自分がこうしたいという気持ちよりも、相手の気持ちを優先してしまう。
その人が幸せであるために、自分がどう言葉を返すのが良いか。
自分の中でおしころしてきた感情。
ふと振り返った時に、
握りつぶした自分の想いがいくつもバラバラに干からびたまま、その場に落ちていることに気づいた。
自分から生まれた感情を、こんなにも無残な形にしてしまった。
2017年2月14日。
『Pray〜世界に魅せられた者たちのライヴ 6』
詩の朗読と、ピアノとチェロの生演奏によるライヴに出演するのは、
2015年7月28日以来のこと。今回のテーマは“Pray”。
バレンタインデーの夜、音楽と共に自分の声で伝えた詩は、
その多くが、これまでどこにも話さずにいた嘆きや苦しみだった。
自分の中に確かにあった心の動きを、無かったことにしたくなかった。
その想いの言葉を声にすることで、祈りに変えていった。
それができたのは音楽が傍にあるからこそで。
だから私は、言葉と共に自分をさらけ出すことができた。
「遠慮なく自分をすっ裸にしていた。だから、美しかった。」
ライブを観に来てくれた友人から送られてきた感想を読みながら思った。
私がステージに立つ表現者に惹かれる時もそうだったと。
今、この人は、自分の想いを全身で表現して、このステージで生きている。
それを感じた時に、私はその人に、強烈な魅力を感じている。
伸ばしたその手はどんな未来を掴もうとしているのだろう。
昨年の12月31日のカウントダウンイベントでのライブで、
MERRYのヴォーカルであるガラの動きを見て、ふとそんな言葉が頭をよぎった。
私がMERRYというバンドを見続けている理由は、その生き様に惹きつけられるからなのだろう。
それは彼らと関わるようになったタイミングによるものが大きい。
ヴィジュアル系バンドを紹介する番組、FM-FUJI「ROCK IN BOOTS」を担当していた時に出会ったMERRY。
それまではバンド名くらいしか知らなかったバンドと、この番組を通して深く向き合うようになった。
番組が放送されていた頃、ガラの腰椎椎間板ヘルニアの手術治療による活動休止、
ガラが復活してそう間もないころに、ベースのテツが頚髄損傷(中心性頚髄損傷)という怪我を負い、
バンドはしばらく4人でのライブ活動を行うなど、ギリギリの線で懸命に活動をしている姿を、ずっと見てきた。
2016年2月7日、EX THEATER ROPPONGIにてテツの完全復活が果たされ、
昨年は非常に多くのライブ活動を行っていた。
「傘と雨」は、2016年11月15日、品川ステラボールでの結成15周年ライブで初披露された。
それも、アコースティック形態とバンドでの演奏と、同じ曲を2つの表現で観客に届けた。
MERRYのこれまでの曲の中でもよく使われてきた「雨」という言葉が唄われていたことが、私の耳に印象的に残った。
この雨は?
あれから、ずっと考えていた。
2017年2月15日。
前日に自分自身が生演奏と共に、自分で書いた詩を朗読するというライブを終えた翌日、
MERRYのライブを、HOLIDAY SHINJUKUに観に行った。
自分がライブをやるという経験を踏まえた上で、MERRYの生き様を無性に観てみたくなった。
攻めてる。
その夜のライブの1曲目からビリビリとその気迫を感じた。
今日、この今という瞬間にどれだけ自らの表現を奮い起こしていくかという、全力を注いでいる姿勢と共に、
一つ一つのライブを積み重ねて、さらなる高みに向かっているバンドの姿が勇ましかった。
そして、ライブで聴く生身の「傘と雨」は、最初に聴いた時から大きくその姿を変えていた。
曲のテーマは“無関心”。
けれども、バンドの演奏はイントロからただならぬ気配を感じさせ、激しさも熱量も帯びている。
詞から先に作られたというこの曲は、人の心にしっかりと残る唄を届けていきたいというその想いと重なる。
故に、この曲がライブで演奏されている時に、何も感じないでいるのは私には無理だ。
あっという間に時は過ぎてしまうからこそ、
せめてその瞬間くらい、好きにさせていて。
この雨は?
どう捉えてもかまわないのなら、私にとっては熱情の雨だ。
いつまでだって唄っていたい。
いつまでだって聴いていたい。
その時感じた、そうしたいと思うことをし合える関係性。
それが、お互いに嬉しくて。
その交わし合いがあるからこそ生まれる、燃えるような喜びが、今の彼らのライブには息づいている。
MERRYは、5月5日に日比谷野外大音楽堂で、
「Tokyo Spring 日比谷デモクラティック 〜羊達の主張〜」と題したライブを行う。
この会場でのライブは、2013年8月10日以来。彼らにとっては特別な場所である。
「未来はきっと明るいだろう」
「傘と雨」の最後に唄われる言葉を、その声で頭の中に響かせる。
伸ばしたその手はどんな未来を掴むのだろう。
【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜3秒〜26秒〜35秒”に乗せて)
2月1日にリリースになった、MERRYのニューシングルをお届けしましょう。
先日私がSHINJUKU HOLIDAYで観たライブでも、もちろん演奏されていたこの曲。
攻めてます。演奏が始まった瞬間からぐわっとくる熱量を感じずにはいられませんでした。
バンドはライブの中で生きているという証拠を突きつけてくる一曲になっています。
5月5日に行われる日比谷野外大音楽堂でのライブでは、さらに進化しているであろうこの曲が聴けることが、
今から楽しみでたまりません。
まずは今日この番組で聴いて頂き、
そして、ぜひライブで、今のMERRYのむき出しの情熱と共に、あなたの心で感じて欲しいナンバー。
MERRY「傘と雨」