入居者名・記事名・タグで
検索できます。

3F/長期滞在者&more

「あっという間に好きになってしまった」【Ella Mai「Boo’d Up」(2017年2月22日リリース)】

長期滞在者

IMG_4261
あなたに言葉を送る時、私はどんな顔をしているのだろう?

深い夜の時間が好きだ。
誰もが寝静まって、朝になるまでは仕事の連絡はまず入らない。
携帯に届く連絡は、極めてプライベートな人間のみとなるこの時間を、私は一日の中で最も好んでいる。

お気に入りのバスソルトをたっぷり入れた湯につかり、
物語の世界に没頭できるような本のページをめくって汗をかき、
オレンジの精油が優しく香るシャンプーで髪を洗い、
季節ごとに素材を選んだ石鹸の泡で身体を包む。

ベッドのシーツは20代の頃からパイル地を愛用している。
洗いたての身体でそのまま、大きなタオルに包まれるように、ベッドに身をうずめる。
次の日に疲れを残さないためのヨガをいくつかこなす。
そして、心が解ける音楽を聴く。

そんな時に今年、もっともよく聴いている曲が、Ella Mai「Boo’d Up」である。

IMG_4254
毎週欠かさず見ている最新のビルボード・チャートを紹介するテレビ番組から、
「Boo’d Up」が紹介された瞬間に、私の頭の中に浮かんだ言葉は「こういう曲を待っていた」。

どきどきした。
身を乗り出すようにテレビの画面に釘付けになった。
90年代のR&Bナンバーを思わせるメロウなトラックと、その歌声に耳を澄ませ、すぐに曲のタイトルをメモした。

手元のiPhoneの検索画面に、アーティスト名と曲名を入れる。
私がこの曲と出会ったのは、チャートランキングでは、30位台の頃だったので、
その頃はまだインターネットでは日本語の情報はほとんどなく、
英語で発信されている彼女についての情報を次から次に読んだ。

Ella Mai。
イギリス、ロンドン出身。1994年生まれ。現在23歳。
「Boo’d up」は、2017年2月にリリースされた3rdEP『Ready』のオープニングトラック。
2018年3月にシングルカットされ、ラジオDJによる絶賛やエアプレイを受け、
2018年4月26日に公開されたMVの再生回数がぐんぐん伸びているのがヒットの要因にあった。

CDが欲しいと思ってCDショップに走ったが、
「この曲はダウンロードしかないですね」と言われて、しゅんとしてしまった。
手元に形として残しておきたいほど恋してしまった曲は、本当に久しぶりだった。
以降、YouTubeやApple Musicを通して何度も聴き、
そのたびにとろけるような感覚を呼び起こすメロディと彼女の歌声に、私はすっかり陶酔していた。

「Boo’d Up」。
booは恋人という意味を持つスラング。
「一緒になる、恋人同士になる」という意味の込められたタイトルのこの曲は、
その後、全米中の音楽リスナーの心を虜にして、
2018年7月21日付、ビルボードホット100チャートで最高5位をマーク。また、R&Bチャートでは1位を獲得。
2018年のアメリカの音楽シーンを代表する1曲になっている。

この秋に、彼女の1stアルバム『Ella Mai』が発売されることを知った時には、胸が高鳴った。
リリース日となる10月12日になると、いつ全ての楽曲が配信されるのかと、何度もiPhoneから情報を確認した。

毎年秋から冬にかけて、私はR&Bを聴く時間が圧倒的に増える。
少し肌寒くなってきた季節の中、誰かのぬくもりを求めるように、恋愛を歌うR&Bに身を委ねる。
そんな時に届いたアルバム『Ella Mai』は、嬉しいほどに私の欲しい音をたっぷりと携えていて、
寂しさを感じる時も、私を優しく包み込んでくれる。

「Boo’d Up」という曲は、
一緒にいることが幸せで楽しくてたまらない気持ちが弾けるようなイントロから、
あなたと出会えた嬉しさに溢れる恋の世界に、一気に誘ってくれる。

Ella Maiの歌声を聴いている時だけは、女としての私にだけ意識を集中することができる。

部屋の明かりを落として、「Boo’d Up」を小さな音量で流していたiPhoneの液晶画面に、名前が浮かぶ。
今日あったことや、お互いの好きなことなどの他愛のない会話から、
「本当はね・・・」という文字を打ち込んでしまうほどに、
つい話しすぎてしまうくらいのやりとりができる、夜の時間が好きだ。

「今はこうして、心が許せる仲間や友人と話せることが本当に有り難いの」

少し間を開けて、私は一文を追加する。

「でも、理解者は欲しいと思っているんだ」

誰かに傍にいて欲しいという気持ちを吐露している自分に驚く。
Ella Maiのスイートな歌声が、私の心を緩めていた。
とはいえ、この人に、ここまで距離の近い会話をしてもよかったのだろうか? と心配性の私は、
送信取消を選択しようとする。
その瞬間に、既読になる。

胸がきゅっとなるようなしばしの静寂のあと、
おもわず顔がほころぶ返信に、私は安堵する。

今、この夜は、好きな曲も、あなたの言葉も全てこの手のひらの中に在る。
このひとときを一緒に過ごせれば、今は、それでいい。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(♪イントロから聴いて欲しいので、曲振りの言葉を)

さて、ここでお送りするのは、この曲を聴いた瞬間に「こういう曲を待っていた」と思ってしまったほどに、
あっという間に好きになってしまったR&Bナンバーです。

恋のときめき、胸が高鳴る瞬間をぎゅっと閉じ込めたような、スイートな歌声とメロウなサウンド。
ビルボード・シングルチャートでも最高5位をマークして、
2018年の音楽シーンで多くの人から、愛されているラブソングです。
10月12日にリリースされたセルフタイトルの1stアルバムから、

Ella Mai「Boo’d Up」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

読み進むにつれて、文章に、音に、ドキドキした。人恋しくなるこの季節が、さらに恋しくなる。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る