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3F/長期滞在者&more

「命の輝きを支え合う存在」【UVERworld「AFTER LIFE」(2019年12月4日リリース)】

長期滞在者

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とても大事な人が、命に関わる長い長い手術をした。
幸いなことに手術は無事に終わって、病院で付き添っていた私は夜遅くに帰宅し、
疲れ果てた身体をベッドに投げ出すように眠った。

翌朝、私にとって世界で1番優しい人が、飛び降りて死んだという知らせがきた。

11月末から今日に至るまで、あのときのことをまざまざと思い出す1ヶ月だった。
思えばあの日から、私の「死」と向き合う日々が始まったのだと。

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2019年12月19日。
朝から病院に行くタクシーの中から、白くて大きなあの天井が見えた。

東京ドーム。

夜にはここに戻って来て、ライブがある。
なんて日なんだろうと、思った。

2010年11月27日以来となる、UVERworld、9年ぶりの東京ドームでのライブ。

あの9年前の東京ドームは私にとっては「世界が平和だったときに見た最後のライブ」。
この9年、私はずっとそう思いながら、今日まで生きてきた。

あの9年前から、世界は驚くような勢いで変わったと私は感じている。
東日本大震災が発生し、シリアでは紛争が起き、自然災害が増え、
人間による、どう考えてもそれはおかしいだろうと思うようなことも、頻発している。

9年前は、こんなに世界に、日本に、不安も抱えていなかったし、絶望もしていなかった。
未来は楽しみよりも、恐怖しかない。
そう思う時間が増えた。

だからどこかで思っていた。
また東京ドームでUVERworldのライブが観られたら、自分の中で何かが変わるかもしれない。
そう、その機会に私は希望を託していた。

2019月12月4日にリリースされた、UVERworld、通算10枚目となるニューアルバム『UNSER』。
今年の12月は、長い手術から懸命に闘病していた大事な人が症状を悪化させ、
私は毎日のように病院に通っていた。
人生でこういうことに向き合うのは初めてだと思うことが次々に起き、
毎日高いハードルを超えるような日々の中、
『UNSER』を発売日の朝から聴いてはいたのだが、音楽がなかなか頭に入ってこなかった。

音楽を聴く心の部分にまで不安が押し寄せて来て、楽曲が、いつものように自由に私に染み込んでこない。

それは私にとって何もかもが締め付けられるような恐怖だった。
けれども私は自分に言い聞かせていた。
「大丈夫、東京ドームのライブで聴けば、きっとこの音楽は私の中に広がっていく。ちゃんとわかるようになるから。」と。

2019年12月19日に東京ドームで行われたUVERworldのライブのチケットは、
10年以上入り続けているファンクラブの先行予約で買った。
私の手元にきたチケットは、アリーナ席、前から2列目という信じられないような席だった。
席に座って、ステージからのあまりの近さに、こんな近くで観られるのかと、私の手は緊張で震えっぱなしだった。

その夜は、2019年の第1弾シングルとなった「Touch Off」から始まった。
ライブで初めて聴くことができたこの1曲目から、身体のど真ん中が熱くなった。
私は、右手を高く掲げながら共に歌った。

そして、東京では10年ぶりに演奏された、
「world LOST world」(2010年4月4日リリース、アルバム『LAST』に収録)のときに、自分の中に大きな変化が起きた。

「揺り篭から墓場までだって 大した時間はないから」

この歌詞がスクリーンに映し出されたときに、足元から崩れ落ちそうになった。
毎日毎日、最期の時は明日かもしれないという緊張感を駆け抜けている真っ只中にいて、
人の一生の時間の早さというものを痛感せずにはいられなかった私には、今聴くには心に刺さりすぎる歌詞だった。

人生はあまりにも短い。

10年前にこの曲を聴いたときは、そこまで命の短さを感じることはなかった。
けれども、今の私にはこの歌詞が、あの頃とは全く違って聴こえる。

そこから、演奏されるかつてのUVERworldの楽曲の歌詞が、
どの曲も、今、この瞬間から新たな意味を持って、自分の中に響いてきた。
全ての曲が、そうだった。
まるでオセロの黒が一斉に白に変わるように、歌詞がどんどん自分の中で変化を遂げていった。
こんなライブ体験は初めてだった。

まるで自分の心を見透かされたように、
「今、聴きたかったのはこんな言葉でしょ?」と、歌声と共に届く言葉たちが心に浸透していく中、
何よりも私にとって距離が近いと感じられたのが、ニューアルバム『UNSER』からの最新の曲たちだった。

「何も知らないで笑ってたくない
全て知ったつもり 嘆いてたくない
群れるのを嫌って 掴み損ねた虹も数知れず」

東京ドームのライブで「AFTER LIFE」に触れたとき、
急速にこの楽曲が自分の中に染み込んでいった

あぁ、前回の東京ドームでのライブからの9年はまさにこれだったと思った。

この9年。
どうしてこんな悲しいことが起きるのだろうということが次々に起きていた。
そのたびに私は知ろうとした。
私は目を背けることができなかった。知った上で考え、行動した。
しかし、どんなことでもその全てを知ることは難しい。
嘆くときには、知ったことで嘆いていた。
知ったつもりになるようなことだけはしないようにしていた。

群れるのは、昔から苦手だ。
この9年の間に仲間と呼べる出会いも広がったが、私は「集団」になることを極力避けた。
孤独に思考し、個人であることを軸に動く私は、
気づけば、共に行動していたと思っていた人たちに葛藤を感じ、距離を置き、
結果、どうしようもない無力感に襲われることもあった。

「未だに俺も生きるべきか 死ぬべきかを考える
お前の事思い出すと 踏みとどまれるよ」

私は死にたがりだった。
自分にも世界にも嫌気がさして、死ぬことばかりを考えている人間だった。
そんな私を理解してくれていたのが、私にとって世界で1番優しい人だった。

誰よりも私の存在を認め、大切にしてくれていた人が自ら命を絶ったときから、
私は自分から死ぬようなことはしないという気持ちを強めはしたが、
それでも、簡単に死にたがりからは解放されることはなく、
このまま生きるか、いっそ終わらせるかの考えは、いつだって頭の中にある。

それを踏みとどまらせているのは、この9年の間に、私より先に逝った人たちだ。

「キヨさん、大丈夫ですよ。」「きーちゃん、がんばって。」
彼らが話しかけてくる声は、私の耳にはちゃんと聴こえている。だから、踏みとどまれる。

「楽しいと思えること 毎日起こるわけない
だからくだらない事で笑いあえる人を大切にするんだろう」

9年前の私は、特別で楽しいと思える日こそを重要視していた。
けれども、崩れるように平和が失われていく状況を目の当たりにしてから、
特別な日よりも、日常が愛しくなった。

その思いは、3年前に、毎日くだらない話をして笑い合っていた親友が突然死したときから決定的になった。

今、私には、親友を失った後に出会った、毎日のように話せる友人がいる。
自分にとって大事なことを素直に話せるだけではなく、くだらない事でも笑い合える存在だ。
この日のライブが終わったときにも、どれだけ素晴らしいライブだったかを真っ先に聞いて欲しくて伝えていた。
お互い音楽に生かされているような思いを共有できる友人がいることもまた、私をこの世界に踏みとどまらせている。

この文章の中で、生と死の話が多くなってしまうのは、
UVERworldがそれだけ、生き様を音楽で伝えているからだ。

彼らの音楽に触れたときに、
自分の生き方について考えない者など誰一人いないだろう。

生きることを賛美する音楽はいくらでもある。
けれども、彼らは死からも目を背けない。
いつか必ず来る終わりを真正面に捉えた上で、己の命の生かし方を問いかける。
そういうバンドだからこそ、私は心底彼らが好きでたまらない。

誰もが恐くて目を背けてしまうことでも、そこから逃げ出さずに、
いかに生きるかという音楽は、この世界の希望でしかない。

2010年に、UVERworldが初めて東京ドームでライブを行ったとき、
私は、一つのバンドが、東京ドームという場所に立つ夢の達成を見届けたと思っていた。
しかし彼らは、あの日、やりきれないことがあった。
その後悔を全て払拭したのが、2019年のこの日のライブだった。
自分で自分の中にあった悔しさに、ケリをつけていた。

アリーナ席、前から2列目から振り返った東京ドームの客席は、
明らかに2010年よりも多くの仲間で埋め尽くされていた。
あれから、UVERworldを好きな仲間が増えたことが、私は本当に嬉しかった。

この夜に演奏した「EDENへ」という曲と共に私は思った。
まさにこの場所こそが“EDEN”だと。

苦しかった。悲しかった。
希望を必死に伝えている私だが、この9年いつだって心は折れそうだった。

東京ドームで私は泣いた。
ライブ後、涙でメイクは剥がれ落ちて何もかもが素っ裸になったような顔になっていたが、
その場で撮った写真を見て安心した。

私は笑顔だった。

どんな地獄だろうと、絶望だろうと。
涙が止まらないくらい泣いても。

笑おう。
そして、これまで以上に自分がやりたいことをやろう。
世界中の誰からも無理だと思われようとも、私は挑戦しよう。

私にとって新しい夢が生まれたのが、
UVERworld、9年ぶりの東京ドームのライブだった。

今回の文章は、上手くまとめることができない。
それは私がまだ「渦中」にあるからで。

物語はこれからもつづく。
だから、来年も生きて、言葉を伝えよう。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜11秒”に乗せて)
9年を経て、再び東京ドームのステージに立ったUVERworld。
全てが最高の瞬間となったこの夜。
命の輝きを支え合う存在との未来を描いたこの歌に涙が止まりませんでした。

UVERworld「AFTER LIFE」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

年の瀬、生きて今年を振り返る。
武村さん、2019年もお疲れさまでした。また、来年も。

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