30代の頃から始めた難民支援の活動は、いつだって私の世界を広げてくれる。
2021年1月30日。
EARTH CAMPのオンラインイベントとして、
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のセッション「クイズで知る難民のいま UNHCR70年のあゆみEARTH CAMPに“Who We Are“」でモデレーターを務めた。
UNHCR親善大使MIYAVI、Youth×UNHCR for Refugeesの横山響さん、そして日本で暮らすカディザさんと共に、1時間の配信では、親善大使として活動をしているMIYAVIの思いはもちろん、ユースのメンバーが作成したクイズに、視聴者の方々に参加していただいてUNHCRの歴史と現在の難民の状況について学び、カディザさんからは日本で暮らして感じることなど、その実体験を語っていただいた。
国連UNHCR協会の広報委員として、私は毎年様々なイベントなどの司会を担当してきた。
しかし、昨年は新型コロナウイルスの影響で予定されていたことが次々に中止になり、なかなか難民支援について語りかける機会がなかっただけに、2021年は1月からこのようなアクションが起こせることが心から有り難かった。
今年はこれをきっかけに、さらに多くの活動が行えればと願うばかりだ。
このオンラインイベントでは、UNHCR親善大使MIYAVIがナレーションを務めた、国連難民高等弁務官事務所の70年のあゆみを記録した映像「Who We Are〜UNHCR70年のあゆみ」が初公開された。
またこの映像に続けて、難民の現状を数字で可視化するUNHCR年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート」を5分程の映像にした「グローバル・トレンズ 2019」の日本語吹き替え版も公開になった。とても光栄なことに私はこの映像のナレーションを担当させていただいた。一人でも多くの方に地球上の約1%が、紛争や迫害により故郷を追われているという現実をこの映像を通して知っていただきたい。
2020年4月22日にリリースされた、MIYAVI通算12枚目となるアルバム『Holy Nights』に収録された楽曲、「Hands To Hold」はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のロゴにインスパイアされて作られた楽曲だ。
MIYAVIが親善大使として、難民支援の活動を通して、表現したかったという「人と人のつながり」についてを歌い、2019年3月に親善大使として訪問したケニアにあるカクマ難民キャンプで初披露された。
私自身、国連UNHCR協会広報委員として講演や授業をする際には、必ずUNHCRのロゴのマークの話をする。
国連機関のロゴは平和の象徴であるオリーブの木の枝を交差させた輪の中にそれぞれの機関を象徴する絵が描かれている。例えば、国際連合児童基金(UNICEF)のロゴでは、子どもが高く抱き上げられ、国際連合世界食糧計画(WFP)のロゴは、トウモロコシの実、穀物の茎や稲穂で、WFPが配給する代表的な食糧を表し、描かれた手は、支援物資の動きを表し、物資を送り、そして受け取るということを表現している。
そして、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のロゴは、人を守る人の手が描かれている。私は、このロゴの説明をするときに、「このロゴを見てください。この手に守られている人は一人ですよね。UNHCRは一人ひとりの人生を守るために活動をしています。」と話している。「今、世界で約7950万人の人が家を追われている。」という数字の話もするが、例えばこの約7950万人が全員同じ国籍でもなければ性別も年齢も違うように、難民という状況に置かれている人は、一人ひとりにそれぞれの人生がある。そして、心に抱く夢も一人ひとり実に様々だ。
EARTH CAMPに出演していただいた女性、カディザさんは、ロヒンギャというミャンマー西部のラカイン地域で1000年以上の歴史を持つイスラム系少数民族。笑顔がとても素敵な彼女は、日本に来て、日本語学校に通い、RHEP(難民高等教育支援プログラム)を使って青山学院大学で学ばれ、ユニクロで働き、二児の母でもある。
そんな彼女がこの春から早稲田大学大学院に入学される。当日、カディザさんにすごいですねと聞いてみたところ、彼女が大学院に進学できるきっかけとなったのは、昨年、新型コロナウイルスの影響により、2020年4月7日に発令された(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県。4月16日に対象を全国に拡大。)緊急事態宣言による、ユニクロ店舗の休業だった。
彼女は仕事が休みになった2ヶ月間で「今なら勉強ができる!」と試験に挑むための勉強をして、見事大学院に合格した。彼女は大学院で学んで、自分と同じような状況の人たちを支えていきたいという夢がある。
私は、難民という非常に困難な状況の中においても、夢をあきらめず、懸命な努力をして、人生を切り拓いている人に多く出会ってきた。カディザさんもそんな一人だった。
難民問題というと、世界の遠い問題のように思うかもしれない。けれども、ここ日本でも、彼女のように、日本で生活をしながら懸命に生きている人がいる。
私は、自分が生まれた国で育ち、自分の国の言葉で、爆撃や迫害などの恐怖に怯えることもなく生活ができるという状況で生きてきた。そんな自分は昨年の緊急事態宣言のとき、どうしていただろうか。決して希望は失ってはいなかったが、彼女のように、この時間を活かして自分の人生の未来に向かって、力強く動けていただろうかと自らの行動を振り返り、反省するばかりだった。
カディザさんは、身の安全のために日本に逃れ、一から新たな国での言語を学び生活をし、新型コロナウイルスの影響にも負けないどころか、むしろ、「今の状況ならこういうことができる」とポジティブに未来を見据えていた。
そんな彼女と出会ったことで、私の中に大きな勇気が湧いてきた。
EARTH CAMPの出演を終えた後に、「Hands To Hold」を聴いた。
この曲には私がUNHCRと出会って、難民支援で大切にしてきたことの全てが詰まっているように感じている。
そして、この曲を聴いていると、これまで私が出会った難民として今を生きている人たちの顔が次々に浮かんでくる。私が出会った人たちは、皆、人生において大切なことを教えてくれた。その一人ひとりが、これからの未来で、それぞれの人生をおもいっきり自分らしく生きられることを、私はずっと願っている。
今は日本から世界に行くのが厳しい状況だが、いつか再び、自由に移動ができる日が来たら、必ず、また世界で様々な状況に置かれている人に会いに行こう。彼らの話を聞いて、寄り添って、日本で伝えていきたい。
そして、そのときには「私が大好きな曲なんですけれど、聴いていただけますか?」と「Hands To Hold」を紹介したい。
言葉が通じなくても音楽で一つになれる。
そのことなら、私はすでに経験済みだ。だから自信を持ってこの曲を薦めたい。日本のミュージシャンが、ギタリストが、あなたのことを思って、つながり合っていこうという思いを込めた曲なんだよと。
目の前に景色が広がる。
この曲が、今よりも、もっともっと多くの人をつないでいく景色が。
それは、ポジティブなパワーで満たされる輝きに満ちた瞬間。
【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜8秒”に乗せて)
優しい手の温もりのように、つながり合って生きる。
この曲から生まれる笑顔が、そんな世界を作り上げていくと私は信じています。
MIYAVI「Hands To Hold」