氷の話

第7期(2013年2月-3月)

みなさん、はじめまして。
しゃもと、と申します。

今週は、今月始めまで行っていたアルゼンチンの話。

あちらは夏でした。
暑いところには蚊がいますので、私たちはブエノスアイレスに着くなり蚊の大歓迎を受け、めでたく肌は刺された所とそうでない所の水玉模様。
直撃を避けるため、直ぐさま私たちは避暑地へ。
蚊は極端に少なくなり、そこでしばらく海からのアルファ波を浴び続け、へろへろな日々を過ごしました。

そして私たちは、いい感じにへろへろになった身体と心を、より豊かにしようと贅沢な旅を開始しました。
それは「氷の世界」を見に行く旅。
氷の世界の名は「ペリト・モレノ氷河」。
首都ブエノスアイレスから南へ、パタゴニア地方の世界遺産、ロス・グラシアレス国立公園内にあります。
いざ、出陣。

まいりました。
その姿、まさに壮大。
全く無知状態でそこへ行った私の目に、焼けるように入る眩しすぎる景色。
「素晴らしい」の一言。
氷河の先端は青白く聳え立つ氷の壁。
その壁から氷が湖に剥がれ落ちる前に出す、うねるような音は、音というより「氷の声」のように聞こえる。
「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお」と低い声でうなり「ばきっ」という割れるような声が壁の奥深くから聞こえてくる度にドキドキした。
一体いつから氷でいるのだろう。
ここはいつまで氷でいられるのだろう。

凝視できない、させてくれない。
涙がじゃんじゃん出てくるのだ。
巨大な壁の前に立つと、そこからは青白い光が帯びて眩しく太陽もギラギラで、おまけに風も強いし冷たいから、サングラスから流れるわ、流れるわ、涙。
そんな簡単に見せられるものですかと言わんばかりに神々しいのだ。

高台から水面上高さ60メートルの壁を見下ろすと、無数の巨大な氷の槍が30キロメートル奥まで広がっている。
それは奥の山々へ消えてゆくように広がっている。
とても容易にスイスイ奥からやって来れそうではない。
氷の世界と聞くと、アニメのIce Ageの世界を思い描いていた無知な私は、ペンギンさんたちがスーイとお腹から滑って湖へポシャンと落ちる事ができるような滑らかな表面をしているものだと信じていた。
しかし、それは完全に間違っていた。
氷の槍の森は静かに獲物を待っているかのように、唸り、生き物を遠ざける。

私たちはまず遊歩道から2時間、フェリーから6時間、またまた遊歩道から4時間と合計で3日間かけて、飽きもせずその「お姿」を拝見しに片道1時間30分かけて通ったのでした。
フェリーからは、プッカリプッカリ浮かぶ、氷河の固まりから落ちた「湖の流れに身をまかせ」状態の氷を近くで見た。
トルコ色のような、ガリガリ君アイスの色のような、口に入れたくなる色をしていて、美しかった。

蚊に刺された水玉模様が消えかけてきたら、ベルギーへ戻る日になっていた。

海からはアルファ波を頂き、氷からは青く冷たい光線を頂いた。

そして思ったこと。
世界は広い。
自然の営みには逆らえない。
氷河のように自分の立つべきところで静かに存在しているだけでいいのだということ。
大切に生きてゆかなければならないこと。
大切に共存してゆかなければないということ。

氷の世界と、忙しい都会の世界は繋がっている。
私たちは生きている。

旅はおしまい。
また来週、お会いしましょう。
さらばじゃ。