ルーマニア徒然 - ルーマニアの色

第21期(2015年6月-7月)

 ルーマニアは彩度の高い国だ。カメラを携えて街を歩くと、撮りたいものが沢山あって中々目的地に着かない。冬は勿論欧州の常で、鬱蒼とした雲に被され街は雪に覆われ陰鬱とした雰囲気になるが、春、太陽が辺りを溶かし始める頃、花は咲き乱れ草木は生い茂り、犬猫は日向ぼっこをし人々は暑いコートから脱皮して散歩に興じ、あらゆる生命がただただ春の訪れを楽しむ。そんな時写真を撮っていると、どうしても彩度の高いものが合う。街には街の色がある。パリには霞んだ色が合うし、ロンドンは近代的な建物の裏の硬質な暗がりのイメージだ。バルセロナは原色の華やかさが合うし、ベルリンは重厚な印象だ。ルーマニアは花の色である。それは原色でもないしくすんでもいないし、華やかというよりは晴れやかな天然の健康的な色である。カメラ片手に歩いていると、なんとなくそんな気がしてくる。


Old ladies
 どの時間帯もこうやってのんびりしている人がいる。




 色と言えば、ルーマニアの国旗は青、黄、赤の3色だ。青は空(黒海だと聞いたこともある)、黄色は穀物(鉱物とも)、赤は独立闘争で流された血、とのことだ。個人的には、黒海と穀物、そして1989年の革命を想起する(もっともこの色使いは1989年以前からのものだが)。


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 この写真は当時の革命の時のものだ(因みに流用ではなくサラエヴォに行った時に第一次世界大戦100周年記念で展示されていた写真の写真である)。国旗の真ん中に配せられた共産政権の紋章が繰り抜かれている、ルーマニアにとって極めて象徴的な「穴」だ。昨年末の大統領選、中道右派のヨハネス氏が過去の共産政権の流れを汲む政党に属する現職首相のポンタ氏(ローソンとは関係無い)を破り当選した際、僕の家の目の前の広場に人々が集まり”ジョス・ポンタ”(ポンタ降りろ=辞めろ)と叫び立てた夜も、この穴の空いた国旗が誇らしげに頭上を舞っていた。闘わないと揶揄されてきたルーマニア人が血を流してまで立ち上がった、誇りと気概を象徴する旗なのだ(それにしても、この旗を持つ人物は携帯をいじっているようにしか見えない)。


 革命のあった場所の辺りは今でもデモが盛んで、僕の家の前の大学広場ではよくデモをやっている。近くで野外コンサートもやっていて、たまに窓を開けていると運が良ければクラシックが聞こえてくる。僕はあまり音楽をかけない。こういう窓の外から聞こえてくる街の音の方が好きなのだ。窓から街を見渡すと、ルーマニアには高い建物があまりないから空がよく見える。そう思うと、国旗の青はやっぱり空なのかも知れない。


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ブカレストの真ん中にあるクルツレスク教会。革命広場のすぐ側に18世紀から建っている。この教会も、革命時に流された市民の血を見届けたのだろう。