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2F/当番ノート

百四十字夜行

当番ノート 第2期

どうも、はじめましてイルボンです。
詩的な瞬間とか断片を採取することに興味がある人間です。
ひらたく言えば詩人です。大阪で小さなギャラリーを運営しています。
短い間ですが、どうぞお手柔らかにお願いします。

***

twitterを再開してから一年くらい経ったか。ギャラリーの運営を始めてから、twitterが色々と宣伝効果があるらしいということで、アカウント(会員ID)だけ作ってほったらかしになっていたコイツとまた付き合うことになったのだ。さぁ、あらためてコイツと向きあうのだが、どうお付き合いしていいかわからない。奇しくも自分は詩人である。詩人というのは本来「残る言葉」を綴るのが本分である。と、一般的には思われている。私にとっては言葉が言葉を突き破るほどの動的感性を持ってひとを揺さぶることが理想なのだが。

で、コイツは何だ。どんどん誰かのつぶやきで自分のつぶやきがかき消されてゆく。しかしつぶやきって本来自分だけのものとちゃうの?なんで誰かのつぶやきを共有するん?まずこれがわからん。で、どうやら「ひとつぶやき140字まで」と決まっているらしい。なんじゃそら。おやつは300円までじゃあるまいし。言葉の遠足か。で、今何してるんかいちいち報告するらしい。「そんなこたぁいちいちてめぇに知られたかねぇ」なう。オレむっつりやし。

詩人ちゅうのは存在そのものが詩であるべきであって、そのおつぶやきは一撃必殺なんじゃ。と、自分で自分にプレッシャーをかけると何もつぶやけなくなった。はは。ざまぁねえな。誰も言ってないが、いや言ってるかもしらんが、twitterとどう付き合うかちゅうのは全ての生きとし生ける詩人への21世紀最大の問いであるのだよ。2011年、日本は震災によってたくさんのものを失った。twitterをやっているひとであれば、ほとんどがその時の皆のつぶやきに恐れ慄き希望を失くしたであろう。あれは地獄の実況生中継。こいつぁデマと風評と陰謀のツールなんやなとあのときリアルに認識。たとえば戦争起こったらどないする?もっと悲惨な状況になるのは目に見えとる。あれは現実のようでディスプレイの中にしか存在しない世界なんや。と、当たり前に理解。わーもう知らん。何もつぶやけん。で、今はほとんどギャラリーの展覧会告知にしか使っていない。アカウント名もギャラリー名に変えてしまった。

そんな時、夢を見たのだ。twitterの。正確には夢の映像がtwitterの画面だった。自分が見ているその映像ではカマキリの写真のアイコンがあって、それが誰なのか何をつぶやいているかもよくわからないが、ただ文字の流れが下にスクロールして消えてゆくのを眺めているのだ。まさしく、夢を見ているなう。体感時間としたら数秒だったし、それ以外のことは何も覚えていない。ちなみに「カマキリ 夢占い」で検索したところ、ストレスとか呪いとか女性に喰われるとかロクな夢じゃないみたい…。ええと今とりあえず身の回りに女性問題はないのだが、ストレスというのは感じていてそれはtwitterそのものへの嫌悪感なのだった。もしかしたら、twitterそのものに自分が喰われる暗示だったのかもしれない。

考えてみれば、最初に私が詩集を出した時のテーマが「わたしたちの独白」であった。舞台役者も経験した私にとっては紙上も舞台なのである。オレむっつりな上にカッコつけやし。そしてその舞台でのモノローグ(独白)はワタシと同時にアナタにも向けられたものだ。なんや、それってあれほど嫌悪していたtwitterと同じやないか。twitterにいいように振り回されていた私は、その夢がきっかけとなって逆にtwitterを利用してやれと思い立ったのだ。もう逃げも隠れもせん。この手の中でコロコロ転がしてくれるわ。さて、具体的にはどうするかというと、百四十字の詩をまとめた詩集を作りたいと思った。百四十字まで、ではなく、きっちり百四十字の詩がまとめられた詩集。現代の定型詩だこのヤロウ。

ルール。

①もちろんtwitterで書く
②タイトルも含めてきっちり140字
③自分のアカウントのタイムライン(時系列でtwitterのホームページ上に様々な人たちの発言が流れてくるスペース)の言葉に霊感を受けて書く

詩集の名前も決めた。
深夜のタイムラインを彷徨いながら書くので、「百四十字夜行」とする。

長くなりましたがそこで書いた数編をご紹介してまた来週。
蛇足ですがこの原稿自体はmixiで書いてるんですけどね。

ではでは、みなさま安寧に。

***

【マジックカット】「こちら側のどこからでも切れます」が どうしても切れないのである もちろんそちら側からもあちら側からも切れないのである ギョーザのたれの小袋すら切れない僕に 君との縁を切れるはずはない 未練とギョーザが残されて プツッとフィラメントが切れた これから余生が始まる
posted at 03:48:48 01/11/2011

【ギブスでピンポン】卓球少年は いつも脱臼少女の肩を持つ なぜなら卓球少年は 脱臼少女に恋していたからだ 脱臼少女は 卓球をしたことがない なぜなら直ぐに脱臼するからだ 卓球少年は脱臼するまで卓球するほどの愛で 脱臼少女に肩入れするが 脱臼少女は卓球するほどは卓球少年に欲求がない
posted at 04:56:12 01/11/2011

【あらすじ】これから産まれるあなたは これから死んでゆくわたしを愛するの わたしたちの交わる僅かな時間に わたしたちはエアホッケーをして 新しいカクテルを飲んで ソールの剥がれた靴でサッカーをするの 今夜の映画のあらすじは 先に寝てしまうわたしが あなたの明日の寝言から発掘するの
posted at 02:50:39 06/11/2011

イルボン

イルボン

詩人/詩演家。またはgallery yolchaの車掌。
ジンジャーエールと短編映画と文化的探検が好物。

2006年、第一詩集「迷子放送」を上梓。
2007年、自らの詩の語りとパフォーマンスに半即興的に音を乗せる、活劇詩楽団「セボンゐレボン」を結成。
2010年、大阪で多目的ギャラリー「gallery yolcha」を運行開始。

※gallery yolchaは、大阪・梅田近くの豊崎長屋(登録有形文化財)に位置する特殊な木造建築です。この屋根裏部屋とバーカウンターがあるギャラリースペースを使って、共に真剣に遊んでくれる作家を常時募集しております。詳細は上記リンク先をご覧下さい。

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