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2F/当番ノート

イノシシと料理

当番ノート 第18期

この仕事を始めてから「イノシシってどうやって食べたらいい?」と質問されることが多くなった。

そんなとき、私はいつも「食べたい料理に合うイノシシ肉をご提案しますよ」と、答えることにしている。

イノシシ肉は調理が簡単で、家庭でも扱いやすい食材だ。

そこで、イノシシ肉をより美味しく調理するために、知ってほしいポイントがふたつだけある。

ひとつめは、そのイノシシが生活していた自然環境だ。

イノシシは、タケノコやドングリ、ザリガニにヘビまで、なんでも食べる雑食動物だ。

だから、シカなどの草食動物に比べて,地域や季節で食性が大きく異なり、それが肉の味を大きく変化させる。

私たちは、その味の違いを「個体差」と呼ぶ。

例えば、新芽や筍などを食べている春のイノシシは、赤身にフレッシュな香りを持っていて、オリーブオイルや春野菜との相性がとてもいい。

また、ドングリやシイの実をたくさん食べている冬のイノシシの脂身には、ナッツのような香ばしさや甘みがあり、ドライフルーツやキノコ、根菜とよく合う。

一方で、植物性の餌に恵まれず、沢蟹や昆虫などの動物性の餌ばかりを食べたイノシシは、雑味があり旨みが少ないと言われている。

そういった個体差を理解することは、イノシシ肉を購入したり、料理をつくる上でとても大切だ。

ポイントのふたつめは、使う部位に合った調理方法を選ぶこと。

野生動物は運動量が多いので、家畜に比べて、部位の特徴が強く出る。

筋肉質で、コラーゲン豊富なスネやウデは、じっくり煮込んで柔らかくなっても煮くずれしない。旨みが逃げにくいから、煮込み料理やハンバーグに最適だ。

モモやランプ(お尻)は、歯切れがよく味が濃いので、焼肉やステーキが美味しい。

季節や地域、また部位によって、たくさんの表情を見せてくれるのが、イノシシの面白さであり、難しさでもある。

野生動物のお肉を味わうとき、その動物がどんな環境で、なにを食べて生きていたのかを想像してみよう。

今まで感じることのなかったなにかに気付けるかもしれない。

長濱 世奈

長濱 世奈

1990年 東京都生まれ。
ゆとり教育のど真ん中を通過し、成熟期を生きる未熟者。
「選り好みしない」をテーマに、コンビニから狩猟まで、食を軸にした生活・文化を勉強しています。
2014年の春、島根に移住し、おおち山くじら事業を立ち上げています。

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