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2F/当番ノート

000号室

当番ノート 第29期

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モザイクみたいにこまくて、膨大な

だけどひとつ、ひとつが、あわさって

わたしの視界はできている。

モザイクみたいにこまかくて、膨大な

そのひとつ、ひとつに、目をこらすたび

わたしはわたしの行方を失った。

こどものころ、枕元に置いたたくさんの人形を

ひとつ、ひとつ、毎日順番に、

かわるがわる抱いて眠らないといけないような気がしてた。

きっとそのころと何にも変わらない。

みんなしあわせだったらいいのに、とおもうこの思考は

きっとある種の怠慢で、なげやりで

なにを守る気もないのかもしれない。

なにも守ることができないのかもしれない。

だけどわたしは

みんなの愛が、叶えばいいのに。

そうおもうことをやめられない。

わたしには、叶えられっこないのに。

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このモザイクみたいにこまかくて、膨大な

アパートメントの窓明り

すべてがきちんと灯ればいいと、どうしようもなくねがってしまう。

あたたかな光でもいい

つめたい光でもいい

それぞれの体温で、灯ればいいと、ねがってしまう。

「生きてるだけで正義だよ」

いつかのわたしの、ことばが、ふってくる。

息を吸い、吐く。

「わたし」のほんの少しだけ外にある、

分子と出会い、別れる。

そこに生まれる、ちいさな灯火を

焚いて、燃やして、生きている。

煌煌と、生きている。

「生きてるだけで、正義だよ」

いつかのわたしが、今日のわたしに

その手で光を灯した。

福永マリカ

福永マリカ

役者、脚本、音楽。24歳。
「いつかのわたし」が書いたメモを、
今のわたしが受け取って
「今」として、ぴちぴちのことばにしてみます。

Reviewed by
はらだ 有彩

福永マリカさん「000号室」に寄せて


「みんなしあわせだったらいいのに、とおもうこの思考は
きっとある種の怠慢で、なげやりで
なにを守る気もないのかもしれない。
なにも守ることができないのかもしれない。」


水辺にはギターを抱えたマリカさんが立っている。
誰かのことを考えているかもしれない。昔の歌を歌っているかもしれない。
辺りに人影はなく、メッセージを受け取るはずの「誰か」はここにいない。

この池の向こうに森がある。森の向こうに畑があって、畑が終わると街がある。
街のはずれから地下鉄に乗って、そこから乗り継ぎを3回。
途中、喫茶店で休憩すること2回。駅前のバス停からさらに4駅。
そこがあなたの住んでいた部屋だったね。


「このモザイクみたいにこまかくて、膨大な
アパートメントの窓明り
すべてがきちんと灯ればいいと、どうしようもなくねがってしまう。
あたたかな光でもいい
つめたい光でもいい
それぞれの体温で、灯ればいいと、ねがってしまう。」


マリカさんのコラムのレビューを書かせていただくのは今週でおしまいです。
もう二度と入ることのないかもしれないアパートメントの一室。
とてつもなくさびしい、さびしい、だけどこの目で見られなくてもきっと光が灯っていますように。
わたしたち、生きているんだから。/終

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