モザイクみたいにこまくて、膨大な
だけどひとつ、ひとつが、あわさって
わたしの視界はできている。
モザイクみたいにこまかくて、膨大な
そのひとつ、ひとつに、目をこらすたび
わたしはわたしの行方を失った。
こどものころ、枕元に置いたたくさんの人形を
ひとつ、ひとつ、毎日順番に、
かわるがわる抱いて眠らないといけないような気がしてた。
きっとそのころと何にも変わらない。
みんなしあわせだったらいいのに、とおもうこの思考は
きっとある種の怠慢で、なげやりで
なにを守る気もないのかもしれない。
なにも守ることができないのかもしれない。
だけどわたしは
みんなの愛が、叶えばいいのに。
そうおもうことをやめられない。
わたしには、叶えられっこないのに。
このモザイクみたいにこまかくて、膨大な
アパートメントの窓明り
すべてがきちんと灯ればいいと、どうしようもなくねがってしまう。
あたたかな光でもいい
つめたい光でもいい
それぞれの体温で、灯ればいいと、ねがってしまう。
「生きてるだけで正義だよ」
いつかのわたしの、ことばが、ふってくる。
息を吸い、吐く。
「わたし」のほんの少しだけ外にある、
分子と出会い、別れる。
そこに生まれる、ちいさな灯火を
焚いて、燃やして、生きている。
煌煌と、生きている。
「生きてるだけで、正義だよ」
いつかのわたしが、今日のわたしに
その手で光を灯した。