ぽつら、ぽつら。
あかりがまばらについている。
ひとりだなあ、とおもう深い夜
そんないくつかの窓あかりをおもいうかべて
ひとりだ、ということはみんないっしょで
そういういみで、ひとりじゃないな
とおもいます。
どうしたってひとりだなあというとき
そんなふうにみえないだれかをおもって
よるをこえて、あさをむかえました。
わたしのなかにも、
いくつもの、いつかの夜の窓あかりが
真夜中のアパートメントのように、
ぽつらぽつらと並んでいます。
ふだん役者として、芝居をするわたしは
そのなかの、いずれかの窓にあかりを灯して
役を演じます。
いつかのわたしを
また、煌煌と燃やして、ひとりを生きます。
そんなとき、たよりにするのが、
いくつものいつかの、メモ書きです。
あの瞬間に強く瞬いたものをそこから読み取り
あの瞬間を、今、解凍するようにして
からだになじませてゆく。
そうしてできた肉体でわたしは、台本のなかにあることばを発したりしています。
おくればせながら、はじめまして。
福永マリカです。
これから二ヶ月間のあいだ、
いつかのメモをたよりにして、ここでは芝居ではなく
さらなることばを、ならべてみることにしました。
いつかの「今」その瞬間を
解凍して、立ち起こして
また、今、として、新鮮なことばにしてみることにしました。
過去の自分のことばに、今のわたしがことばをつなぐ
ということです。
24年と短い歴史のなかですが、
いつかの夜を引き継ぐみたいに、
知らぬまに消え去ったり、消し去ったそのあかりを
もういちど、煌煌と燃やしてみます。
めいっぱいのひとりをともして
あの日に、きょうに、まだ見ぬ日に、
そして、まだ見ぬ誰かにとどいたら、ラッキー。
どうぞよろしくお願いします。