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2F/当番ノート

527号室

当番ノート 第29期

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アイドルを見て、心から微笑む。

アルバイト中、心から微笑む。

カウンターや、テレビ画面

何かを媒介した

わかりやすい虚構にコーティングされたわたしは

いつ、どこよりも、本当に

心の底から笑っている。

わたしでなくなった途端に

わたしの底から感情をあらわにすることができる。

わたしは誰でもいい誰かになりたい。

誰かにとって、ではなく、

わたしにとって、誰でもいい誰かに。

わたし、わたし、

やかましいわたしが

沈黙する瞬間を

わたしは、待ってる。

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今週は、いつかの5月27日にことばを継ぎました。

五月蝿い。

頭の中がやかましい季節は、

もしかすると、出会いから少し経った季節なのかもしれません。

「そんなときこそ、相手をよく見なさい」

と言われたことが、毎度のように反復されます。

頭の中の蝿は、

本当の空を飛ぶことはできないのだもんね。

福永マリカ

福永マリカ

役者、脚本、音楽。24歳。
「いつかのわたし」が書いたメモを、
今のわたしが受け取って
「今」として、ぴちぴちのことばにしてみます。

Reviewed by
はらだ 有彩

福永マリカさん「527号室」に寄せて

「わたしは誰でもいい誰かになりたい。
誰かにとって、ではなく、
わたしにとって、誰でもいい誰かに。
わたし、わたし、
やかましいわたしが
沈黙する瞬間を
わたしは、待ってる。」

初夏の気配の中、ひとりの女性が写真を撮っている。
突き刺すように、発光するように瑞々しい新緑。
彼女の携帯電話の中には画像になった葉が概念として存在している。

リカーシブといえば、私は《わかったさんのアップルパイ》のことを思い出します。
わかったさんが開いている本の中にもわかったさんがいて本を持っている。
その中にも本を持ったわかったさんがいて、彼女が持っている本の中にも…。
そこで私は思わず振り返ります。今個の瞬間の私も誰かの夢の中のキャラクターなのかもしれない。
入れ子になったたくさんの私はてんで勝手なことを言い、誰も話を聞いてやしない。

もしかすると、五月に五月蝿くせずに黙っていなさいという方が無茶かもしれない。
これから夏になる。
生命力がすべてのものに満ち溢れ、何かしたい、何かしなければ。
これからすごいことが起きるのだから。
それは全てわたしの手によって起きるのだ。誰でもないこのわたしの手によって。

/終

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