絵本を描いています、というと、「まずおはなしを考えて、それに合った絵を描いていくんですよね?」と尋ねられることがありますが、私はそういう順序では描いていません。
落書きからちょっとしたストーリーやおはなしのワンシーンが浮かんだら、そこからすこしずつ膨らませて絵本にしていきます。ストーリーより絵のほうが先なのです。
絵本をつくり始めたころはあまり深く考えず、いきあたりばったりで描き始めて、最後に辻褄があわなくなってしまったり、ページの途中で主人公の進んで行く方向が逆になるという矛盾が起こったりしたので、今では描き始める前に雛形を作るようにしています。絵本の形になってページをめくっていったときに、どんなふうに見えるか、ページの真ん中の折り目が絵のどのあたりにくるか、雛形を作るとわかりやすいのです。ただ、あまり下書きや準備作業が長いと途中で飽きてしまったり、面倒くさくなってしまったりするので要注意なのですが。
「じゃあ、どうやってこんな絵やストーリーを思いつくの?」と聞かれることもあるのですが、こればかりは私にもよくわかりません。自分の中からでてくるものなので、自分の一部分なのだとは思いますが。。。いつもしている落書き(絵だけでなく、文字で書いたものもあります)は必ずとっておくようにしています。ノートに描くこともありますが、広告の裏や何かの切れ端、色を塗ったものから走り書きのようなものまで、箱に落書きの山をどっさりためこんでいるのです。バラバラの落書きをつなぎあわせ、膨らませて一つにしたものが絵本になる、という具合です。
絵本というと、無条件に子供向けだと思われることもあるのですが、私は子供向けと意識してつくっていはいません。子供向けにつくる、ということがどういうことかあまりよくわからないし、そもそも子供と大人の違いってなんだろう?絵本は子供だけのものではないと思っていますし。
描くときに、これを読んだ人がどう思うだろうか?ということは、実のところほとんど考えていません。自分が描いていて楽しいと思えて、結果的にそれを見た人にもなんだか前向きな、楽しい気分になって、さらに何かインスピレーションをもたらすようなところまでいければ、とても嬉しい。