はじめまして。梅雨入りから夏にかけて季節が移ろう、このみずみずしい2ヶ月間に、週に1回の連載を持つことになりました。あたたかなご縁に感謝します。初回は自己紹介も兼ねて、大学を卒業してから、これまでについて、少しだけお話することにしましょう。
私は現在24歳、社会人3年目です。文系の四年制大学を卒業し、半年ほど前までは、坂下にある小さなドラッグストアで働いていました。
大きな公園が目の前にあるのどかな場所で、風が吹くと湿った土の匂いが入ってくる店内から、いつもいつもを外を眺めていました。開けっぱなしで営業していたので、お店は差し込むひかりで満たされていた。入り口のシャッターレールによくつまずきました。そして、当時の私はそのレールを、外と内の世界を隔てる透明なかべのように感じていました。
いつかの夏日に、その場所で、色のない透き通ったヤモリを見ました。とても綺麗だった。「ああ、こいつは神様みたいなかたちをしているな」と思った瞬間には、もう消えていました。まるで神様から「お前にはその場所がぴったりだ」と言われているような気持ちがして、ぼうぜんと立ち尽くした記憶があります。
今ならば、はっきり分かるけれど、あの頃の日々には、ずっと生々しい後悔が付きまとっていました。周囲の人に「自分を信じなさい」と言われながらも、とうとう信じ切ることが出来ず、中途半端に終わらせてしまった就職活動。叶わなかった、言葉を用いて仕事をしたいという思い。段ボールだらけの事務所の中で、行き場のない自意識を閉じ込めるように「この寄り道には意味がある。手放さずにいれば、つながる日がくる」と、強く思っていました。
そして新卒の春に入社し1年半後、昨年の秋。銀杏が色づき始めた頃に、会社を辞めました。
この連載では、途切れた先にある今の仕事や生活の話、日々の感情が揺れ動く部分を切り取りたいです。夢が叶う話ではなく、叶わなかったその先の話を、過去と今を行ったり来たりしながら、綴っていきます。
連載が終わる頃には日差しの熱い夏になっていることでしょう。
私はこうして文を通して誰かとつながれる機会をしあわせに思うのです。文通のように、どうか、あなたの日々の話もお聞かせくださいね。
また来週お会いしましょう。
ほたるいか