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Do farmers in the dark(29)

Do farmers in the dark

猿が人と脳を埋めている。人は割と自発的に埋まりに行っているのか、頭から砂をかけられても全然平気な様子

今回は小説が書きたくて、平和な世界でピッケル型固形コニャックが当面のあいだずっと手に入り続けている世にも幸運な男のファンタジーを書きました。読む人に徒労と退屈をすごく与える文章になっています。ではよろしくお願いします!

セルジィ、ある一日

おい、セルジィをとってくれ。セルジィを!(セルジィ=ピッケル型固形コニャックの事)

今日もまたバッポスの旦那は妻のベルンパスに言った。

バッポスは禿げて太った、大変にすえた匂いのするかなりハンサムな心優しい中年男性だった。妻のベルンパスと2人で良く熟し腐ったアパートに住んでいる。

妻のベルンパスは禿げかかった頭からまさに腐った桃の匂いのする小太りで長身の少女のような心根の優しい中年女性で、美人といって差し支えなかった。

アパートの成分の70%はネバついたネバネバ粘菌だった。あと10%は粉塵、9%は木、1%はオゾン、残りの10%は名前も無い未知の物質で出来ていた。

(オゾン=匂いの強い、毒性のある酸素の事)

そのような成分の割合からごく自然に、アパートの色はうっすらピンクがかった灰色だった。

少し待ち、バッポスのおかみさんであるベルンパスはセルジィをボッパスに勢いよく投げつけ、

「うんざりだよ、いつもそうやってセルジィばっかり食べてえぇー、少しはホリしなさいよぉ…」

(ホリ…所定の壁面に頭を打ちつけ続ける事)

「あぁ…ウンウン。ホリはチャプがそこまで貰えないし、それより俺はね、エビをたくさんやる事にしたよ。」

(チャプ=通貨が原材料の偽のクリスタルの事。つまり偽のクリスタルが原材料の、1番良く使われる通貨の事(クリスタル=透明で光を当てた時に限ってキラキラするやたらと固い物質))

(エビ=所定のザラついた壁面におでこを擦り続ける事)

「あとシロップもとってくれないか」とバッポス。

(シロップ=液砂糖の事)

「クソ禿げぇぇ~」

と言いながら、心優しい禿げかけのベルンパスは小さな使い捨て容器に入ったシロップを4つバッポスに放り投げた。4つも。大変優しい。

同じく心優しい禿げたバッポスは、一心不乱にバラバラにテーブル1つと床に3つ落下したビニール容器に入ったシロップを拾い集め、どんくさいフォームかつ目にも止まらぬ素早さという相反する要素を備えつつも実際実に俊敏なる動きでセルジィにシロップをかけてポリポリと齧り始める。そしていつものように、今後の計画を練っている。

エビをたくさんやって、チャプを稼ぐ事だ。

セルジィによってバッポスの頭はどんどん冴え渡る。セルジィにはうまいばかりか大変に頭を冴え渡らせる薬効がある。

今後の計画を練る。

つまりエビをたくさんやってチャプを稼ぐ、それをセルジィによって冴え渡った頭脳によりバッポスは心の中で100回ほど反芻するという事だ。

バッポスの立てる計画というのは常にものの1秒で計画できる事しかなかった。その後その1秒で立てた計画を、繰り返し、思い出すだけだった。

いずれにしろ、バッポスは冴え渡った頭脳で未来予知が瞬時に完璧に出来るようなっていた。エビでチャプを稼ぐ自身の姿がありありと見られる。充実した豊かな生活が見える。

ただバッポスは実に聡明で挑戦的な人間だったので、既に分かっている未来、予知した未来に対し決して行動は起こさなかった。

つまり計画をし繰り返し計画を思い出したりし、妻ベルンパスにもその計画を明らかにしていたが、実行される事はそれをしなければ死ぬという段階にならなければ実行されない。向こう何年かそれが実行されるような事は無いだろうし、バッポスが何かセルジィ以外を手に入れる事はないだろう。何かの弾み、外圧のみがバッポスを動かし働かせうるのだが、バッポスは挑戦的かつ非常に保守的な人間だったのでアパートに出来るだけ籠城し運や外圧を巧みに避けていた。

最近バッポスがやってる事はポキツキのみだった。たった今もポキツキをしていた。

(ポキツキ=空中で親指を絶え間なく動かす事)

ベルンパスは

「ポキツキばっかやるなよぉ~」

と言った。

バッポスは、そうだね、気が向いたら止めるよ、と言いずっとセルジィを少しかじり、また少しポキツキをし、またセルジィをかじりまたポキツキをする。そして冴え渡る頭脳で素晴らしい今後の計画を練っている。

部屋の床や壁には小さなオゾン蟻がたくさんいる。オゾン蟻はネバネバ粘菌に穴を掘り粉塵を巧みに使い巣を作り、バッポス達と一緒に住んでいた。オゾン蟻はアパートに1パーセント含まれるオゾンを食べている。と見せかけて実の所バッポスのこぼすシロップやセルジィのかけらをいつも狙っていた。当然だ。オゾンは吸う事しかできない。何か食わなくては。そんなこんなでオゾン蟻達はこの日もかけらやシロップをたくさん集められて満足している。

オゾン蟻の1人、蟻語でソロー55世いう名の蟻の青年がこの日もバッポスがセルジィをかじり始めてから果敢に机の上を攻めていた。

「今日もセルジィがべらぼうにうまいぜ!!」とソロー55世は蟻語で叫んでいた。仲間のオゾン蟻たちも巧みにチームワークに偽装された究極の個人プレーをしてそれぞれにセルジィやシロップを楽しんでいた。

ソロー55世はすでに5時間近く机の上でバッポスと入れ替わり立ち替わり現れるオゾン蟻の仲間たちと共にセルジィを楽しんでいる。

セルジィによってどんどんソロー55世の頭は冴え渡る。セルジィには、うまいばかりか大変に頭を冴え渡らせる薬効があるんだ!

セルジィによって冴え渡った頭脳で、ソロー55世はセルジィがうまいぜという事を繰り返し繰り返し、感覚の強度をあげながら考える。どんどん頭は冴え渡りどんどんセルジィがうまくなる。味の波(Wave of taste ウェーブオブテイスト)がどんどん打ち寄せてくる。景色がスローに見える。バッポスのポキツキの動きがものすごくゆっくりクリアに見える。空中を動くバッポスの親指が次の瞬間、その指の可動域の中で上に動くか下に動くかがありありと予想できる。そしてバッポスの親指がソロー55世を殺害するために用いられない事を強く信じられる、この世界で優しさとは、無関心の事であると強く思う。その中でセルジィがうまいぜうまいぜという内容の思考を高速でリピートしていた。

毎秒毎分、仲間たちに向けて

「セルジィがべらぼうに、べらぼうにうまいぜうまいぜ!」

と繰り返し叫んでいた。ソロー55世はオゾン蟻の中でもべらぼうに喉が強かったんだ。だからずっと叫んでいられた。仲間のオゾン蟻も時に叫んだり、叫ばなかったり、ソロー55世にずっと同じ事を叫ぶのをやめろと叫んだりしながら、セルジィやシロップを楽しんでいる。

ジョリリリ~ジョリリリ~、ジョリリ、ジョリジョリジョリ…

妙に気になる全身の皮膚の最表面に強く作用する特有の音がした。

それはアパートのベルの音だ。

「ボックス!ボーックス!バッポスさん?」

(ボックス=郵便でやんす~、の意味)

「はいぃ~私バッポスで~すぅぅぅ~」

とバッポスは言い、ボックスを受け取った。

ボックスの中には、バッポスのお母さんから冷凍肉が届いていた。

(ボックス=郵便でやんす~のほかに、単に郵便という意味でも使う)

「おーい!うちのお母さんから冷凍肉が届いたぞ~!」とバッポス。

(冷凍肉=冷凍した家畜の肉の事)

「いつもありがたいねえ~」

とベルンパス。ベルンパスは冷凍肉を冷凍庫にしまった。

「冷凍肉、今日の夕飯にしようかな~、ネギも刻んであるからネギを乗せて」と彼女は言った。

(ネギ=いわゆるネギの事)

バッポスはベルンパスに、

「それはいい考えですなぁ♪楽しみ~♪」

と言った。それと一瞬、なぜおれは冷凍肉を送ってくれる素敵なおれのお母さんと一緒の家に住んでいないのだろうか、と思った。

ジョリリリ~ジョリリリ~、ジョリリ、ジョリジョリジョリ…ジョリリン…

またも妙に気になる全身の皮膚の最表面に強く作用する特有の音がした。バッポスとベルンパスはその音にいつもゾッとした。

ベルの音だ。

「は~い、ただ今、ただ今行きま~っす、どなたですかな?」

バッポスはドアを開けた。

「おおーーいい、、ババッッポポスス、、散散歩歩ししよよううよよ」

バッポスの友人キョンドー・レイキョンズだった。

キョンドー・レイキョンズは中年の双子の兄弟で、キョンドーという兄と、レイキョンという弟、2人合わせてキョンドー・レイキョンズとバッポスは呼んでいる。

彼らは常に2人1組で行動し、全く同じ言葉を出来るだけ同じタイミングで言うように努めている。それをしないと死ぬというルールを己に課しているんだ。でも興奮した時はそのルールは破られ全く別々の事柄を話す。そしてその際、ものの見事に同じ事を話さなくても死なないというルールに思考回路を切り替える。

2人はそっくりな顔立ちで、大きくて高い鷲鼻を持ち、痩せこけており、皺だらけで、目は落ち窪んでおり、眼底の形がありありと分かるほどで毛は熱帯を連想させる黒黒と湿った緩い癖毛だった。頭部から熟し腐ったドラゴンフルーツの匂いを放っていた。そして見た目よりずっと元気でいつも大きな声で話している。バッポスとは何年も前から大の仲良しだったんだ。

「キョンドー・レイキョンズじゃないか!久しぶりだね!4日ぶりくらいかな?どこに散歩に行くんだい?おれは朝からさっきまでセルジィを齧ってたよ!元気してた?」

時刻は15時頃だった。

「今今日日はは第第4848公公園園にに行行ここううとと思思ううよよ~~。。一一緒緒に行行ここううよよ。将将棋棋盤盤もも持持っってていいるるかからら」

バッポスは、

「第48公園か。今日みたいな曇った日にはちょうどいいねえ。ちょっと待ってて。着替えてくるよ」

と言い、チュクチュウ、チュクチュクチュウチュク、、、チュクチュウ、ドンチュウ!と上機嫌にチュクチュウドンチュウの歌を歌いながら、ズタボロのグレーの寝巻きから、ボロボロのグレーの外出着に着替えた。セルジィとシロップをビニール袋にたっぷり入れて、配管内部の粘菌入り水道水をペットボトルに入れ、それらを汚れきったリュックに入れた。

バッポスは外圧を避けアパートに籠城しているつもりだったが友達が大好きだったので、友達に誘われると最高に気分が上がり外出していたのだった。

「おうい!ベルンパスも行くかね?きっと楽しいよ」

バッポスはベルンパスに聞いたが、

ベルンパスは

「行かない。夕飯までには帰ってくるように。」と言った。

バッポスはは~い!と返事をした。ベルンパスが一緒に行かないことは分かっていた。

でも一緒に来てくれたら嬉しいし、一緒に来なくてもいつも通り全く問題なく楽しいからいつも聞いていた。

「お待たせ~」

「よよしし行行ここうう。今今日日ははととっっててもも曇曇っっててるるななああ、ババッッポポススよよ」

とキョンドー・レイキョンズ。

「ほんとに。とても良い曇りだあ。気圧も良いしあったかくも寒くも無いし。なかなか良い日だよな。こんな良い曇りの日は年に5回、いや2回も無いだろうな。」

とバッポスは言い、3人はアパートのいつ倒壊してもおかしくない、まるで空中に浮いているのではという風情の粘菌付き錆だらけ階段を降った。

バッポスは2階に住んでいたんだ。

3人は奇跡の粘菌付き錆だらけ空中階段から華麗にコンクリートの地面に降り立つ。

~次回へ続く

木澤 洋一

木澤 洋一

ふと思いついた事や気持ちいい事や、昼間に倒れてしまいたいような気持ちを絵にしています。

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