管理人だより
アパートメントの管理人であった鈴木悠平氏の加害行為について、把握してからアパートメントとしての対応を進めていますが(こちらをご確認ください)、こちらで管理人の小沼の考えを書かせていただきます。また、アパートメントの立ち上げ人であるアマヤドリ氏が、今回の件と、1年前にアパートメントのクラウドファンディングで起こったことについて書かれています(こちらをご確認ください)。こちらについても説明させていただ…
長期滞在者
JR大正駅から南へ南へひたすら南下する。4kmほど歩いて南恩加島という地名を通過すると、木津川運河の先に船町の製鋼所の威容が見えてくる。この風景が好きで、昔からよく大正区を歩いた。バスも走っているけれど、そういえば乗ったこともないな。製鋼所を見てまた大正駅に引き返すか、大運橋の交差点を東に曲がって地上33mの大ループ橋・千本松大橋を渡り、木津川を越えて南津守の方へ歩くか。最近は自転車で行くから大し…
長期滞在者
その色は、私が初めて見た色だった。 新月の夜、漆黒の夜空に点在する無数の星を見上げ続けていると、次第に星が遠ざかり、東の空にこれまで見たことがない、マゼンタのグラデーションが輝き始めた。 飛び出した。身体よりも先に、心が波打ち際を走っていた。目の前に広がる日本海はどこまでも澄んでいた。私が立っている足元は、翡翠が打ち寄せる浜辺だった。 あの日、私が見た、始まりの日の出。それは、全ての混沌から解放し…
長期滞在者
アイデアはいつも泉のように、こんこんと湧き出てくるもので、それは決して枯れることはない。ずっと昔、写真家のイモジン・カニンハムについての研究をしていた頃に、アメリカから寄せられた資料の中に入っていた言葉はとても印象的です。なぜなら彼女は大学生の頃に初めて写真機というものに出会い、キャンパスの裏山でセルフポートレートを撮って以来、93歳で亡くなる直前まで、70年以上にわたり常に新しいことにチャレンジ…
当番ノート 第56期
「紺野純子」という昭和アイドルを知っているだろうか。 2期が始まった「ゾンビランドサガR」に登場するゾンビィアイドルである。「ここの純子ちゃんのイケボ興奮する」というスラングそのまんまに、録画した1話を何度も巻き戻し「粘っていこう Never give up again」と歌っている箇所をリプレイしているのは、地面の変態・フチダフチコである。 さて、いつも「エヴァ」だの「サガ」だの脈絡のない話から…
当番ノート 第56期
3 凪子の口紅 どんなに急いでいる朝でも、凪子は必ず、眉と唇だけはメイクをする。すっぴんでも十分整っているのに、どうして遅刻してまでメイクするのか。アタシにはわかる。メイクが、凪子にとってどれだけ大切なことなのか。アタシにはわかる。凪子は、美しくないといけないのだ。素の自分なんて、見せてはいけないのだ。すっぴんでいたって、凪子は誰からも愛されるだろう。だから、化粧で誤魔化しているとか、そうい…
当番ノート 第56期
モネと動物病院に行くとき、予約していた待ち時間より必ず30分ほど早く行き、わざと待ち時間を作るようにしている。普通であれば、予約した時間ちょっと前に行くだろう。しかし、その待っている時間というのも、モネにとっては大切な時間なのだ。 小さい頃からモネは慣れてない場所で緊張しやすく、動物病院につくと、口を開け舌を出し、息が粗くなってくる。私の膝の上でじっとお座りして一見落ち着いているようにみえるが、背…
長期滞在者
春。あまりにも落ち着かないこの季節。私をふりまわす花粉。気圧。寒暖差。 よく眠り、散歩したときに出くわす花や草に癒やされて、美味しいものを誰かと食べるときにだけ、人間に戻る。 3月1日(月) 今井君が買ってくれた訳ありみかんを、みんなで「これ、食べれそうかな?」と選別しながら食べる。今週中に食べきらないと危なさそうだ。 3月2日(火) 今日はみんな家にいる日。壁の向こうで純君が仕事しているのがわか…
当番ノート 第56期
「地面と命」という壮大なテーマを掲げて書き始めた「当番ノート」。シン・エヴァの流行りに乗って最初は「ジメンゲリオン」というタイトルで書こうと思っていたが、カタカタ打ち込んでいる最中に「地面下痢音」と変換されてしまったので急いで中止した。 「序」に続いて、今回は「破」である。エヴァの場合、「破」は最高傑作と名高い。そんなこんなで執筆への圧力は凄い。自分で蒔いた種である。地面に蒔いた種である。 前回書…
当番ノート 第56期
2 凪子の人形 僕が凪子と出会ったのは、凪子が四歳の時。僕はデパートのおもちゃ売り場の、ガラス棚の中で微笑んでいた。たまたま立ち寄った凪子の一家が、僕を買い取っていったのだ。当時の凪子はミディアムヘアで、黒曜石みたいにキラキラした眼を持っていた。とても綺麗な眼だった。僕は彼女に見つめられた瞬間、背筋がゾクッとしたくらいだ。 「ねぇ、ママ。私、この子がいい」 「本当にいいの?」 「うん。この子がい…
当番ノート 第56期
今年で、線維筋痛症、慢性疲労症候群という病と共に生きて、12年ほどになる。 23歳ごろから、少しずつ体に鉛を注入されたかのごとく、怠さが増していった。家の中での移動でさえ、体を重力から剥がすように、足をよいしょ、よいしょと一生懸命動かさないといけなくなって、すぐに息が上がるようになってしまった。通学することも困難になり、日常生活もままならなくなった私は色んな病院に行って、何人ものお医者さんに相談し…
当番ノート 第56期
実家もアパートだったし、今住んでいるのもアパートだし、そんなこんなで「アパートメント」というウェブマガジンに書くのは何やら楽しい。「マンション」とか「アパート」とか、それぞれの言葉の意味の違いを知ったのは恥ずかしながらここ最近の話で、意外とライターは言葉を知らない。住めればオッケー、住めば都、余談だが最近まで「宮古島」を「都島」だと思っていた。ライターを、というか私は、あんまり言葉を知らない。 そ…