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2F/当番ノート

Le sentiment

当番ノート 第4期

先日、マルセイユで公開中の映画を見に行った。
その作品の中である詩がでてきた。

「ことばなんか覚えるんじゃなかった」

この言葉がずっと頭の中をぐるぐるとまわっている。

フランスはマルセイユで踊れる事になって来仏した時はほとんどフランス語を知らなかった。

簡単なあいさつでさえ口にするときは緊張して声が震える。
単語も英語と違う。発音も違う。そんな中で私は孤独を感じた。

フランス人に笑って言われた。
「あなたよくフランス語もわからないのにここにきたわね」

日本では感じた事のない種類の孤独だった。

カンパニーでのリハーサル。オールフランス語。
ディレクターの指示すらも??のありさま。

全ての神経を集中して、彼らが何を話しているのか、何をしようとしているのか、
何がしたいのか、何をしてもらいたいのか、全くわからない中、想像と勘のみで過ごした。

いざ踊る時。

あの時。

普段ことばでのコミュニケーションがとれなかったダンサー達と
唯一踊りの中でつながれた。すごくうれしかった。
細胞がガーッと熱くなってざわざわした。
するとホッと笑顔になるんだ。お互いに目を合わせて。

聴く事。感じる事。伝える事。言葉なしで。

それだけだった。

インプロビゼーション(即興)をベースに振付け作業をする事が多い。
相手を聞くこと、感じること、そして伝えることが最も大事。
時には裏切る事も(動きの中で)。
裏切る場合は信頼関係がないと危険だ。

リハ以外で、例えば一日踊りまくった疲れきった状態でみんなが帰ったあと踊る事もある。

フランス語が理解出来るようになって、意味がわかるようになって嬉しい反面、
うわべだけの、ことばだけの理解になってきてしまってるかもしれない。
日本語だってそうだよ。

頭だけでことばを理解して。

相手をさぐりながらききながらかんじながらおどったデュオ。
これはもちろん即興なので不安定ではある。

「即興は振付けのように。振付けは即興のように」

私の尊敬する振付家のことば。

ことばに意味をもたせるために身体で体感しなくてはならないって。

日々精進。
まだまだですな。

special thanks / Nahimana Vandenbussche, Nonoka Kato

https://www.youtube.com/watch?v=zjy0uM5fjqo&feature=plcp

木下 佳子

木下 佳子

ダンサー。

フランスはマルセイユ国立バレエ団で踊っています。

竹のように強く凛とまっすぐに、時にはしなやかに。

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