これが9回目、最後の当番ノート。
涙もろい。これが私。
私は映画やテレビでとんでもなく涙もろい。
映画やテレビだけではない。本も。日常も。
例えば本編が始まる前の映画のコマーシャルでさえ、そのシチュエーションから涙を流す事もしばしば。これは子供の頃からで、頭で考える前に涙が出ていると言った方が正しい。なので友達にも「なんで泣いてるのー?!」と言われても、その瞬間どうして涙したのか、うまく説明する事は難しい。後に説明しても思い出して泣いているか、もしくは自分の事をこう思って泣いたのだろうと分析して後付けしたにしか過ぎないように感じる。最悪な事に泣いた翌朝の私の顔はとんでもないモンスターと化すのだ。
そういえば先日のツアーでもそうだった。
長い時間の機内では映画が見れる。なので眠れない私はもちろん映画を見る。
長時間の我慢に耐えきれなくなったダンサーズは機内をウロウロ。
そして真っ暗な機内でモニターに寄って光っている私が大泣きしている姿を見て驚いていたっけ。
見て見ぬ振りしていた。そしてあとでみんなわたしに言う。「大丈夫?!」
ははは。そんなに気にしなくても大丈夫だよ。
一種の反応だから。
同じ映画を見て感動していて涙を私みたいに出しすぎない人がちょっとうらやましかったりする。
だって泣いたってこと他の人に知られないでしょ。
私の場合は一目瞭然である。
そんなわけで日本で公開されている「おおかみこどもの雨と雪」がフランスでも同時公開。
そしてここマルセイユでもオリジナル言語で上映という事で見に行ってきた。
マルセイユ中の人に言いたい!!フランスの人に、映画が上映される43カ国の人に言いたい!!
是非見に行ってほしいと。
いやー。これはまた。
冒頭から涙が。映画中最初からずーっと静かに涙が。もちろん鼻水も。
ラストはもう泣いている振動が隣の人にもわかるほどの泣きっぷり。我ながらすごいと思うほど。
とても良い映画だった。自分の母親の事を想った。
自宅で映画を見る分には、途中で停止して思い切り鼻をかんでみたりできるけどやっぱり映画館だとちょっと難しい。だからもう大変だった。みなさんもこの映画を見た際に涙涙になったら私に是非教えてください。
では涙もろい自分をコントロールする事は出来るのだろうか。
私の場合は涙が出る前に涙が出ないようにと考え始めれば始めるほど止められなくなる。あれこれ考えてもしょうがないので涙を受け入れるようにした。涙が出てきたらどんどん出す。もうこれしかない。理屈はどうあれ、涙が出る時に一番大切なことは、それを出るまま、流れるままにしておく、ということかな。だって止められないし。何かで見たけど涙が出そうになったら舌を噛んだら涙がすーっとひくらしい。本当かな?涙を流している時に舌を噛む事を忘れているので次回思い出したらやってみることにする。
泣くことには浄化作用があるという。
私も泣くと、スッキリする。わざと感動系の映画をみて泣いてストレス解消する人もいるようだ。だから、泣くことは心に溜まっている余計なもの、きたないものを出してくれるのかもしれない。
マルセイユに来た当初、なんてことだと驚く事ばかり。日本はなんてすごい国なんだと。改めて思った。日本で当たり前の事はもちろんここでは当たり前ではない事は重々承知の上だ。だが、大の大人が!?っていうことがあきれることが沢山あり過ぎた。なぜこの人たちは全体の事が考えられないのか不思議で不思議でしょうがなかった。ある日、西洋人と東洋人の考え方の違いを読んだ事があった。木を見る西洋人、森を見る東洋人。まさしくこれだ。西洋人は自分の目の前で一番見えることしか見れない。その点東洋人は全体をまず把握しようとする。このポイントはかなり大きい。西洋に住むと全体が見えてしまう東洋人は損しているのか?と思ってしまうほど。このポイントのおかげで納得。するとこわばっていた脳がゆるまっていく。
フランスに住み始めてから日本の歌の歌詞が身体に染み渡るように入ってきていた。日本に住んでいたときはただ流れていただけだ。その歌詞を聞いて自然と涙がでていた。とある集まりで日本人の女性が「ふるさと」をフランス人に歌っていたときの事。やさしいギターと共に聞いたふるさと。あれだけ沢山聞いた事があったのに、涙が止まらなかった。よく泣いていたな。泣き虫だ。かっこわるいよ。
意地っ張りで我慢強いせいかもしれない。
敏感に何かを感じたときの反応は自分でもびっくりするほど。
フランスに住んで、さらにダンサーという仕事でいろいろな国へ訪れて行く度に、自分が日本人であると強く知る。身体の中身は同じなのにね。日本人は日本人しか持っていない美しいものがある。日本人にしかわからないこともたくさんある。それが今の私を支えている。だけどまだまだ知らない事も沢山ある。知らなくてはならない事がたくさんある。まずは泣く事も許す。
ここアパートメントにノートしていく事が習慣になって発見がいっぱいあった。
毎週の締め切りがこんなにも早く来るのかと驚きながらも、あっという間の二ヶ月間。
夏だったスタートももうすっかり秋の気配。
当番ノートは終るが、新たにスタートしたい事がたくさんできた。
だからタイトルは「これが最後、そして出発」とした。
明日からのリハーサルは必死覚悟。
怪我しないでがんばるのみ。
このような機会を与えてくださったみなさまに感謝の気持ちでいっぱいです。
ご清聴ありがとうございました。
ではまたどこかで。