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当番ノート 第11期
ある言葉の持ち主は 例え自らの身と心がついばまれることになろうとも 愛されることを願った ある言葉の持ち主は 誰もが孤独を抱えている仲間なのだと伝えたかった 「君は一人じゃない」 そう思いながら今でも友人の亡がらをどこかで見守り続けているのだという ある言葉の持ち主は友人の旅立ちを祝ったが 幸せを望むがゆえ その行き先に対する不安を言葉にできなかった ある言葉の持ち主はこれから迎える自分の運命を …
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当番ノート 第11期
いよいよ寒くなった 今年は気を抜くつもりは、なかった だから私は10月から すっごく意識して冬を待っていたんだ 空を見上げれば ぐずな私でも数え切れそうな、星 見慣れた星空があって 数えてみることにしたんだ 一番右の、ファミマの上のあの星から、 ひとおつ ふたあつ 19くらいのとこで面倒になって 27で、やめた なんだ…
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当番ノート 第11期
何となく表面に寝転がる。かすかに与えられた柔らかい眼で空間を見定める。そこは受信のみを繰り返し、振動が成り続く。アスファルトにこすり続け、傷だけを許し、反射のガラスは割れることなく流される。過去に冠り続けた幾つもの仮面は果てしなく剥がすことはできない。変換ケーブルをなくした一定の信号。メトロノームが鳴り響き、積み重なる解体から詳細を分離し、定まらない未知数。 錆びた付根から生えた壁。完了に抱かれた…
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当番ノート 第11期
“すべての事象には名がある。と言うより、名前がないものは存在を認識できない。”とWikipediaにはあります。 僕が思うに「究極的なところまで持って行ったなぁ」と、最初の当番ノートで触れた人間原理にも似た感覚を呼び起こされました。 今回で僕の当番ノートは終わりになります。English Lyrics Feverという中二病を発症した頃に思う存分に思い知らされたのは、自分は薄っぺらくて核が無いとい…
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当番ノート 第11期
今年の5月、個展をした。 真夜中に木を、林をたくさん撮った。 4月の終わり、まだずっと寒くキンと音が鳴りそうな空気だった。 自宅から少し歩いたところにある神社の裏に誰も入らない林がある。 杉の葉がたっぷり積もっていて歩くたびに (カサッ、カサッ) と軽く乾いた音がする。 風がまだ残る葉をざわめかせ、枝はしなると鳥の鳴き声のようにキィキィと鳴く。 知らない誰かに見られているような不安が襲ってくる。 …
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当番ノート 第11期
『出会いの絶景』 この言葉は、俳人/永田耕衣さんの言葉であります。耕衣さんが版画家/棟方志功さんとの巡り合いについて、そう表現しました。「素晴らしき人との巡り合い」出会いの絶景とは、そういうことでありましょうか。僕もいままで、いろいろな方に出会い、その絶景を感じさせていただきました。 体験してきた、いままでの全部。 自身で感じてきたことや、想いを言葉や言葉でないもので表現してきたこと。それは当たり…
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当番ノート 第11期
友人のはじめての個展を訪れたときのこと、 知った顔の人たちが一通りギャラリーを訪れては去って行ったあと、その男性はやってきました。 彼は「その界隈」ではプロとして活躍しているのだと言い、 友人の作品と、その展示の仕方、値段のつけ方、果ては気持ちの込め方に至るまでダメだしをはじめました。 「首の長さはこのくらいの方が見栄えがよい」 「ねらっているところはいいけれど、これでは売れない」 「色の加減はも…
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当番ノート 第11期
ぽっかりと地面に空いた大きなくぼみは 雨が溜まった時にイノシシが体を洗うために使うものだろう 倒れ朽ちかけた木にはキツツキが開けた無数の穴が開いている 獣の通り道 猿たちが移動に使う丈夫な蔓 自らの領域を誇示するかのように 艶やかな色のきのこたちが群生している 見慣れない森の表情によって少年の好奇心はくすぐられ 当ても無く歩き続けたが 霧が深さを増しもう一歩も動くことができなくなった 少年は大きく…
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当番ノート 第11期
部屋の壁にさわって 左手の指で部屋の壁にさわって、ふれて, そしたら壁が、揺れた けどそれは揺れているんじゃなくて 私の心臓が、 とにかく活発に動いて 大きく膨らむその度に 小さくしぼむそのたびに 壁が揺れてるんだと思ってしまうほどです このままベッドに倒れこみたかった 自分でもよく立っていられるなと思う けどいま 倒れこんでしま…
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当番ノート 第11期
例をあげればもう意味がない。 そんな世界の自覚が不可欠で、仮説の復唱と発作の再認識により眼に見えないものが完全だと必然にとどまった。 昭和45年→ ぎこちない珈琲。不器用な終末。爪を噛む原風景。リンチ。 干渉のエレヴェータは日常的かつ秩序的で、主題が明確である。 煩わしい指針は指から指へ前提としてウンザリするくらい明白に生じる。 そして、対話のふりはランダムを評価し、実景化する。 暗合と必須の切れ…
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当番ノート 第11期
人生はとにかく複雑だ。 社会もズンズン複雑になっている。 いつから子どもは大人になるのだろう。 こういうことを考える時点で既に複雑に考え過ぎているのだけれど、いつからか何を考えるにもバイアスがかかることが多くなってしまったように思います。 子どもはある意味、痛快なほど単純で柔軟です。そして、脳も若く発達段階で、恐るべきポテンシャルを秘めています。 それに引き換え大人は、単純というには程遠く脳の動き…
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当番ノート 第11期
昔のことを思えば思うほど 今の自分が、 今の自分の嫌なところが見えてしまう。 ずいぶんと幸せになってしまった。 それはもう、女の子に嘘をつかれたり騙されたり突然音信不通になったりされてるけれど 特に死にたいと思うこともなく むしろ生きたくて仕方がない。 僕という人間はどうしようもなく最低なことをしてきたけれど 良い意味でも悪い意味でも誰かの人生を変えるきっかけになってしまえた。 いま 写真が撮りた…
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当番ノート 第11期
「俺の生き様を見てくれっ!」で、他人に共感を得てもらうより、生き「てる」様「子」。すなわち、その人が粛々と生きている様子、またはその人のなんでもない日々の営みが共感される方が、素敵だと思う。 誰もが見ていない所で何ができるか。相手あってこその自分基準をどう磨くか。この先の課題です。
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当番ノート 第11期
もうすぐ、クリスマスです。 神社へ行き、お寺へ行き、ハロウィンで仮装し、クリスマスを祝い、 というか、クリスマスに託つけてお祭りをたのしみ、2月14日にチョコレートを贈る、 このちゃんぽんな感じは、わたしが好きな日本のチャームポイントの一つです。 その姿はときに軽薄に見えるかもしれないけれど、 どちらの神様が正しいかとか唯一かとか争うわけではないから、平和でいいなと思うのです。 電車の中で寝ていた…
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当番ノート 第11期
あらゆる種類の緑をしみ込ませたような森があった 豊かな地表を覆う和毛のような苔は 幾星霜も年輪を重ねてきた木々の幹を優しく包み込んでいた 常に霧がたれ込めていたため その色彩の深さと豊かさとをつぶさに知ることは容易ではなかったが 1年の中で限られた時にだけ 緑の天井のわずかな隙間から漏れ出した日の光が森を照らした 幾度も濾過された柔らかな光と森自身が育んできた柔らかさとが 出会い膨らみを増し 地表…
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当番ノート 第11期
ちゃらんぽらんな夜を過ごして その次の夜はひとり落ち込んだりしてさ じゃあやめとけばいいのに 夜と また夜と、夜と夜とがさ 床が回転して つぎつぎ場面がかわるお芝居みたいだよ 夜のコンビニで 無数のチュッパチャップスが刺さった、くるくる回る販促台を見ながら そんなことを考えていた なにかを買いに来たつもりだったけど、 忘れてしまっ…
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当番ノート 第11期
1992 眇眇たる世界。豊富な言動。無用の尽力。十分な口述。過去は忘れ、未来は推測にすぎない。 今しか見ないあの人。ただ。目覚まし時計のように鳴き、騒音のように吠える。 ぎりぎりのところで理性は復す。 1997 二番目に暗くて静穏で無愛想なあの人は誰よりも沈黙の主張と独自性を有していた。 私はもっぱら、視野を限りなく狭め、誰にも気付かれないように、観察した。それはただの予想に過ぎなかった。 妄想が…
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当番ノート 第11期
初めて泊りがけで登った山は、赤石山脈の光岳だった。 小学校1年、楽しみにしていた初めての終業式を欠席させられ、両親と山仲間に半ば無理やり連れて行かれた格好だ。 夏休み初日は山の中、という思い出深い数日がスタートしたのである。 当時は寸又峡からの林道は崩落しておらず、車でガタゴト揺られながら登山口まで到着した。 そこから、寝袋とおにぎり・水筒を小さなリュックに入れて、長く続く登りを大人たちに混ざって…
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当番ノート 第11期
先日、横浜美術館に横山大観展を見にいった。 描かれた葉の紅葉する緑と黄色の間がとても切なく美しかった。 その腐ってしまいそうな刹那がなんだか懐かしかった。 同館のコレクションにダリの絵があった。 ———————————— 初めて持った画集はサルバドール・ダ…
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当番ノート 第11期
ボールペン シャープペン 鉛筆 「書ける」という事は同じでも、伝わる印象に大きな違い。 ちょっと動かす 少し動かす 微妙に動かす 「動かし方」一つにしても人それぞれ捉え方のニュアンスや表現は違う。 僕は最後の微妙というのが、その人が持っている「その人自身の集約された感覚」だと思っています。 宿で一番に気を使うものは何か。一番緊張する事は何か? それは、お客さんがお部屋にいる際にドアを「トントン」と…
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当番ノート 第11期
たくさんの路地裏をみました。 あの人は、薄明かりの下の風景が好きでした。 以来、わたしは、 この薄暗い道を奥へと進んだところにも、 エネルギーがあるのだと思うようになりました。 たくさんの笑顔をみました。 その人は、街へ出ては人の顔ばかり撮るのでした。 美しい女性、美しい笑顔、化粧のはげた顔、怒った顔。 時々、体の一部がない人のポートレイト。 以来、わたしは、 笑顔の中にも時折奇妙さを見るようにな…
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当番ノート 第11期
夜になると煌びやかなネオンで彩られる町も、昼間は驚くほど閑散としている。夜の間に放たれた下卑た匂い。理性から解放された生き物としての人間の匂い、生臭さ、駆け引き。町を満たしていたそれらが、夜明けとともに静かに辺りに染み込みこんでいく。地面に、建物に、家路に着く人の体と魂の中に。そうやってできた、おりのたまった町。太陽や月よりも人の作った光が似合う町。私の育った町もそうだった。雨のしのつく午後3時。…
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当番ノート 第11期
星がきれいだった だからわた この道はタバコを吸ってはダメです って、 そういうふうに言われたら 嫌いなタバコをもくもく吸って歩きたい 持っているゴミをばら撒きながら歩きたい し そういう気分 わたし酔っぱらって 寝過ごしてしまって、 降りたこともない駅で、 普段ならタクシーに乗ってしまうんだけど 2時間も歩けば家に着くだろ…
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当番ノート 第11期
たどり着けない振動で回り続けるクリック。 目を覚ますとそこにはたどり着けない。 目を覚ます前。 開闢のネグレクト。 眠りに就くとは、目を覚ます。 バスの中のバス停でバスを待つ。 夢そっくりな現実が夢だった。 瘡蓋から流れるタイムライン。 鞄の中の階段を上り、二階にまつわるいくつかの地獄が、遠くの広場で終わりを告げる。 机の上の砂漠が対角線を求め、熟されたゴミ箱はコピーされる。 振り返れば振り返る程…
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当番ノート 第11期
月はかわって11月、霜月。日本諸国にも出雲から神様たちがお戻りになっていることでしょう。 先月10月は神無月でした。八百万の神様たちが会議をするために出雲の国へお出でになってしまうため、そう呼ばれるようになったのは良く知られているところです。 今年2013年は、伊勢神宮でも大祭がありました。 20年に1度、正殿を始め御垣内などの社殿を造り替え、さらに殿内の御装束や神宝を新調して御神体を新宮へと遷す…
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当番ノート 第11期
初めて一眼レフのカメラにふれたのは高校1年生の頃 引っ越しをしてからずっとしまい込まれていた段ボールの中にあったそれは 付属の革のケースが砂のように劣化していて手に取るのも躊躇うほどだった。 むかし祖父が使っていたものらしいのだがそこまで極端に古いものでもなくカメラそのものはしっかりと動いた。 その精密機械が発する空気みたいなものが持ち歩くのは少し怖い感じがしたけれど なんだかフィルムを巻き上げる…
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当番ノート 第11期
『価値』について ホトリニテの宿泊料金は、1泊素泊り3000円です。題に3000万円とありますが、間違いではありません。世の中で公式にもっとも高額とされている宿泊料金はおよそ1泊350万~420万円ぐらいが相場です。その一夜を特別なものにする。そこにどんな大金持ちでも1泊素泊まり3000万円もだして宿泊する人など、ほぼいないでしょう。3000万円あったら、そのもの(宿泊施設)を作りますからね。 こ…
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当番ノート 第11期
いつもお墓参りに向かう山道の途中にある、 小さな川と並走するように見えない向こう側へと伸びていく小径に惹かれていた。 そして、ある日のこと、その小径の入り口に深緑色の看板が立てられていることに気がついた。 あの小径の向こう側、何かできたらしい。 「ねえ、今日は帰りにあの小径の先に行ってみようよ。」 小さな車が一台通れるか通れないくらいの幅の狭い道をおそるおそる抜けてゆくと、 そこに古びた洋館があら…
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当番ノート 第11期
高い空を泳ぐ鰯雲と冷たい匂いの混じり始めた風、色づき始めた木々の枝葉から差し込む光はモザイク模様を地面に描いている。何が男の心に訴えたのか、さして理由があるわけではなかった。しいて挙げるとするなら、そう、午後の柔和な日差しがそうさせたとしか言いようがない。男は、この10年間ほとんど思い出すことのなかった友人をふと思い出し、訪れようとしていた。さてどんな顔をして行ったら良いものか、男は思った。親しか…
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当番ノート 第11期
ローソクを引っこ抜くと、 穴がのこる 穴ばかりが目立ってしまってつまらない ケーキ食べるときいつも思うんだよ。 ローソク立ててさ、火をつけて電気を消して お金持ちみたいな色に照らされて ゆらゆらしてるケーキが一番おいしそう いま私の目の前にあるケーキは穴だらけでさ 食べる前から気が滅入ってしまうよ もしこのケーキの上を歩けと言われても ずいぶ…
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当番ノート 第11期
これはプシュケーでした。 分野を映し出す。そう激しく覚える。行方どこでどんな変換された懐疑。非常事態の模倣に取り組む人々がいた。五十路からのパルに耳鳴りも、そして、これからの無関係、今あらゆる感情の渦、一人でも多くの人にこの事実、情報を送る。 何とも言えない光景の裏、事情、効果。何とかこのセクタを”鏡”のような心で、私達に帰する暗唱。悲しく、あまりにも辛い。無力を誰もが調査、重視を立とうとした。そ…
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当番ノート 第11期
「雨過天青雲破処」 当時、僕にはこの単語が漢字の羅列として目に入ってきました。それでも、日本人の僕には表意文字である漢字を読みとろうとする欲があるので「雨の過ぎ去った空の雲の切れ間」にある ー「何か」ー に思いを馳せる感じなどと、ちょっとばかり格好の良い意味としての訳を捻り出したのを覚えています。実際はというと「雨の過ぎ去った雲の間から見える空の色」という意味で、「うかてんせいくもやぶれるところ」…
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当番ノート 第11期
寄せては返す波のように 音は何度も繰り返す 水際に反射する光のような人々と共に ———————————– 美大に入ったのは学歴やら学びたいことの為ではなく、 環境やそこにいる人々と関わる為だった。 まだその頃は漠然とモノをつくることをしたいとしか思っていな…
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当番ノート 第11期
とらえどころのないものや、どうしてもはっきりと言葉にできないものに、すごく惹かれます。たとえば「世間様」。たしかにあるんだけれど、だれもその実態をつかめないという不確かさ。音楽をやっていた時も、他者とのあいだに自分が作る表現があるのだと思っていたし、今も宿をしていて来てくださるお客さんとのあいだにこそ、「芸」があるのだと思っています。 間の大切さ、間の不確かさ。 ホトリニテで繰り広げられる、さまざ…
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当番ノート 第11期
2012年 4月27日 当たって砕ける きのう、夜になっても胸のぼこぼこがおさまらなくて、時間外だったけれど病院へ行った。 行くまえに、どうしても彼に返事をしておきたかったけれど、 長文は打てそうになかったので、伝えたいことだけ書いて送った。 今朝、いつもと変わらぬ返事が来た。見事なスルーぶり。 短くさっぱり書いたつもりだったけれど、それでもびっくりさせてしまったみたいです。 当たって砕けるよりも…
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当番ノート 第11期
面接官が入ってくるとざわついた空気がピンと張りつめた 500を超える受験者たちの目が一斉に面接官の姿を追う 面接官は受験者たちの前に立つと深々と一礼し 開口一番に言い放った 「男性はお帰りください」 会場がどよめいた 「前もって言っておけ」 「書類審査で分かることだろ」 そんなつぶやきがあちこちから聞こえた 無理もない 応募資格には「粘り強く仕事のできる方」としか明記されていなかったのだから だが…
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当番ノート 第11期
コーヒーに睡眠薬とかして飲んだみたいなさ やったことないけど、そんな感じなんだよ カーテンの中みたいな 君といるとずっとそんな感じがするんだよ 君はなんだか知らないけど、 いっつもポッケに小銭入れててさ、 それみっともない感じがするからやめなよ と、私が言っても 子どもっぽいよ と言っても聞き入れてはくれない そうだ、私の言うことを聞いてくれたこ…
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当番ノート 第11期
ある午前の雨が降りそうで降らない。 暗鬱な赤裸。眼球の裏側。 これはコマ落ちではない。運動場。数羽の鴉。無から有へ個体が成長する精神分裂のパロディ。小さなウィンドウはバランスを守り続けようとウエイトを積む。そして、どんな微細な動きも吸収する。 思えそうで思いつかない矢印。環状線が揺らぐ。ミクロコスモス。空に眼が浮かんで、偶発的に複数のイメージを濡らした。真剣にぐれている昔人達はページを飛ばされ、積…
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当番ノート 第11期
必要なものがないことがどれだけ不便(ふびん)か、それを感じられる人は、何もないことによる不便(ふべん)がどれだけ幸せなことかにも気付くことが出来る。 数多ある布団の中で、おそらく心地の一番良い自分の布団の中で目覚めたとき、最初に聞く音はなんだろう? 日本の場合、夏であれば、おおよそクマゼミの大合唱で1日が始まるだろうし、冬ならばセットしたタイマーの指示通りに起動する石油ファンヒーターのスタート音、…
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当番ノート 第11期
昔から周囲とのズレを感じて生きてきた。 違和感といってもいいかもしれない。 小学校で教えられた「赤信号を渡ってはいけない」「公共の場所では大きな声でおしゃべりをしてはいけない」というルールをやぶることが出来ない。 誰しも自分の中だけに適応されるルールがあると思うのだけれど僕の場合は嘘をつかない、というのが非常に大きい。 自分にとって都合が悪いことでも訊かれたら答えてしまうか押し黙るしかない。 もっ…
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当番ノート 第11期
僕は仕事に対して、ひとつの考えがあります。 それは、宿の「経営」をしているのではなく「芸」として捉えているということです。もちろん宿の責任者でもあり経営者ですが、経営という言葉が、あまりしっくりこないし大事なんだろうけど経営力より、芸力。宿業ではなく、宿芸としてホトリニテを磨き上げてゆきたいのです。 訪れた人が気持ち良くすごして頂ける事が大前提の上にある、芸。 前回に書いた「宿にこそ、冗談を」を目…
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当番ノート 第11期
わたしは感動しいで、それでよく疲れています。 共感はできなくても、いつも何かを持ち帰る。 世の中には、美し過ぎることが多くて困ってしまいます。 心地よさを通り越して、せつないくらい。 ああ、これはひどく感動するのだろうな、という予感があると、 見ずに逃げたくなってしまいます。 あまりに強い衝撃は、どぼんと胸に飛び込んで、 隕石が湖を一瞬で干上がらせてしまうみたいに、 わたしからたましいを溢れさせて…
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当番ノート 第11期
暦の上では間もなく16月を迎えようとしている 「その土地では1年の節目に雨が立ち昇り 大地と空とを繫ぐ」 彼は遠い昔に刻まれた記憶を思い出しながら 砂漠を歩いていた 砂漠では砂混じりの強い風が時折吹き その度にうずくまってじっとやり過ごしたが 吹き付ける砂が彼の体を徐々に傷めていった 彼は乾いていた 頭の中にある地図では その土地まで歩いてあと3日というところだった 砂地に緑や潅木が混じるようにな…
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当番ノート 第11期
はずれた ちっこいゴミ箱の少しむこうに、丸めたティッシュが転がる 自分が好きで出したやつだけど そりゃエッチな気分はおさまったけど、 なんかしらけた きたねえからそのままにしよう ほおっておこう 今日、タワレコにいった 日本のロックバンドのコーナーで 試聴してる髪の長い女の子がいた 可愛かった。 黒髪でさ、 遠くからわりとずっと見てた…
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当番ノート 第11期
永遠に開かない遮断機。 境界が揺らぎ、一つにとどまらない。 燐寸からの亜硫酸ガス。 主体と概念が入れ替わる。 そして記憶が呪術的に保存される。 エクスパンデッド。心理的恍惚状態。 荒れ狂う人々。 電子的色彩は刺激の反乱を生み起こし、華麗さを繰り広げる。 永遠に開かないヴィデオ。 人々が遮断棒を踏み倒す。 その電球が切れた。。。 朝を開き昼を開き夜を閉じる。 それは私たちがかつて求めていたものだった…
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当番ノート 第11期
今日のすすめは「英語」。 Englishと呼ばれている言語です。日本語との相違点を挙げると母音の多さや文法など数多くありますが、決定的に違うのはアルファベットを使うところでしょう。Aから始まりZで終わる、たった26文字の表音文字だけで書かれるのに対し、日本語には、ひらがな・カタカナ・漢字の3つの異なる表音・表示文字があり、漢字にいたっては数万語もの文字が使われてます。 いま読んでいるこの文章がその…
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当番ノート 第11期
はじまりはいつも唐突にやってくる。 なんて書いてある小説はたくさんあるだろうけど はじまりは、はじまりの予感のあとにやってくる。 おだやかな午後の光 手を伸ばせば掴めそうな木漏れ日。 カーテンからこぼれる光が横顔を浮かび上がらせてまつげではねる。 「今日はなにか起こりそうな気がする」
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当番ノート 第11期
ここで友人が体験した、小話を一つ。 老若男女問わず誰もが参加できる俳句大会でのこと、先生と呼ばれる方がその会場に集まった皆に、こんな質問をした。 「みなさん、俳句を作る時は何を飲みながら作りますか?」思い思い考えて、それぞれ答える。 俳句歴40年のおじさん「うーーん、コーヒーかなぁ。。」 俳句歴10年のご婦人「わたしは、紅茶かしら」 俳句歴60年のおじいさん「わしは、渋い日本茶だな。ふむふむ。」俳…
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当番ノート 第11期
2013年 3月10日 日曜日 「Human」の語源は「色の人」 今朝から曇っていて、刺繍糸の色と、 土台になる生地の色との組み合わせがうまくいかなかった。 午後晴れて、 カーテン越しのやわらかい光で現われた色がきれいで、 学生時代に習った色彩のはなしを思い出した。 赤になる要素が光に反応して赤になる。 そんなふうに青、黄色、みどり、むらさき、そして万物の色へと続いていく。 その色になるべくして与…
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当番ノート 第11期
自動ドアを抜けると 男はようやく生きた心地がした スーツにネクタイで歩くこと それだけで男にとっては大仕事だった かばんはすでにぬめり気を帯び始めていた 額の汗をぬぐって一息つき それからいつものように窓口へ向かった 男の姿をみとめた女が受付でほほえんでいる 「いらっしゃいませ」 かばんから振込用紙を取り出すと男は受付に差し出した 「振込ですね 少々お待ちください」 女は用紙を受け取るとそのまま処…
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当番ノート 第11期
頬んとこが ぴって冷たかった ほてってるから、なおさら いつもの線の終電に まにあわなくて 中央線に乗り込んだ 電車には線路っていうわずらわしいものがあるからさ、 あたりまえだけど私を最寄り駅まで運んでくれなかった。夜 少し遠いけど 歩いて帰ろう 雨だとわかってから これは降りだすかもしれないと思ったときから、 ずっと雨は、降ってはこ…
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当番ノート 第11期
反復の地区にて。 それらは繰り返される。 銀輪の兜。無限の滑台。永遠に剥がされ続ける仮面。動揺の訓練。辺鄙なエクスプレス。崩れ落ちるカケラ。つぶれかかった色彩。拡張のレヴェル。浮く臭気。微かに醜い長音。老人の座標。刻み込む見覚え。陳列される<ひも>。 美しい蜜柑は、必ずしも美しい場所から生まれるのではなかった。 明るい匣に四角い球体。暗い屋根に蔓の雨が降る。歩数の∞で。 そして、ビニールの針が恐怖…
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当番ノート 第11期
今日はJohn Lennonの誕生日。 The Beatlesが解散して43年経ち、彼が亡くなってから33年経った今でもビートルズやジョンの楽曲が愛されているのは事実でしょう。その魅力について評論家的な見解でモノを言うことはできませんが、今日は彼の書いた曲について綴ってみようと思います。 彼の曲の最大の特徴は自分自身について多く歌っていることでしょう。実生活や実体験をそのまま生々しい歌詞と共に曲に…
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当番ノート 第11期
20時を過ぎた頃、道の駅で寝ようとしていた。 新月の夜は暗く自転車で走るのはもう危険だった。 建物の影に寝袋を広げて寝ようとしたところで少し離れたところで花火をする若者の集団の中のひとりと目が合った、気がした。 急いで寝袋を仕舞いその場を離れる。 どうも道を間違えたらしくバイパスへ続く道しかない。 しばらくあたりを走り左手に抜け道を見つける。 砂利道の向こうに自販機がふたつ煌煌と光っているだけで他…
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当番ノート 第11期
はじめまして、高村直喜と申します。 僕は、山梨県山中湖村というところで「ホトリニテ」という名の宿をしています。まだまだ経験も考えもないのに人様にお見せするような文章を書いてしまうなど、生意気だと思いましたが、これもよい勉強になると思いましたので、いままで感じ考えてきた事、体験してきた事を綴ってゆこうと思います。 まず、題にもある私事ですが簡単に現在までの自己紹介をさせて頂きます。 1979年生まれ…
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当番ノート 第11期
ひらめいたなら それはあなたの仕事だよ わたしのじゃない あなたは それをさずかった わたしは 別のをさずかった ときどき 気むずかしい あなたにささげる セザンヌの林檎 はじめまして、リカと申します。 海に憧れつつ、六甲山の麓の町で暮らしています。 これからはじまる2番目に好きな季節、ここでお会いできることが嬉しいです。 お礼は2ヶ月後の、今よりもオープンハートしたわたしになってお伝えしたいです…
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当番ノート 第11期
連綿と続く茫漠の海と 傍らに横たう白い砂地 点々と続く足跡の先 少女の姿があった 少女は指の隙間からこぼれ落ちる砂を見つめ そしてまた砂をすくっては同じことを繰り返していた 砂はかつて「言葉」と呼ばれていたという その一粒一粒には「意味」があったのだという 人はそれを使って想いを伝えていたが 誰にも届けられなかった言葉は 色も温度も損なわれ そして数えきれないくらい長い年月を経て降り積もったその言…
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当番ノート 第11期
まだ暑いのか きのうの夜は寒いくらいだったから、 少し着こんできちゃったよ 長くなった髪がうっとうしい 切りたかったけどさ、 切りたかったタイミングで夏が終わってしまいそうだったから 空気が涼しくなって 私の頭も涼しくなっちゃったら さすがに風邪をひいてしまうかなと思ったんだ 顔を空にむけて髪を重力に垂らしてみる 喉がのびて気持ちがよくて …
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当番ノート 第11期
様々なシーケンスについて考える。不等号。解釈。最中。無作為。間違いなくまるで恒常を保ち、徐に枯渇しても、思考の先端に限って。回転や大小の気付きの誕生から採掘する闇。多量の刹那の勢いを失ったとき、ただ虚に黒い線 (延々と堅苦しい) が豊富にある。隙間はあるが通れない。一様に広がる。感覚の矛盾が不安定で現象。時折、詰まる小さな破片は瞬く間に食うし。一定で波だけが主要。超高速にも見えるがとてもゆったりに…
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当番ノート 第11期
宇宙は文字通り、星の数ほどある銀河で溢れています。 唐突ですが、 “宇宙人は居るのだろうか” こんなことを考えた経験はありませんか?今までの人生で宇宙人について思いをめぐらせたことがない人は、まず居ないだろうと思います。そういう人はおそらく本人が他でもない地球外生命体だからでしょう(笑)。 僕も宇宙人のことを考えるのは好きですが、実際のところ宇宙には僕ら以外にも果たして生命体が存在しているのでしょ…
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当番ノート 第11期
このあいだ’escapesという雑誌で穂村弘さんが真夜中のコンビニの話を書いていた。 その話にすごく共感してしまったのだが、 僕は真夜中のコンビニが好きだ。 それも夏の終わりの少し冷たい空気のなか、誰かと一緒に近所のコンビニまで歩いていくのが好きだ。 そもそもなんで好きなのか考えてみるとあれは小学校5年か6年生のときのこと 夏休みももうすぐ終わる8月後半、家族5人は特になにをするわけで…