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2F/当番ノート

染色

当番ノート 第31期

00_senshoku食べこぼしで服を汚してしまったことがきっかけで染色をはじめました。材料はほぼ台所で調達しています。
初めはまったくの我流でやってみたのですが、インターネットで「草木染め」で検索すると、詳しいサイトがたくさん見つかったので参考にしました。麻や綿のような植物性の布は、大豆の汁で下準備をする。布を染めっぱなしではなく、染めた後に色止め液に浸けることで色を布にしっかり定着させ、色落ちさせにくくする、など。大切なことはほかにもいろいろありますが、ここでは説明は割愛、材料の細かい分量を測ったりするのは性に合わないので目分量で、結局我流のテキトー染色を楽しんでいます。
 
 
【その1】
01_some
上の写真の麻布も麻糸も、全部一つの材料で染めているのですが、色を止めるための色止めが違います。色止めは色を定着させるだけでなく、化学変化を起こして染料の色を、ときにはびっくりするくらい変えてしまいます。
布の色止めは、左から明礬(ミョウバン)、木酢酸鉄(落ちていた錆鉄+酢+水で手作りしたもの)、重曹沸騰水(ふと思い立って掃除用のを使ってみました。色止めになっているかどうかは不明)を使いました。染めた材料は何かおわかりでしょうか?
ちなみに、布は上に述べたとおりの色止めの順にならべていますが、糸はランダムな置き方をしています。写真に撮ったときに布との対比で少しでも色が見やすいかな、と思ったので。以下の文章と写真もすべて、布を基準にしていて、糸は適当に並べてあります。また、染めているのは全て白い麻布もしくは綿布、そして白い麻糸です。
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【その1の材料】
01_some_tamanegi
答えは玉葱の皮でした。玉葱の皮は簡単に手に入る上、染める力がとても強く、くっきり染まるので嬉しい素材です。
以下、染めた布だけの写真、次にその布と染めた材料が一緒に写っている写真、という風に交互に載せていきます。
 
 
 
 
 
【その2】
02_some
染めた材料は一種類です。左右の布で、色止め液の種類が違います。
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【その2の材料】
02_some_ukon
染めた材料:ターメリック。その和名のとおり、美しい鬱金(うこん)色に染まって大満足です
 
 
 
 
 
【その3】
03_some
写真にははっきり写っていないかもしれませんが、一番左の布は淡いグレー、あとはきれいな桜色です。
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【その3の材料】
03_some_cacao
染めた材料:カカオ豆の皮、もしくはココアパウダー。濃い茶色になると思いきや、上品な桜色に染まったのでした。カカオ豆の皮とココアパウダーをのせている薄紙の色は白です。
 
 
 
 
 
【その4】
04_some
左と中央の二枚はほぼ材料通りの色に染まったのですが、一番右の布は木酢酸鉄で色止めをしたらグレーに。
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【その4の材料】
04_some_kocha
染めた材料:紅茶。コーヒーも同じときに試してみたのですが、紅茶と同じような色に染まりました。意外にもコーヒーより紅茶のほうがしっかり色が染まります。
 
 
 
 
 
【その5】
05_some
これも台所にある材料で染めました
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【その5の材料】
05_some_wine
染めた材料:ワイン。ほぼ思っていたとおりの染まり具合でした。鍋から染料(=ワイン)の湯気がモクモクと出て、酔っぱらいながら染めました。
 
 
 
 
 
【その6】
06_some
完全に違う二色ですが、染めた材料は一つです。左は明礬、右は木酢酸鉄で色止めしてあります。
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【その6の材料】
06_some_murasakitamanegi
染めた材料:紫玉葱。スーパーで欲張ってカゴの周りに落ちていた皮まで拾い集め、きっときれいな赤紫に染まるとはりきって染めたのですが、、、、淡い黄色やオリーブグリーンに染まって、拍子抜けしたのでした。他にも、茄子の皮ならさぞや綺麗な青紫がとれるに違いない、とせっせと茄子を食べ、皮をためてはりきって染めてみたらごくごく薄い茶色にしか染まらず、勝手にがっかりしたり。。。「獲らぬ狸」とはこのことでしょうか。天然の色素なのだから、欲張ってはいけないのです。

今のところは白い布が染まっていく過程や、色止めによってパッと色が変わること、自然で微妙な色合いや色ムラなど、ただそれだけを楽しんでいるので、染めた布をどう使うかは未定です。これも箱にしまっておいて、ときどき取り出して眺めては喜んでいます。
 
 
 
↓ゴム版を染めた布に押してみました。平らな紙の上ではすましていた動物たちが、心なしかニヤリとしているような。
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きた えまこ

きた えまこ

絵本を描いたり、落書きしたり、工作したりしています。ひょんなことから人生二度目のパリ暮らし中。

Reviewed by
松渕さいこ


「食べこぼしで服を汚してしまったことがきっかけで染色をはじめました」、とえまこさん。
私は冒頭からその言葉のインパクトに、すっかりやられてしまう。

私だったら。
私だったら諦めてしばらくシミが付いたまま騙しだまし数回着て、季節が変わる頃にとうとう仕方なくなって、捨ててしまうかもしれない。

えまこさんは「あ!やってしまった」と思わされるシミを、新しい色で美しく塗り重ねるひとなのだと思った。
新しいキャンバスに買い替えるのではなく、おんなじキャンパスで。

しかもその方法は、まるで理科室でお料理をするような面白さを孕んでいる。
玉ねぎの皮があんなに強い発色と染める力を持っているだなんて、考えてみたこともなかった。
そんな身近な染料で、いろんな布を染めるけれど具体的な使い道を考えて染めるのではない彼女の、
そのまっすぐな手の動きかたが素敵だと思う。

きっと染料やスタンプのインク、画材で手を染めているだろう、えまこさんの指先を想像する。

「なんのために」それをするのか、はいつも避けられない質問。
だけど、綺麗な石が転がっていたら拾いたい。いい匂いがしたら立ち止まって誘われたい。
あてのない旅に出掛けたい。
そういう「なんのために」がすっぽり抜け落ちた行為は、気持ちがいい。

私はえまこさんの染色のエピソードに、その気持ちのよさを思い出す。
私の場合は一日中道端に座りこんで、砂鉄を集める遊びに没頭した個人的な記憶に辿りつく。
その砂鉄は、綺麗な星の砂が入っていた小瓶をわざわざ空にしたものに詰められていた。
黄色い星の砂の面影をすっかりなくした、真っ黒の小瓶を眺める小さな私。

見た目の美しさから想像通りの美しさが抽出されるわけではない。
染色はきっと、想定外のことも多いんでしょう。
思うとおりでないことも含めた、その新鮮な一瞬の驚きを愛しているのかもしれないなと思う。

カカオで桜色に染まるなんていうような、嬉しい裏切りは大歓迎だ。

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