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2F/当番ノート

豆本

当番ノート 第31期

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全然読書家ではない私ですが、本屋に行くと中身は関係なく、装丁の美しい本を思わず手にとってしまいます。とくに布張りの本が好きで、読めない外国語の本でも装丁がおもしろかったりすると、手元に置いておきたい衝動にかられることがあります。
 
 
 
 
 
今回は自分が染めた紅茶染めと鬱金染めの布を使って豆本を作りました。豆本ではなく普通サイズでもよかったのですが、最近自分の描いていた絵に合う、手のひらに収まる大きさにしたかったのです。
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まず、布に裏打ちをします。裏打ちをしないで布に直接糊を塗ると、布の織目から糊がはみ出してベトベトになってしまいます。
 
 
 
 
 
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厚紙を芯にして、裏打ちした布でくるみます。これが表紙と裏表紙になります。
 
 
 
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豆本と言っても、鬱金本は10センチ角、紅茶本は大きめのマッチ箱くらいのサイズです。豆よりはずいぶん大きいサイズです。

表紙の絵は布に直接油性ペンで描きました。以前、豆本が完成してから何かのペンで表紙を描いたら滲んでしまったので、今回はさすがに一度試して大丈夫なペンを選びました。本当は一番初め、裏打ちする前に表紙を描いておいたほうが失敗してもやり直しがきくのでよいのでしょうね。
 
 
 
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紅茶本は表紙と裏表紙の間に、厚紙をジャバラに折ったものを貼り付けました。
 
 
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上から見るとこうなっています。両面使えるお得なタイプ。裏表を使って始まりも終わりもない、無限にループするような話を描いたらおもしろいかと思いました。
 
 
 
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鬱金本の中の頁はジャバラではなく、普通に一ページずつめくっていくタイプです。中の頁の紙はところどころ糸で背表紙に縫い付けてあります。紙を縫う、というのは少し不思議で面白い感触でした。針がすっと通るので縫いやすいけれども、あまり糸を強く引っ張ると紙が破れてしまいそうで、注意も必要です。
 
 
 
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鬱金本は背表紙を例によって我流でつけました。ずっと昔に製本の仕方を教わった時、背表紙の部分が一番面倒だったので、手順をしっかり覚えていないという。。。けれど背表紙がきっちりしていないと中の頁がバラバラになってしまうのでとても重要な部分です。
最後に背表紙を糊付けしてクリップではさんで一晩置き、次の日の朝手にとったとき、二次元の紙に描いた自分の絵が、豆本という三次元のものになったんだな、とちょっとした充実感を味わいました。

きた えまこ

きた えまこ

絵本を描いたり、落書きしたり、工作したりしています。ひょんなことから人生二度目のパリ暮らし中。

Reviewed by
松渕さいこ

えまこさんの最終回は、手のひらに納まる「豆本」の製本について。

手に収まるサイズの製本は、私も体験したことがある。
御茶ノ水の「美篶堂」さんでのワークショップだった。
出来あがった豆本を、なにか特別な使い方をしたいとずっと取っておいたまま
勿体なくて今日までただ飾っていることを思い出した。

比べてえまこさんはまず、最初に絵とお話を用意して
そのために丁度いいサイズの本をこしらえていることに気付く。
どちらが先にきても良いのだろうけど、「終着点」をイメージしながら手を動かせることは素敵だ。

きっと「心地の良さ」の問題なんだろうと思う。
絵を描いたら、その絵が収まる姿の心地よい状態を想像する。
手に持った時のサイズ感のちょうどいい「感じ」を想像する。
色は何色だったら気持ちいいか、も。

その想像のひとつひとつが素材を決め、色を決め、サイズを決めていく。
どんな時に手に取りたくなるか、誰にあげたくなるかも、決まっていくかもしれない。
それが私には、途方もない「優しさ」に感じられる。

えまこさんはこの連載でいろんな素材や色、形を私たちに見せてくれたけど
私が彼女に教えてもらったことは、「いいな」と思える心地よさを探求する楽しさだ。
地道な作業のひとつひとつを面白がってこなすことのできる才能に溢れているんだと思う。

それは純度の高い好奇心と、心地よさに思いを馳せられる「優しさ」に他ならない。

私の豆本にもまずは何かひとつ、好きな色で塗ってみるとか
意味がなくてもいいから筆を走らせてみようか。
手を動かすこと、とりあえず心が向く方に歩いてみることが素敵な道草の入り口に立つことになるんだろう。

えまこさんの新しい道草に幸多かれ、とパリに暮らす彼女の4月を今夜思っている。

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