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当番ノート 第21期
▼三浦海岸/三崎口(後編) 人魚が騒ぐので、つりこまれるようにして、三浦海岸ゆきのバスに乗った。なるべく後ろの方を探し、ふたり掛けの席を選んで座った。車が走り出すと、人魚はしずかになった。 空はみるみる、すみれ色が深くなる。遠くに風力発電の風車が二本、浮かんでいる。車内のあかりが、私の顔を窓に映しだす。海から離れて山道をのぼり、バスは畑のひろがる丘に差しかかった。夕暮れの底に沈む畑は、夏のすいか畑…
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当番ノート 第21期
わたしたちの根はどこにあるのか。わたしたちが持つ「物語」は何によって生まれ、わたしたちの「現在」は何の上に存在するのか。こんな途方もない問いかけに徹底的に向かうことが私にとっては重要なことである。 80・90年代の言論の如く、わたしたちの文化に根底などと呼べるものは存在しないと突き返してしまうのが最も容易な応答ではある。またその応答しか私たちにはできない。けれども一方で、わたしたちは現在に連続する…
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当番ノート 第21期
さてー。 おつかれさまです! 公開が遅くなってすいません。 いま、すみだの食育の全国大会の打ち上げが終わって、 事務所というか、シェアオフィスに戻って来たところ。 なんと言うか上気している状態でこれを書いています。 墨田区の食育は、大小200近くの団体や個人がそれぞれに持ち寄れる企画を持ち寄って、 みんなで協同しながら、それぞれがそれぞれに最大限の過程がつむげるようにする活動で、 なんと県や政令指…
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当番ノート 第21期
ガシャ、ガタガタン、バサバサバサッ いたた・・・ あっいつの間に!いやはやお恥ずかしいところを見られてしまいました・・・ えへへ (なにをしてるの?) あっ、私ね今月末でお引っ越しするんです。 そのための大掃除! (えっ!) うふふ、あっという間だったなあ、このアパートメントにお邪魔出来て本当に良かった。 素敵な住人さんに沢山出逢えたのよ。 もちろんお話を聞いて下さっているあなたたちに出逢えたこと…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、8。 トリガー、の話。 僕らは普段、沢山の事を記憶している 束の間、街ですれ違った誰かの香水の香りから 幼い頃、想像を膨らませた架空のヒーローの必殺技まで 記憶は多岐に渡っている 時折、その事実の真実味について懐疑的な気持ちになるけれど それでも、 僕らの頭のどこかにその景色や音や香りが鮮明に存在する以上、事実はどうあれ、 それは真実なのだ 僕は職業柄、台詞というものを記憶する …
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当番ノート 第21期
▼三浦海岸/三崎口(前編) 朝になるまでに、人魚の体はみっしり固くなってしまった。荒い呼吸はおさまったが、ほとんど動かなくなった。うろこにつやがなくなり、体も顔もにぶい色にくすんだ。私がにぎっていた小さな手も、乾いて冷たくなった。人魚が静かになって、半日ほど経った。私はすっかり元気をなくしていた。この子も、Nの人魚と同じ運命になるのか、と観念しかかった。 ふと人魚の乾いた背中に、ひびが入っているの…
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当番ノート 第21期
「神話や儀礼は、しばしば主張されたように、現実に背を向けた「架構機能」の作り出したものではなくて、それらの主要な価値は、かつてある種のタイプの発見にぴったり適合していた(そしておそらく現在もなお適合している)観察と思索の諸様式のなごりを現在まで保存していることである。ある種のタイプの発見とは、感性的な表現による感覚界の思弁的な組織化と活用とをもとにしてなしえた自然についての発見である。 」(※1)…
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当番ノート 第21期
昔読んだ漫画で、主人公が空中に投げ出されて落ちていくシーンがあった。 主人公はもちろん絶叫する。 するとすぐ脇にいた別のキャラクターが「絶叫とは、余裕だな」って言う。 すぐにその意味に気がついて、冷静になった主人公は自分の体勢を立て直す。 一度くらいしか読んでいないと思うけど、何度も何度も頭に浮かぶシーンだ。 もしかしたら、詳細は全然違うかもしれないけど、 いつもそれを大事に思い出してる。 将来に…
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当番ノート 第21期
カラン、カラン、 いらっしゃいませー わーーーーーー! ・・・どれにしようかなあ・・・ フレッシュなイチジクに瑞々しい白桃、黄色と橙色が交互に並んだオレンジとグレープフルーツ こっちは胡桃とアーモンドのキャラメリゼ・・・ あっ!こっちにはたっぷりのカスタードクリームとソテーしたバナナが! あっこっちには お客様、お客様 は、はい! ケーキは逃げ出したりしませんので、どうぞごゆっくりお選びくださいね…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、7。 音楽、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出…
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当番ノート 第21期
今週はルーマニアあれこれ。主に出会った人々の話。 まずはタクシーの運ちゃん編。 ・総論 6割が陽気に延々と話し続け、3割が真面目に黙って運転し、1割が超絶陽気に女の子を斡旋しようとしてくる。 ・タクシーの運ちゃん① 乗ったらいきなり「お前日本人か?」と言われ、そうだと言うと「これ直せる?」と携帯を見せられる。エンジニアじゃねえって。 ・タクシーの運ちゃん② 物凄い高速で運転しつつも、敬虔な…
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当番ノート 第21期
▼浦賀 なくしちゃったのね。 魔女は言った。 それで、南へ、来たのね。 声が出ないので、うなずいて答える。 ところで人魚はげんき? 不意をつかれた。少しためらったが、うなずいた。 げんきなら、だいじょうぶね。 魔女は微笑んだ。嫌な感じはしなかった。しばらく黙って、バスに揺られた。 あ、ここだわ。 魔女が唐突に声をあげた。 向こう岸に、行ってるからね。 言うと赤い帽子の魔女は私のほおにちょっと触れ、…
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当番ノート 第21期
「私たちが日常生活の諸事にかまけている間は、その目覚めている記憶の視界は狭いものである。昨日や先月あるいは去年起きた出来事はこまごまと想起されようが、わたしたちの生涯のなかでははるか遠い出来事となると、もはや殆どわたしたちから逃げ去っているものだ。むろんそれらが起ったということは覚えてもいようし、どんな位置で、どんな連関の下にあったかも知ってはいよう。しかしそれらは見えないのである。 」(※1) …
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当番ノート 第21期
いかんいかん ざくざくっと書きますね。 でも今日はなにを書こうかなー。 そうだ。 人と会うことについて。 それとその発展性についてかきます。 「世の中に 人の来るこそ うるさけれ とはいふものの お前ではなし」 大田蜀山人 「世の中に 人の来るこそ うれしけれ とはいふものの お前ではなし」 内田百閒 すごくキュートな短歌だけど、これを書き出しにします。 人と会うことの粋というか、キモがここにある…
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当番ノート 第21期
じゅわわわぁぁぁ・・・ かたん さくっ、さく、 サラサラサラ さ、揚げたてですよー! ん・・・? あっ違います、鶏の唐揚げじゃないですよ! 本日のお夜菓子 ★ ドーナツ まあるいわっかの中を覗きこんだ外の世界は、なんだかとってもキラキラして見える気がしませんか? つい食べる前、こっそり穴を覗きこんで視界を見渡してしまいます。 同じ空間でも全く違う景色が見れてとっても楽しいの。 是非、こっそりのぞい…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、6。 旬、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出し…
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当番ノート 第21期
少し中休みとして周りの国々の話でも。 去年の夏はバルカン半島巡りをした。ベオグラードに始まり、サラエヴォ、ドゥブロヴニクと回った。当初は車で出発し、ベオグラード、サラエヴォ、ドゥブロヴニク、コトル、ティラナ、スコピエ、ソフィアと回って帰ってくる強行軍を計画していたのだが、免許の書き換えがうまくいかず結局空路とバスの旅になった。はっきり言って正解だった。 因みにルーマニア人はどこへでも車で旅行…
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当番ノート 第21期
▼馬堀海岸 ひとりになってからというもの、ねむれない。夢を見て、疲れ果てて起きてもまだ二十分しか経っていないこともざらで、昼間も夜もそれは変わらない。目がさめて深夜二時過ぎに家の中をうろつくと、今度は人魚が起きてしまう。どうしようもないので、朝の暗いうちから浴槽に水をはり、人魚を泳がせる。疲れると人魚はそのうちねむる。私も、人魚のたらいの横でつかのま船を漕ぐ。しばらくして目をあけては、たらいの青く…
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当番ノート 第21期
中島晴矢の展示「ペネローペの境界」を観た。 http://tavgallery.com/nakajima/ 展示について、気になったことを書いてみる。 展示の始めに「walk this way」という静かな映像作品があった。それは緻密な構築性を持っている。冷たい薄雲の空の下、荒廃した大地の中で生い茂る緑の植物と、整然と積み重なる巨大な黒のフレコンバック。そこを、静かに歩く赤い衣服を纏った白い肌の女…
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当番ノート 第21期
七夕ですねー。 今日も書きます。 ちょっと急ぎめに、、 さっきまでパーリー建築のミヤハラくんにあっていました。 パーリー建築というのは、住む場所と食べ物を確保してもらい、無料で建築を作り続ける若者たちで、 いろいろな意味で最近、心からいちばん面白いと感じる方です。 彼と、墨田区にある実家のようなおそば屋さんで話していたことを書こうと思います。 このそば屋はカレー100円食べ放題、しかも総菜は無料で…
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当番ノート 第21期
ピンポーン、ピンポーン、 はーい!あ、こんにちはーどうぞどうぞ上がってください! お待たせしてすみません!いまちょうどお客さんが来られてて バタバタバタバタバタ 「せみちゃーん!!いちごー!!」 いだだだだだ足踏んでる足踏んでる ・・・え?せみちゃん?ふふっ私のことです。 ケーキを切り分けながらゆっくりお話しますね。 ささ、どうぞあがってください! 今夜のお夜菓子 ★ ショートケーキ コポコポコポ…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、5。 ポケットには東京タワー、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類…
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当番ノート 第21期
ルーマニアのクリスマスは豚の解体から始まる。朝目覚めると村中の犬が吠え立てており、至るところから豚の叫び声が聞こえる。暫くすると5,6人の村の男衆が足早にやって来て、家の者に一言も告げず真っ直ぐに豚小屋に向かい、紐で縛った豚を引き摺り出す。豚は白い湯気を立てながら耳を劈く叫び声を上げ、必死に抵抗するも虚しく地面に倒される。首にナイフを突き立てられ、ものの数秒で死んでいく。遠くで聞こえる叫び声は断…
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当番ノート 第21期
▼横須賀中央 ふたりで暮らすようになってしばらく経つが、めったに一緒に酒を飲まない。Nもそこまで大酒飲みではない。にこにこ穏やかになるたちで、好ましいたぐいの酔っぱらいだった。ところが最近、Nは酔って電車を乗り過ごす。夏のはじめに、金沢八景から新逗子まで旅をしてからというもの、Nは海沿いの町が気に入って、京急線で遠くに行くことがふえた。連絡の取れない時は、酔ってどこか遠くの駅でねむりこけているらし…
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当番ノート 第21期
一枚の衝撃的なドローイングがある。 オーストリアの建築家、ヴァルター・ピッヒラーの「Building on the Side of the Gable」と題されたドローイングである(※1)。このドローイングを実はここ数年、かぶり付くように眺め続けている。 ピッヒラーは1960年代より、同じくオーストリアの建築家ハンス・ホラインと共同でオーストリアの首都ウィーンを拠点として作品を発表していたが、70…
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当番ノート 第21期
前回は本当に直前に、火曜日の日中に書いた文章をそのままあげたのですが、 関係者の方に迷惑もかかりそうなので、土曜日のうちに書いて、推敲して公開します。 それくらい正直にならないとかけないのが文章なんです。 嘘があるとすべてばれてしまう。 おそれるのは過剰な自意識の仕業かもしれませんが、 思いのほか人の所作は意図しないものを伝えるし、伝わってしまうと思います。 毒にも薬にもならない、冗長でまとまりの…
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当番ノート 第21期
ミーーーンミンミンミンミーーーーーー・・・ あっ 蝉が鳴き始めましたね、まだまだこれから暑くなりそう・・・ ・・・あら!扇風機を占領して! そこで寝ては風邪をひいてしまいますよ、さあ動いて動いて! 大分暑さにやられているようですねえ・・・ ・・・よし! 夏に負けない最高のお菓子でも食べましょうか 今夜のお夜菓子 ★ 水無月 本来、このお菓子は1年で1回、6月30日のその日しか食べることのできないお…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、4。 今日も生きている。幸福な事に、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもので…
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当番ノート 第21期
ルーマニアは彩度の高い国だ。カメラを携えて街を歩くと、撮りたいものが沢山あって中々目的地に着かない。冬は勿論欧州の常で、鬱蒼とした雲に被され街は雪に覆われ陰鬱とした雰囲気になるが、春、太陽が辺りを溶かし始める頃、花は咲き乱れ草木は生い茂り、犬猫は日向ぼっこをし人々は暑いコートから脱皮して散歩に興じ、あらゆる生命がただただ春の訪れを楽しむ。そんな時写真を撮っていると、どうしても彩度の高いものが合う…
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当番ノート 第21期
▼新逗子 けっこう毎日、君の夢を見る。起きてNは言った。今朝の彼の夢で、私は車を運転していたらしかった。ほかにはどんな夢を見るの、と訊ねると、遠いところにいる君に電話で相談に乗ってもらったりとか、と言われた。私もたまにあなたの夢を見るけど、いつもほかに恋人がいる役で登場するから安心させてもらったことはないよ。そう告げると、冷たい女だなあ、と言うので、ふとんをたたみながら、どっちが、と応じておいた。…
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当番ノート 第21期
映画「野のユリ」を観た。 「野のユリ」での、黒人の旅人・”シュミット”の礼拝堂建設は、日々凡庸に暮らす民衆たちの埋もれた信仰を浮上させる一つの出来事であった。独力での完成を夢見るシュミットの姿が、町の人々それぞれの内なる信仰心を具体化させたのであった。部外者である旅人・シュミットが孤独に礼拝堂建設を開始し、その神秘的でかつある種の不気味さを目撃した村の人々は、その建設作業に…
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当番ノート 第21期
おとといまで食育の全国大会が、住んでいる墨田区で行われていて、 準備も含めてけっこうバタバタしていた一週間だった。 先週はそれ以外に寺島なすという、かつての墨田の地場野菜の苗を区内の保育園に配って廻ったり、 その途中で見つけた軟式ボールの博物館のおじさんと仲良くなったり、ハワイ帰りの彼の息子さんと墨田を廻ったり、 大会中には東北芸術工科大のコミュニティーデザイン学科の学生さんの宿泊を、 運営するい…
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当番ノート 第21期
ピンポーン こんにちは~ヤカですー ガチャ、 あ、いたいた!よかった~こんにちは、突然すみませんっ ちょっと3時のおやつ作りすぎちゃったんで一緒に召し上がって下さいませんか? わ!よかったー!色んな味作ってたら止まらなくなっちゃって! ん?珈琲でも紅茶でも!ふふ、いろいろ作ってきましたっティータイムにしましょう 本日のお夜菓子 ★ サブレ サブレ・・・そうクッキー。 (実はクッキーとサブレは少し種…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、3。 週末にはワインでも、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもので、その類似…
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当番ノート 第21期
マレムレシュの墓地。天を突くような木造の教会が美しい。 今年のイースター(復活祭)にはマラムラシュという北部の伝統的な暮らしの残る地域に行った。この辺りのイースターの祭りは有名で、多くの木造教会があり、言わば秘境のようなものとして有名だった。途中クルージュ・ナポカという街のホステルで出会った女の子が翌日マラムレシュの実家に帰るというので一緒に行き、その家族と過ごすことになった。娘が謎の東洋人を…
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当番ノート 第21期
▼金沢八景 人魚に海の生きものを見せるのはどうか、とある日Nが言った。シーサイドラインという電車があって、それに乗ると海を見ながら水族館まで行ける、と言ってNは私を誘った。地図で調べるととても遠いようなので、泊まるつもりで準備をした。遠出する時、人魚はいつも、大きめの水筒に入れて持ちあるくことにしているので手ですくって移した。琺瑯(ほうろう)のたらいは、タオルでくるんでリュックに押しこんだ。 海辺…
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当番ノート 第21期
フランスの庭師ジル・クレマンの新たな著作『動いている庭』が日本語訳に訳出されたので最近手に入れた。自身の生業である庭での活動とその分析とともに、何やら時々神妙な言葉を文章に散りばめてくれている。(日本語訳のこの淡々としてけれども時々グサリとする確信めいたことを打ち明けるその文体は、もしかすると訳出者の仕事なのかもしれない。私はフランス語で書かれた原文を読むことができないので、そのへんは分からない。…
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当番ノート 第21期
大げさなタイトルだけど、 まず書き始めは好きな女の子のタイプのことから書きます。 ある一定数の男子はみんなそうだと思うのですが、 街を歩いていると、目の端でとらえた女性に完全に目を奪われることがあるんです。 そりゃもう、ぐわっって感じで、もう制御不能に見てしまう。 どんだけ欲求不満なんかって話だけど、あるときからその目を奪われる人のタイプについて考えるようになりました。 なぜかというと、そんな女性…
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当番ノート 第21期
ちりん、ちりん あー、急に暑くなりましたねえ・・・ こんな日は冷たいもので身体に涼しみを取り入れましょうよ あなたはアイスクリーム?それともかき氷?シャーベットにゼリー、プリン・・・水羊羹も捨て難い! ・・・ん?全部食べたらどうなるか・・・自分の身体と相談してくださいね!うふふ 本日のお夜菓子 ★ 氷のお菓子 たくさーんある冷たいお菓子の中にどどんと構える冷たくて優しい王様。 夏には欠かせないおや…
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当番ノート 第21期
俳優になったのは何故か?の、物語。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出…
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当番ノート 第21期
ルーマニアは農業の国である。農地と牧地を合わせた面積は14百万ha近くに及び、これはEU内ではフランス、スペイン、ドイツ、UK、ポーランドに次いで多い。勿論1,000ha以上の農地を持つ大規模農家もいるし、面積で言えば50ha以上の中規模農家の割合も大きいが、数自体では殆どが1ha前後の自給自足的な農家だ。つまり、ルーマニア人とは伝統的に、農家である。小さな村で慎ましく暮らし、豚や鶏、時に牛を飼…
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当番ノート 第21期
▼黄金町 Nの部屋にはくしがない。姿見もないし、壁掛け時計もない。だから泊まるといつも髪を整えることに難儀するし、時間をすぐに知ることもできない。そういう、不足ばかりの家だが、ある時Nが琺瑯(ほうろう)のたらいを買って帰ってきた。青いふちどりのついた、白くてきれいなたらいである。新品の日用品をそろえて生活を豊かにするタイプの男ではないはずだから、私はびっくりした。Nは、「海に帰す日に向けて、だんだ…
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当番ノート 第21期
建築家・大江宏のノートに、「世界地図」、とくに地中海の輪郭と地勢を描いた図がある。それを掲載した、たしか2年ほど前の、法政大学建築学科内の研究者の有志が編集したパンフレットである(※1)。それがいま手元にある。実はこのパンフレットを見た瞬間、本当に手が震える程に強い衝撃を受けた記憶がある。 なぜそのことを今になって改めて考えているのかというと、最近ある書籍(※2)にてその図を再び目撃したからだ。「…
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当番ノート 第21期
今週は急に具体の話。 僕はいる分しか稼がないできた。 それはたいてい数万円で、 それを聞くとみんなびっくりするが、それでもう10年くらいやってきた。 7年ほど前に緑のふるさと協力隊という制度に参加させていただいた。 ふるさと協力隊は、地球緑化センターというNPOが運営している、まちの若者をむらに派遣するプログラムだ。 国や大きな機関が中に入っていないので、とにかく人の体温が感じられる経営をしていて…
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当番ノート 第21期
こんこん。 あっこんにちは、はじめまして。 本日からこのおもしろにぎやかアパートメントに2カ月ほど入居させていただきます、ヤカというものです。へへ 得意なこと?うーんなんだろ、食べることかな。好きなこと?うーんなんだろ、食べることかな。特になにが好きかって? そりゃあ決まってんじゃない、甘いもの!糖分!(そのあとに食べるほかほかごはんも大好きだよ) そう、私はとある街の商店街の隅っこの隅っこでお菓…
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当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ。 フィレンツェはあの日、雨だった。 物語。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、 同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもの…
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当番ノート 第21期
僕は写真が好きなサラリーマンで、ひょんなことからルーマニアで働いている。縁あって寄稿させてもらうことになったので、ここでは日本人にとっちゃまあ馴染みのないルーマニアという”未開”の地での日々をつらつらと書いていこうと思う。2ヶ月間、宜しくお願いします。 まずルーマニアを知らない人の為に簡単に説明すると、場所としてはバルカン半島の付け根に位置し、北にウクライナ、西にハンガリー…
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当番ノート 第21期
▼ 横浜 物心ついた時にはもう人魚を飼っていた。どこの海で拾ってきたかは記憶にない。小さなマグカップに塩を入れ、毎日水を取り替えた。子どもなりにいろいろなえさを試したが、人魚がいちばん好んだのは角砂糖だった。雑然とした勉強机の上、ペン立てにしている空き缶の横にマグカップを並べてカムフラージュして、誰にも知られずここまで育てた。家族を離れてひとりで暮らすようになってからは、台所でひっそり飼った。たま…
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当番ノート 第21期
アパートメントの起源はローマとも言われているが、現代の産業革命以降の労働者階級の都市部への人口集中に対応すべく発展した大量住宅供給のためのビルディングタイプの延長であろう。都市は田舎者の集まりである、はよく言う常套句であるが、要は根無し草、身寄り無しのような人々の集まりなのである。かくいう筆者も今は都内のマンション暮らしである。(マンションは本来「豪邸」という意味であるが、このカタカナ英語は明らか…
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当番ノート 第21期
週一の日記なので、その時々の取り組んでいることを整理して書くよりも、 その週ごとに思ったことを書いて行きたいと思います。 文体も内容もバラバラになるでしょうが、 抽象的などろっとした言葉の連なりから、 何か片鱗を拾っていただけたらありがたいです。 さて今回は、 優しく在ることについて。 高木正勝さんの音楽がつめつめのせっかちな音の連続で、 それが総体としてあたたかい世界観を形作るように、 腰の据わ…