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当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② suicide cats in seaside③ suicide cats in seaside④ 「こっちだよ。」 もう一度アマリの耳元で、洞窟の中で反響したような声がする。 ムジャンはどこまでも沈んでいき アマリは遠のいていくその眼差しを捉えることしかできない。 毛むくじゃらを救済し、初めて目を…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で最終回。 これまでお付き合いいただきありがとうございました。 前回は、今後どのような活動をしていきたいのか、お話させていただきました。 まず、僕は「仏教を伝えながら、その人自身の良さを引き出し、自信をつけられるようなお手伝いをする人」でありたいと思っています。 僕自身、過去自信をなくし、結果的に現実から逃げていました。そのとき、誰か、アド…
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当番ノート 第28期
白い絹のシャツと黒い半ズボンに、安っぽいサンダルを履いた少年はふいにこちらを見た。薄いまぶたの一重も、短く乾いた黒髪も、私の知る島の誰にも似ていなかった。 それから彼は、ぎょっと目を大きくさせた。 「ああっ、もしかして、ときこさん?」 そう声を上げて、水を出したままホースを落とした。私もぎょっとしたまま生垣の陰から動けないでいると、彼のほうから近付いてきた。ホースから水は出てるばかりで、乾い…
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当番ノート 第28期
慰霊碑の前にはあらゆるものが置かれていた。 缶ビールや缶ジュースが置かれているのはテレビでも見たことのある光景だったけれど、ぬいぐるみにアクセサリー、トランプやギターまで並んでいるのを見て驚いた。花束を包むセロファンがホールに吹く僅かな風を受けてさざなみのように揺れた。僕はそれを数メートル離れたところにあるテラスから、ぼんやりと眺めていた。 僕の左にはアズマが、右には金田が座っていた。ふたりとも静…
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当番ノート 第28期
韓国で美容師をする、という仕事の話になるが、 自分の中では、お客さんに向き合うとき、韓国人と日本人で接客を切り替えてやっている。 カット入るまでの最初のカウンセリングからぜんぜん違う。 理由は、やはり双方にいろいろな違いがあり、同じやり方では対応できないからだ。 例えば、次のような感じである。 韓国人の希望するスタイルの特徴は、 「なんもしなくても良いように」 「ボリュームほしい」 「この写真とま…
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当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② suicide cats in seaside③ 背中にぺたりと張り付いたムジャンの濡れた毛並みは潮風で少しずつ乾いていき、 灰色のそれはアマリの背中をそわそわと撫でる。 くすぐられているような感触に時々笑ってしまいそうになるのをアマリはこらえた。 背中に感じる毛むくじゃらの重みは不思議と頼もしかっ…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第8回目。 今回も含めてあと2回になりました。 前回は、現在感じている僕の葛藤について、お話させていただきました。 周りの方からの僧侶に対する、ある意味願いとも言える「信念が強く、何事においてもぶれない」というイメージ。改めて、他人から自分はこう見られている、こういう存在であってほしいと期待されていることを感じました。 今、僕は有髪の僧侶…
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当番ノート 第28期
一つめの嵐が去った朝、そして二つめの嵐が来る前に、私とモリヤさんは外へ向かうトラックの荷台に乗せてもらった。トラックは日に一度、食料だとか外でしか手に入れられないものを届けてくれる役目のものだった。口数は少ないが気の良いおばさんが運転手で、見返りも求めず乗せてくれるのだ。 もう少しいる予定だったんですけど、とモリヤさんは言う。 「次の仕事があるし、この島には休みがてら来たのでそう長引かせるわけ…
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当番ノート 第28期
雨の日が続いた。 僕は自分の記憶を探ることを一旦辞めて、部屋の片付けをしたり、簡単な食事を作るようになった。医者から貰った薬が合ったのか、この前同期と会って話したせいか、以前よりも前向きな気持ちで過ごしている実感があった。相変わらず眠りは浅かったけれど、数日に一度はぐっすりと眠り、腹を空かせて起きることができた。 僕はキッチンに立つと、食パンを切り、丁寧にマヨネーズを塗り、胡瓜とハムをはさんで食べ…
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当番ノート 第28期
韓国で美容師として働き始めて、やがて3年半が経つ。 この3年半でご飯屋さんもどんどん変化している。 自分は辛いものが苦手で韓国料理はあまり食べられないので、 この国の食にはだいぶ苦労をしていると言える。 最初はほぼすべての韓国料理がダメなぐらい何も食べれなかった。だが人間の適用能力とは凄いもので 少しずつ辛くない食べ物を見つけたり、頑張って辛いのに挑戦しながら自分自身も辛いのに多少慣…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第7回目。 前回は、今一度自分を見つけなおした僕が次にとった行動について、お話させていただきました。 それは「自己受容」。 できない自分も自分なのだと受け入れるという行動でした。 受容すると、自分をもっと知りたいという気持ちが出てきました。 多くのイベントを開催していたご縁で、さまざまな人に出会い、他者から教えてくれる自分という存在に気づ…
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当番ノート 第28期
嵐がやってきた。 天気がひどい日は、島の輪郭は曖昧になる。灰色の雲と山は滲み、近くの大きく揺れる木だけがはっきりとうるさかった。まだ日が出ているはずの時間でも暗い外で、大きな雨粒と風がごうごうとうねり、家を揺らす。 母は役所に取り残されているようだった。でもあそこは海にも山にも近くないし、食料なんかもある。建て替えられて間もないし、何の問題ないだろう。むしろ古い実家よりは安心だ。モリヤさんも…
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当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② アマリがまだ 海の底で揺らぐ粒子だった頃、老いた人魚から様々な伝承歌を聴かされていた。 その歌は時間をかけて命に染み込んでいき、人魚を形成する核となっていく。 ”泡沫人は揺蕩いながら 光の彼方へ遠ざかる 交れば命は永遠となる 神様からの捧げ物 掠れることは許されど 染まることは許されぬ 喰らうこと…
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当番ノート 第28期
品川駅に着くと僕は人の多さに圧倒された。夕方の四時でも日差しは強く、駅の窓を通してもなお僕の肌をじりじりと焼く。僕は通路の端を早足で歩き、待ち合わせ場所に向かった。 ビルに入ってすぐ、白くて大きな機械が目に入った。どこかで見たことがある。人々が並んでかばんをカゴに入れ、箱のような形をしたスキャナーに通し、その間に自分はゲートの下をくぐる。金属探知機だ。 僕は訝しがりながらも小さなショルダーバッグを…
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当番ノート 第28期
先日、カメラを買おうと決意して お店の韓国人にカメラを調べてもらった時に 「新品にしますか? 中古にしますか?」 と聞かれたのでとりあえず どっちも値段とか調べて教えもらったが 韓国での新品と中古に対する値段の差が 面白いほど分かれててビックリした。 日本なら中古でも開封したけど使ってなかったり 数回しかシャッター押してないとかで ほぼ新品のカメラがあるわけで 値段はある程度高いまま…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第6回目。 前回は、僧侶としての個人の活動を増やしていった僕が、今一度自分を見つめなおした結果、気づいた思考についてお話させていただきました。 気づいたことは「できない自分から逃げる」という行動パターン。 さらには、その逃げる行動パターンに従い、イベント中、「人前で恥をかきたくないという気持ち」からあまり自分を語っていない事実。 どこか僧…
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当番ノート 第28期
ちょうど仕事もなかった私は隙があれば、取材と銘打ったモリヤさんと喫茶店に入り浸った。 「私も書く作業は真夜中にやるとはかどるので、相手してくださると嬉しいです」 そう言うモリヤさんとの会話は、ずっと新鮮で、奇妙なものだった。 この先関わることがないだろうとわかりながら、その場の時間を埋める会話はこの島の中ではまずありえない。島にやってくる人間は大概、大きな決意と共に移り住んでくる。その事情は…
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当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① ばくばくと鼓動を打ち続ける毛むくじゃらな生物の身体は暖かく、 腕の中にもうひとつ心臓ができたような、奇妙な心地よさがあった。 これから自らの命を絶とうとするものが、突如目の前に現れた関係のない命を救おうとしてる。 その矛盾に疑問が浮かばなかった訳ではないが、 アマリは見知らぬ命をしっかりと抱きしめて水面を目指し泳いだ。 海中から勢い良く飛び出し、目…
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当番ノート 第28期
「スーツケース?」 「はい。見当たらないんです。あと去年使っていたはずの手帳も」 診察室はいつもの匂いがした。草のようなハーブの香りが、ディフューザーから静かに流れてくる。 「それが見当たらないことが不安なのでしょうか、それとも・・・」 僕は頷いた。 「それが僕の記憶を呼び起こす鍵のように思えてならないんです」 「なるほど」 医者はそう言っただけで深追いはせず、カルテに暗号のような文字を書き込んだ…
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当番ノート 第28期
一人でご飯を食べたり、カラオケに行ったり、旅行をする。 という話を韓国の人に言うと、すごく心配される。寂しい目で見られがちだ。 「お一人様」 という概念が、韓国にはまだ根付いていない。 韓国はご飯もみんなで食べるし、何かする時もみんなでしようとする。 外食しようとしても、一人では入れてくれないお店ばかりで大変である。 昔、吉野家の牛丼が進出してきたが、一人で食べるスタイ…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第5回目。 前回は、僕がなぜお寺のみならずカフェ、図書館や公民館などいろいろな場所で活動をするようになったのかについてお話させていただきました。 その理由は、僕自身を知ってもらうことで、お寺にいる僧侶の魅力を感じてもらい、それが参拝、お寺でのイベント参加につながるのではないかという気持ちからでした。 それがいつしかお寺の敷居を低くすること…
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当番ノート 第28期
扇風機しかない部屋は、すこし暑い。でもあおいがいないから、シングルベッドをひとりで使える分まだ涼しかった。風はないが、一応窓を開け放してベッドで寝そべっていると、星がちらちらと光って見えた。 十年前、流れ星みたいだと一緒に笑った友人は、結局半年もしないうちに外へ出て行ってしまった。あそこは両親が仲が良かったから仕方がない。私たちは手紙を書くよとうそぶきあって、結局住所も忘れてしまった。電話だけ…
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当番ノート 第28期
アマリはあと2時間ほどで14歳になる。 正確に言えば、14歳になってしまう。 物心ついた頃にはすっかり憎悪と嫌悪の対象になっていたナンバー。 逃げようにも逃げられない、この日がとうとうやってきてしまった。 夜中の0時を過ぎ、自身の肉体におぞましい呪いの数字が刻まれてしまったら、例の計画を試みるつもりだった。 その計画とは、 海を出て 砂浜に横たわり そのまま朝日が昇るのを待ち 干からびてミイラにな…
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当番ノート 第28期
クローゼットを整理してわかったのは、荷物が明らかに減っているということだった。そして一番驚いたのは、スーツケースが見当たらないことだった。 黒い、どこにでもあるようなスーツケースだ。大学の卒業旅行のときに買った。壊した記憶はない。いや、壊して捨てたのを忘れたのだろうか?誰にも貸していないはずだ。空き巣が入って、スーツケースだけ奪っていく可能性も考えにくい。僕はクローゼットを閉めると、ベッドに倒れこ…
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当番ノート 第28期
最近、撮影やブログ、インスタなどの写真のクオリティなどをあげたいのと 昔からずっと興味のあったカメラを始めようと決心した。 でも、買おうと決心したものの自分の性格を知っているから 今まで触れてこなかったのでどこのメーカー、どんなやつを買ったらいいか凄く悩んでいる。 なので純粋に「カメラを買おうと思っているんですがどんなのがいいですかね?」と お客さんや友達に聞いてみている。 そうするといろんな意見…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第 4 回目。 前回は、なぜお寺でさまざまなイベントを開催するようになったのかについて、お話させていただきました。 1 つ目の理由は、老若男女の日常生活により身近な存在として、仏教の教えを広げていくため。 もう 1 つの理由は、イベントで参加者と直に対話するなかで、書籍からは学べない実践的な学びや気付きを得て、僧侶としての力を高めていきた…
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当番ノート 第28期
カレーは、あおいが作ることになった。 狭い台所では二人立つのが厳しいので、私はぼんやり後ろ姿を眺めていた。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、余っていた鶏むね肉。あおいは一口サイズが好きなのだと言って、どれも細かなさいの目に切った。だから、あおいのカレーはいつもじゃがいもが溶けがちなのだけど。焼き目を入れたあとは軽く煮込んで、カレー粉と小麦粉を入れた。 手持ち無沙汰だった私は暇つぶしに動く。ご飯…
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当番ノート 第28期
「ぼうやはこれがなんにみえる?」 おかあさんと木苺をつんで遊んでいたら 不思議なかたちをしたのがたくさんあった 「ねこのお耳みたい」 心の中でそう思って うーんと言ったら おかあさんは 「ずうっと昔、ぼうやにはじめて会ったときの、ぼうやのあんよみたいよ」と笑っていた 嬉しくなったあと ちょっと恥ずかしくなって 真っ赤な飴玉をひとつ ごくんと飲み込んだ 「ねえ、これ似合う?」 仲良しのしろうさぎが …
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当番ノート 第28期
馬鹿だ、と僕は心の中で自分に向かって毒づいた。目の前には下品な色をした看板が光っていた。 男性客に女性を添い寝をさせるという怪しげな店の前に、僕は立っていた。オプション料金を支払えば「できること」が増えるという。スーツを着た店員が、僕のすぐ側にいる男に入店を勧めていた。喋り方がいやに丁寧で、それが彼の胡散臭さを際立たせていた。それにしても彼はどうしてこんなに暑い中、黒いスーツなど着ていられるのだろ…
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当番ノート 第28期
以前からもあったが、 この頃、韓国で美容師をしたいと言う人からの連絡がすごく増えてきた。 自分が韓国で美容師をしていると言うことと maruni hairの認知度が上がってきてる証拠だから嬉しい。 けど、韓国で美容師をなぜしたいのだろうか? その理由によっては動き方が変わってくると思う。 自分は韓国でお店をするからとオーナーから誘われて来たので 言い方は悪いが韓国に興味…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第3回目。 前回は、なぜ「人の一生に寄り添う僧侶」というテーマに出会ったのかについてお話させていただきました。 以前働いていたホスピス病棟で、臨終の間際にいる人たちと関わった経験から、その人たちが亡くなった後の供養のためでなく、その人たちが生きている”今”を支える関係性をいかに構築していくかが大切だということを学んだのです。 そんな僕は、…
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当番ノート 第28期
めぐを姉のもとへ送って病院を出ると、入口のそばに見慣れた黒い大きなバイクが停められていた。そしてバイクに乗っているのは、この島でただひとりしかいなかった。 「ときこ」 ハスキーな声が私を呼ぶ。振り返るとまさにバイクの主である、あおいがそこにいた。メタルバンドのTシャツに、革のパンツ。年中黒い格好をするあおいは、白い肌と赤茶のショートカットだけがやけに明るい。 「あおい、どうしてまたこんなところ…
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当番ノート 第28期
コーヒーカップの湯気の向こうにいる妻に向かって 「おめでとう」と言ってみた。 トーストにブルーベリージャムとクリームチーズを塗りながら 「何が?」と返しちらりとこちらを見る、彼女の少し冷たい目線が僕は好きだ。 「今日、何かの日だっけ?」 「なんとなく。きみを見てたら『おめでとう』って言いたくなった。大安吉日土曜日の朝。天気もいいし。なんとなく。」 「ふーん。」 そう一言言い放った後、妻はプチトマト…
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当番ノート 第28期
薬の量を増やしてからしばらくすると、悪夢を見るようになった。暗闇の中で誰かに追いかけられる夢だ。足音だけが聞こえてくる。僕はひたすら走り続ける。細かいところは思い出せない。目が覚めると大量の汗をかき、疲れ果てている。 「たまにいるんです、そういう人が」 医者は気の毒そうに僕を見た。 「どんな夢を見ますか」 僕はもう一度今朝見た夢を思い出そうとした。けれど記憶には暗闇と足音以外何も残っていなかった。…
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当番ノート 第28期
生活していると良く感じることで 韓国って見せ方やアピールすることが凄く上手いなぁと思う。 洋服屋さん、カフェ、BARなどオシャレな所はだいたい良い雰囲気を出している。 写真におさめてインスタグラムやフェイスブックに投稿したくなるような感じだ。 韓国人は流行りに敏感で話題になればすぐに群がる。すぐにまた新しい流行が来てそっちに行く。 今の韓国はインスタグラムやブログにのせるためにその場所に行っている…
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当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です。 今回で第2回目。 前回は、なぜ「人の一生に関わるお寺」をテーマにして活動をはじめたのかについてお話させていただきました。簡単におさらいすると、これまでの葬式仏教のあり方に疑問を持ち、人が集い、学び、癒される場としてのお寺本来の役割に出会ったことがきっかけでした。 今回は、そんなお寺本来の役割を取り戻すべく活動を開始した僕が、なぜ「人の一生に寄…
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当番ノート 第28期
島はすり鉢状になっている。だから海に囲まれていながらも、中にいたのではなだらかな丘陵ばかりしか見えなかった。砂浜があるのは、本土へ続く橋の周りだけだ。それでも夏になれば、女たちが水着ではしゃぐ。橋へ続く大通り沿いの一軒家では、その声たちから逃れようがなかった。 まぶたを閉じていても薄明るいほどに、もう日は高い。近くの茂みでじいじいと鳴く蝉の声に混じる、女たちの黄色い声、波の音。息継ぎでもするみ…
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当番ノート 第28期
あなたのことが大好きだった でもあなたは私を選ばなかった レモンイエローのワンピースがよく似合う、 あの子にあなたは夢中だった よくあるはなし よくあるはなし 彼女のことを愛していた けど彼女は消えてしまった 「駅前のコーヒーテラスによくいるプードルにそっくり。」 僕の茶色い巻き髪をいたずらっぽく触りながら、クスクス笑い ふわりとキスをくれた晩に 彼女はもう帰ってこなかった よくあるはなし よくあ…
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当番ノート 第28期
雨上がりの秋葉原は、酷く蒸していた。まるでサウナだ。時刻は零時前で、終電を捕まえようとする人達がぞろぞろと駅に向かっていく。僕はその流れに逆らい、末広町へと向かう大きな道を進んだ。 ベッドに入ったのが八時。眠るにしては早すぎる時間だったけれど、それ以外にすることがなかった。眠りに落ちる直前、雨が降りだした。守られているような、それでいて自分の孤独を思い知らされるような、静かな雨音だった。 目が覚め…
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当番ノート 第28期
みんなが知っていることだが、韓国は整形大国である。 自分は韓国に来てから整形大国であることを知った。 なぜなら、 韓国にはまったく興味がなく、渡韓してしまったからだ。 今考えると、何の情報もなく純粋に自分の体験だけで韓国を吸収できたからこそ いろいろと韓国について文章に出来てる気がする。 自分は韓国スタッフや韓国人のお客さん、日本人のお客さんに整形についての 質問を良く投げかけることがある。 同じ…
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当番ノート 第28期
はじめまして。 この度金曜日を担当することになりました、 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です。 「人の一生に寄り添う僧侶」をテーマに、 僧侶のみならず、理学療法士、心理カウンセラーとしても活動をしています。 今年で僧侶になって20年目になりますが、 そもそもは実家がお寺というだけで始まった仏道への道、 最初は正直、僧侶という仕事に魅力を感じていませんでした。 仏道の本格的な始まりは大学に入学して…
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当番ノート 第28期
ある夏、島から男が出ていった。 私はまだ中学生で、その光景を校舎の屋上から見ているだけだった。 「ほら、また出てくよ」 一緒にいた友人はセーラー服をなびかせながら、柵から身を乗り出す。指さした先には、本土へ唯一つながる細い橋があった。 普段は部外者が入らないよう、上げられている橋だ。けれど今日は島を出ていく期限だったから、橋はずっと下げられていたし、車もたくさん去っていった。 深い青色の海にかけら…
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当番ノート 第28期
旅の途中、風変わりな女の子に出会った。 旅と言っても、いつも遊んでいるりんごの木から、1、2、3本ともっと先の、まだ登ったことのないりんごの木まで。 お昼ごはんから晩ごはんまでの、短い旅ではあったのだけど。 このあたりでは見たことのない女の子だった。 風変わり、というのは彼女のあたまのことで。 好き放題に伸びた長い長い髪の毛が、別の生き物のように うねうねと風になびいて、なにかから守るように、彼女…
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当番ノート 第28期
地下鉄の駅を出て長い階段を上り、交差点に立った時、和光ビルの時計が九時を告げた。周囲のけばけばしい明かりとは違って、あの時計の光は柔らかい。けれどそれを眺めたのは一瞬で、僕は信号が青になると同時に歩き始めた。夜になったというのに、茹だるような暑さだ。 なぜ銀座に来たのか?熱風に髪をなびかせながら、僕はふと疑問に思った。ここ最近ずっとそうだ。僕は自分が何をしようとしていたのか忘れてしまう。お湯を沸か…
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当番ノート 第28期
はじめまして。 韓国生活で日々感じること、考えさせられることを綴っていこうかと思います。 自分は韓国で美容師をして4年目を迎えている。 この3年ちょいでいろんな大変なことがあったでしょ?とか、どうして韓国で美容師をしているの?など 良く聞かれるがまたちょくちょく機会があれば書いていこうと思う。 今回は最近感じたことを文字にして整理してみることにした。 今の自分のお客さんの割合は日本人50%、韓国人…