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2F/当番ノート

週刊ボツ 創刊号

当番ノート 第60期

ボツがボツであるために

「欲しいような、いらないような…」

ハズレ(いらないもの)をアップデートした作品を、ハズレの上位互換品と命名して制作している私ですが、
その制作過程でいくつものボツ案が生まれています。

「ボツ案とはいえ、形にしたらそれなりに面白いのでは?」
「私がボツにしているだけで、意外とボツじゃなかったりするのでは?」

という考えで始まったのが、この週刊ボツです。

「最近、ボツの連載やってまして…」って言えるのが嬉しい。
そもそもが短いタイトルだけど、週ボツって呼んじゃお。週プレみたいに。

今回は「ブックカバーのボツ案」

週ボツ 創刊号の今回は、

「表紙が低画質になるブックカバー」が完成するまでに思いついていた、ブックカバーのボツ案公開

ちなみに説明しておくと、表紙が低画質になるブックカバーは「表紙を隠す(わからないようにする)」というブックカバー本来の機能を、「表紙の画質を落とす」ということで表現したブックカバーです。

我ながら、「欲しいような、いらないような…」

ボツ!いちごのブックカバー

いちごのテクスチャ がプリントされたブックカバー。

しかもヘタの部分は本のしおりになっているというアイデア。
いちごを食べるときにヘタを取り除く行動と、本を楽しむ時にしおりを取り除く行動は、なんか似てるような気もするな〜と。

「これなら他の果物とか野菜でもデザインパターン作れそうだし、いいじゃん!これで行こうよ!」

と思う自分もいるのですが、

「盛り上がってるところすみません…本の表紙が果物とか野菜みたいになる意味がわからなくて…」

と思う自分もいて、ちゃんと納得させられる答えを出せないのでボツにしました。

「甘酸っぱい恋愛小説にはいちごのブックカバーをつけたりするように、本の感想に応じて果物のブックカバーを選んでコレクションする・・みたいな使い方を想定しているブックカバーで・・」

みたいなことも考えてもみましたが、やっぱりちょっと苦しい。
ボツです。

ボツ!あみだくじブックカバー

8本あるヒモのしおりを使うことで、あみだくじで遊びながら読み始めるページを決められるブックカバー。

ストライプ柄のブックカバーを見たときに、「横棒を足しちゃえ」的発想で思いつきました。
一度読み終わった写真集や名言集を、運試し的に読むことができるブックカバーみたいな。
でもよくよく考えてみると、本はテキトーなところでバッ!と開くことで運試しできるんですよね。

わざわざ別の方法で運試し要素をくっつける必要もないので、ボツです。

ボツ!読み込み中ブックカバー

本を読み込み中になるブックカバー。

「Loading…」のデジタル表現を引用して、本を読み込むという意味の「Reading…」にしたアイデア。
カバーを半透明のグレーな素材にすることで、読み込み中のあの感じを再現するというね。

単純でベタなアイデアなのでボツにしました。

「はい、ボツ!」とは言うものの

連載用に3つのボツ案を簡単に形にしてみましたが、ネタ帳には

・ホッカイロが収納できるブックカバー →本を読むたびに手元がホカホカ
・表紙の色が薄れたように見えるブックカバー→読みまくったと錯覚
・表紙がぼやけるブックカバー →表紙を隠す別の方法

など、他にも思いつきのアイデアが走り書きでメモしてありました。
「はい、ボツ!」とは言うものの、ふとしたきっかけで使えるアイデアに変わることもあるので、ボツは侮れません。ボツには優しく接しておくのが吉。大手出版社で相手にされなかった漫画作品が、別の出版社の目にとまって大ヒット!なんてこともあるわけですから。

いま いませんのボツが読めるのはアパートメントだけ!次回もおたのしみに


いま いません

いま いません

不在です。

Reviewed by
北枕 ふか子

今回の連載レビューを担当する、北枕ふか子です。
主にフリーペーパーを作っており、他にもいろいろやっています。アパートメントでもフリーペーパーについての連載を書いたので、わたしの素性が気になる方はぜひ御笑覧ください。

さて、いま いませんさんの「週刊ボツ」。
略して「週ボツ」!創刊号!

「ハズレ(いらないもの)をアップデートした作品を、ハズレの上位互換品と命名して制作している」とのことですが、今まで作ってきたものの数々、本当に面白く、「よくそんなこと思いつくなあ」とひたすら感動しております。
こんなに面白いボツ案、わたしなら全部フリーペーパーの空いたページにねじこんで、余すところなく採用する気がします。

思えばわたしもあらゆる企画をボツにしてきました。
フリーペーパーの企画会議ではありとあらゆる案が浮かんでは消えていく。当時は「面白い!」と思いつつ泣く泣くボツにした案も、今見ると「はてな?」と思うこともある。
逆に、当時は「これ面白くない!」と思ってボツにした案の方が今見ると「ちょっと変えたら面白くなりそう」と思うこともある。
ボツ案というのは時を超えて輝く可能性があるダイヤの原石です。それを見られる「週ボツ」は贅沢な連載だと思います。

今回はブックカバーのボツ案です。
採用された「低画質のブックカバー」を見て、2013年に紀伊國屋書店が行った「ほんのまくら」フェアを思い出しました。その本の書き出しをブックカバーにし、タイトルも、説明も、帯も、著者名もすべて隠す。買うまで中身はわからず、書き出しだけを頼りに本を選ぶこの企画。当時大学生だったわたしも「すげえ!おもしれー!」と思いながら買いました。

その本の個性が少しだけ見える形で隠されると、人は途端に興味を覚える。だから「低画質のブックカバー」も思わず手に取って本を開きたくなるわくわく感があります。逆に、ボツ案は本が全く見えないか(どの本でも良い)か、本の個性が生かされない。だからボツにしたところもあるのかしら……なんて思います。

ですが、ボツ案たちにもまだ輝きが残っている気がします。「読み込み中ブックカバー」は他のものに採用すれば永遠に読み込み中の世界が作られて面白そう。例えば、下敷きにして教科書やノートに置けば、「今、読み込み中だから勉強できませ~ん!」的な面白さがありますし、眼鏡にすれば、読み込み中の世界を歩ける。果物ブックカバーもあみだくじブックカバーも、まだまだ輝けそうです。

しかし、こんなに面白い案を思い浮かぶいまさん。そもそも、なぜ、ハズレの上位互換を制作しはじめたのか、一番最初は何を作ったのか……。そんなところも、週ボツの番外編として読んでみたいものです。

ということで、次回の週ボツもお楽しみに☆

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