皆さんは、お化け屋敷はお好きですか。
わたしは大の苦手です。
ホーンテッドマンションを指の間から薄目で見ながら縮こまって乗っているのが精一杯です。
皆さんは、ホラー映画はご覧になりますか。
わたしはとっても苦手です。
二人以上で、なおかつ顔を手で覆い隠しつつ、更に大絶叫で実況しながらでしたら、なんとか視聴可能です。
皆さんは、怪談はお好きですか。
わたしは大好きです。
目の前で何かが飛び出してきたりしない。
突然特殊メイクの誰かが画面いっぱいに映ったりもしない。
話を目で読んで、聴いて。
自分の頭の中で想像したものだけが全て。
それで背筋が薄ら寒くなる、その瞬間を愛しています。
はじめまして、怪談収集家のオオタケと申します。
「怪談奇談怖い話」ならジャンルを問わず、自らの体験談や人様にお聞かせ頂いたお話を配信やイベントで語らせて頂いたり、「怪談師」といわれる、主に怪談を語って人に聞かせる活動をされている方に、怪談の提供(レンタルみたいなもの)をしたりしています。
自分が「怪談師」と名乗らないのは、あくまでも収集に活動の重きを置いているからです。
この度アパートメントさんで文章を書かせて頂けることになり、『私と怪談』をテーマに書いていってみよう、ということになりました。
まずは冒頭で書き連ねた通り、わたしの中で「怪談大好き=怖いこと大好き」というわけではないという事は伝わったでしょうか。
わたしが怪談が好きな理由は、小説やエッセイを読んでいる時ととても近い感覚です。
読んで/聞いているときに、頭の中で情景や感情を想像する。
自分をシンクロさせる。
それによって得られる感覚がとても面白いのです。
さて、せっかくアパートメントですから、うちの住居で起こったお話をひとつ紹介します。
我が家での話です。
わたし、昨年の春に体調を崩して一週間ほど伏せってた時期があったんです。
毎日とにかくたくさん寝ていたら、日を追うごとに快方に向かっていって、一週間経つ頃の夜には家事も出来るようになりました。
「明日の朝はいつも通り夫と一緒に起きて、ちゃんといってらっしゃいのお見送りが出来そうだな」
そう思って床につきました。
朝、布団を頭から被っている状態でぼんやり目が覚めました。
くぐもった声が布団越しに聞こえてきて、夫が私に声を掛けているのだと理解しました。
「モゴモゴモゴモゴ」
何を言ってるのかよく分からないけど、もしかしてもう家出る時間ギリギリなのかな、手探りで携帯を手に掴み引き寄せながら、なんて言ってるのか聴き取ろうと耳を澄ませます。
“もう行くでー”かな、“いってきます”かな、
薄暗い布団の中でもシパシパする目をこすりながら考えると、変なことに気がつきました。
いないいないばあしてる。
朝からちょけてるのか、ならまだ時間に余裕あるってことだなあ〜と思いつつ布団の中をもぞもぞしていると、また変なことに気がつきました。
なんか、私の知ってるいないいないばあとちがうな…?
なにがちがうんだろう。
布団から頭を出しながらよくよく耳を覚ませて聞こえてきたのは
「いない♪いない♪いない♪いない♪いない♪いない♪いない♪いない♪」
教育テレビの体操のお兄さんみたいな、底抜けに明るい響きの声。
誰!?!?!?!?!?!?
布団を跳ね除けて、反射的に声のした枕元から反対側に飛び退き、ばっと声の方をみるとその瞬間
「いな」
声は止まり、そこには誰もいませんでした。
手に持った携帯の時間をよく見ると10時34分。
夫はとうに家を出た後でした
「いないいない」というお話です。
日常の隙間にこんなことがあったりもするんですね、アパートメント。
今後も怖い話をしたりしなかったり、気軽にお楽しみ頂ければ幸いです。