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当番ノート 第5期
鍋の中の湯が沸騰を始めるのには、それほど時間はかからなかった。 午前に買い物に寄ったスーパーで、 おにぎりや、サラダの巻き寿司などを買いたいのをぐっとこらえて帰宅した。 お昼ご飯は、ありもので。 料理すれば洗い物なども増えるし自動的に家事に費やす時間は増える。 それでも、給料日前だし、家族の分を作るわけでもないし、何でもいいのだ。 そう思えるから、ひとり休日というのは、気が楽なんだな。 それで結局…
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当番ノート 第5期
よく言われる事ではあるけど、陰陽道というのは東洋流の科学だったのだなあ、と京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を読んで改めて思った。京極堂の論理展開は堂々と矛盾をはらんでい(るように見え)て、ぼく的には痛快だ。魑魅魍魎が古代的唯物論だったような気もしてくる。 そんな風に思ってから、そういえば、と思ったのと、たまたま観た日本のテレビ番組の中で、デンマーク人デザイナーが日本の文学者のある著書を座右にしているのを見…
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当番ノート 第5期
四ヶ月……長かったな。 夏からずっとここで日記を書いてきたけど、今日でようやくこのアパートを退去します。 見上げると、もうすっかり冬の空だから、季節が二回変わったのか。 シカシ、プロフィールに「誰か僕に、お酒をおごってくれる人はいませんか?」と書き続けていたらさすがに一人くらいは酒をおごってくれるだろう、と淡い希望を持っていたけど、この四ヶ月間、誰も名乗りを上げるやつがいない!お前ら全員ケチかよ!…
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当番ノート 第5期
僕はこの写真に「our finder」という名をつけた。 「私たち」とか「our」って言葉は二人以上の物事を指す。 もしかしたら二人だけかもしれないし、 もしかしたら三人、四人、五人、 もしかしたらもっと大勢のことを指しているのかもしれない。 言葉のみをみた者は想像するだろう。 「our」に見え隠れする人々の存在を。 多分この写真を撮ったときは、 僕は「二人」の意味をこめていたと思う。 二人だけの…
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当番ノート 第5期
まるで普段どおり なんの違和感もなく電車に乗って 来た道を帰るような錯覚 それはあの日の夕方 まるで昔から決まっていたような なんの前触れもないどしゃ降りの雨 傘の無かった帰り道 それはあの日の夕方 まるで普段どおりに 毎日が過ぎると思っていた あの日の夕方 まるで世界が変わってしまった あの日の夕方 生きているか この夕陽を見ているか 生きているか 笑って飯は食っているか 生きているか 嫌なこと…
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当番ノート 第5期
2001 2001 学生時代の写真です。この時期の写真を語る言葉は特にありませんが、とにかく単純に来たものを捉えるという反復作業に徹底していた様に思います。写真を撮りフィルム現像してそれをプリントする。そしてまた外に出て撮影してとその繰り返しの毎日でした。今の生活も当時とそんなに変わりませんが、とくかく外へ出ていって撮影する毎日を過ごしていました。その後2003年に学校を卒業し、ギャラリーニエプス…
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当番ノート 第5期
あした、もし、晴れたら。 その位の、畳んで掌に収まるほどの、ちいさな祈りのようなもの。 こんばんは。浅田泉です。 ・・・というのも、少し寂しいのですが、これで最後です。 改めまして、藤田莉江です。 この度、ご縁があって第5期アパートメントの土曜日を担当させて頂いていました。 いつもは、主に写真という分野でアマチュア活動をしています。 先週、種明かしのような事をしました。 けれど、きっとお読みいただ…
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当番ノート 第5期
朝起きると、携帯電話の電源が落ちていた。 充電切れ。 実家に泊まった夜。 久しぶりに祖母の夢を見た。 前回のコラムにも書いた、本通り沿いにあったお米屋さんが舞台だ。 店の奥にある、真っすぐで薄暗く、長い階段を上がると、そこはお米屋さんの二階。 長屋のような造りで、3つの和室が続いていた。 夢の中では、私は幼き子供。 きっとそれが祖母に見つかれば、厳しく叱られるだろう。 そのことを自分がわかっていた…
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当番ノート 第5期
先日、久しぶりに007の新作を劇場で観た。 シナリオのB級さも含めてかなり堪能。 ダニエル・クレイグのちょっとくたびれた感じのジェイムス・ボンドは結構好きだ。 ハビエル・バルデムの怪演というか名演が素晴らしい。 アデルの主題歌とオープニング映像はセクシーで秀逸。 音楽や衣装、その他エキストラに至までディテールが徹底して作る込まれている点、 その場面、国柄にあわせた、というか、場面の個性を引き込むよ…
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当番ノート 第5期
(爆発)
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当番ノート 第5期
結局のところ 写真を通して 「君たちはつながっているよ」 と誰かに認めてほしいのかもしれない。 「君たちは楽しそうだよ」 「君たちは似ているよ」 「君たちは一緒にいていいんだよ」 「君たちはつながっているよ」 (写真:2011年12月 城崎温泉)
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当番ノート 第5期
加齢臭と哀愁と 人生に対するある種のきっぱりとした諦めと 昨日飲んだ酒が抜けないあの口臭 長年着込んだ革の上着 箪笥から引っ張りだした一張羅 見比べて着るはやはりいつもの革の上着 くたくただが気に入っているのだ この人生を 風呂敷に包んだ女房を 質屋に入れて預かり賃は宵の酒 スルメにありついたと一息つけば とっくの昔に酒がない 預けるものがもうないが 気に入っているのだ この人生を
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当番ノート 第5期
「青森」より 2005 「青森」より 2005 2004年から2005年にかけて青森県八戸市にアパートを借りて住んでいた事がありました。直前までメンバーとして活動していた東京、四谷にあるGallery Niepceでの活動を終え、新たなテーマの模索と作品制作のため拠点を移す事にしました。他にもやはり様々な理由はありましたが、北の地へ向かう事に何かしらの希望を持っていた事は確かな気がします。実際に八…
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当番ノート 第5期
・・・・。 ・・・・・。 ・・・。 ・・・。 2012/11/16 ・・・・。 。 2009/8/18 + A woman in the picture is my own. + 誰かが、わかってくれるとか、そうは思わないけれど。 賭けのような気持ちで鳥かごを開け放つ。 ほんとうのことでは伝えられない事を伝えるための嘘のことを、人は許してくれるかどうかわからないけれど。 + 来週の最後の回に、改め…
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当番ノート 第5期
あじさいを好きだと気づいたこの夏。 詳しいわけでもなく、ただ好きで。 この秋に撮ったあじさいが、 枯れてるというより、咲いてる途中、 まだこれから咲き誇るのではないかと。 そう思えた実家の脇に咲く、あじさい。 彼岸花。 娘と一緒に自宅のそばのお寺に行った時に。 彼岸花。 学校の帰り道に川の土手にたくさん咲いていた。 娘もこの秋、一本道の通学路で川の向こうにこの赤い花を感じながら、 学校に通っていた…
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当番ノート 第5期
さっき、蚤の市での買い物の帰り道、トラムに乗るべくプラットフォームでまっていると、 電光掲示板に、2分後に一本、そのさらに2分後にもう一本、ぼくが乗ろうとしている路線のトラムが到着する、と表示されていた。 水曜日、ベルギーでは主な学校が昼に終わるので、昼過ぎになるとバスやトラムはかなり混雑するのだが、 案の定、最初に到着したトラムはぎっしり満員。そこにさらに多くの乗客が乗り込んでいくのを見て、次を…
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当番ノート 第5期
今週は水曜日、バタバタしてるんで、今のうちに更新しとこ。 今日は月曜日の深夜。 野暮用ついでに、ここ何日か高田渡を聴き返しているけど、やっぱこの人は「FISHIN’ ON SUNDAY」以降のバンド時代が一番おもしろいや。 「FISHIN’ ON SUNDAY」「バーボンストリート・ブルース」、「渡」にしてもそうだけど、 僕にとって高田渡ってフォークシンガーというよりバンド…
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当番ノート 第5期
秋の淡い空の日に 水色のワンピースを着ていたのは 偶然かもしれないし 何か意味があることだったのかもしれない。 僕は無意識のうちに この場所で写真を撮りたいと思ったのだろうけど もしかしたら 空の色と秋乃の色を重ね合わせていたのかもしれない。 写真を見たとき 秋乃がこの空から現れたように感じた。 同時に また空の中へ消えていってしまうような感じがして 少し切なかった。 (写真:2012年9月 江ノ…
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当番ノート 第5期
この 家の風呂場の壁に ぴったりと張りついている この 小さな虫は 今から私が お湯をかけて殺そうとしていることに 気づいているかしら この 小さな虫は 気づいていない ただ 本能で感じとり 逃げるだろう この 小さな虫の 生き延びようとする その心は 化粧をし 良い服を着 過剰気味の食事をして情報過多の毎日に翻弄され 人の視線を気にする私には 失ってしまった 能力だ 今 お湯をかけて流されようと…
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当番ノート 第5期
シリーズ「星霜連関」より 2006 シリーズ「星霜連関」より 2006 一回目に同じタイトルの「星霜連関」について書きましたが、今回はこのシリーズ初期の関東地方で撮影したものです。 関東地方にも民俗芸能や祭りは多くあり、春や秋だけではなく夏も冬も行われています。けれどそれは撮影するようになってから知った事で、実際に探すまでは東京や神奈川、埼玉、千葉で現在も本当に祭りが行われているものなのか知りませ…
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当番ノート 第5期
くい、と、顎を引いてやって 耳の下あたりに額を寄せて 鼻の冷たさを君へ 吸って這わせて 形を辿る 顎の骨を僅かに舐める 向かい合わせもなんだし、 すっと、 後ろから抱く 指で唇をなぞる 緩んだ口の端から指をいれて遊んでみる 向こうの鏡で顔をみてやる 不服な目と目が合う 堪らなくなって、 一気にそのまま組み敷いてしまう 許された中で できる限り甘く乱暴にして 二度三度 何よりも護りたいものを 自分だ…
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当番ノート 第5期
東京に出て半年が過ぎた頃だった。 二人展も終わり、 日本中のワールドカップ熱も下がってきた頃のこと。 秋になり、私は暗室にも通わなくなっていた。 仕事を探し始め、決めたアルバイトは配膳の仕事。 あの、結婚披露宴の場でサービスをする。 結婚式というものが好きだった。人の結婚式に、よく呼ばれていた。 重なる時にはひと月に3本など。まぁ、それはまだ東京に出る前の話だが。 その結婚披露宴での仕事。 上京す…
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当番ノート 第5期
一昨日の夜、ヘルシンキから戻ってきた。 滞在した6日間、タイミング悪く、雪がしっかり降り積もる前の時期だったので、 中途半端な寒さとべちゃべちゃのミゾレとブリュッセルよりも更に短い日照時間にやられて 一気に鬱モードに落ち込みかけたが、たまたま立ち寄ったスーパーマーケットで ビタミンD3のサプリを見つけ、速攻購入。それで危機を凌いだ。 滞在中にやったことといえば、12歳の息子と10歳の娘といっしょに…
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当番ノート 第5期
先週から部屋の大掃除をはじめ、こんまり(近藤麻理恵)先生によるトキメキ基準や、「だいたい一年以上は使ってないな…」という使用(不使用)基準を適用し、様々な物を処分した。そのかわり、新しく台所に導入したのがロースターだ。何故ロースターなのかというと、よく行く焼き鳥屋さんでは肉類は炭火網焼き、魚類はロースターという風に使い分けているので、その店で魚を食べるたびにロースターという物に対し尊敬の念を抱くよ…
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当番ノート 第5期
アパートメントの当番の日、毎回何を書いたらいいのか迷っている。 伝えたいこともないし、伝えられる活動もしていない。 それがありのままと言えばありのままかもしれない。 そういう現状だ。 自分らしいことって考えると、秋乃の写真を撮っていることしか思い浮かばなかった。 アパートメントに誘っていただけたのも、この部分からだと思う。 だから季節ごとの姿を載せることにした。 よく聞く話だけど、写真に対して興味…
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当番ノート 第5期
ぱたり ぺたり ぴたり ぴたりぴたぴた ぴったりぺたぺた ぷったりぽったり ふたりふかふか ぷっつり ばったり ぱたりぱたぱた ぽたりぽたぽた へったりふえたり ぷっつりふたたび ひとりひたひた ひとりただひたすら
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当番ノート 第5期
「india」より 2006 「india」より 2006 インドでの行程はニューデリーの空港に着いてバラナシへ向かい、そこからブッタガヤへというものでした。慣れない海外でしたので何を見ても新鮮に感じられ撮影したフィルムはかなりの本数になりました。インドは言うまでもなく混沌としたエネルギーに満ちあふれ、日本で培ってきた数十年ものの固定観念が何度も打ち砕かれていくのを驚愕としながらも、意外に心地よく…
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当番ノート 第5期
今なら、はける気がする膝丈のフレアスカート もう一度。 あの時捨ててしまった黄色い薔薇のブラウス 埋めてしまったわたしに会いに行く 土の中だけれど掘り起こされるのを待って 指を、 意味なんて無い程 深い土の中とわかっても、 動かして 伸ばそうとする。 希望って、そういうことなんじゃないの、って。 否定されて切り捨ててきた過去の もう一度。 歩きたいところ、 もしかすると 誰かのあしのした 見向きも…
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当番ノート 第5期
『花』のような人だから。 それは美しいって意味じゃなくて。 水と光を与えてもらって初めて、育って、花を咲かせられる。 キホちゃんは、そういう人なんだよ。 人に支えられて生きているということを、忘れてはいけないよ。 夜勤明けの夫を連れ出して、10月に入ってすぐの月曜日、 静岡の街を散歩した。 目的はいくつかあった。 一番の目的は、鷹匠にある大野カメラ店へ行くことだった。 今回、このアパートメントのコ…
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当番ノート 第5期
先週の投稿でその活動の一端をちらっとだけ紹介した東日本大震災被災地支援NGO、アクトフォージャパン・ベルギーの企画の一環で、この4月に福島県浪江町に窯元のある大堀相馬焼の陶工二方を招いて、ベルギー、フランス、スペインの3カ国で相馬焼きの現状についての講演会や展示会などを行いました。その二方のうちの一人、陶正徳(すえまさのり)さんが6月からほぼ二ヶ月間フランスを再訪し、作陶活動を行ったのに通訳として…
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当番ノート 第5期
うんこ。 一日に一度だけ、きみは世界に現れる。 夜になると、いつもの場所で。 それは工事現場の片隅さ。 一日に一度しか会えないきみに 僕は「やあ」と声をかける。「生まれて来てくれて、ありがとう」 肛門から顔を出したきみは 「恥ずかしながら帰って参りました」と横井庄一の真似をする。 でも僕は知ってるんだ。 今日のきみは昨日のきみとは別のうんこだってこと。 一日に一度しか押せないシャッターを押し、僕は…
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当番ノート 第5期
自分が撮るべきものを撮れ。 自分にしか撮れないものを撮れ。 それらは自ずと物語と成る。 迷う必要はない。 ただ真っすぐに焼付ければいい。 それが愛だ。 (写真:2012年4月 名も無き公園)
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当番ノート 第5期
滴はなぜ落ちるのか 穿つため 道に落ちて弾くまで その宿命を知らず 眺める人の心を穿つ 滴はなぜ落ちるのか 放つため 芽吹きの種がひらくまで その役割を知らず 受け継がれる命を放つ 滴はなぜ悲しいのか 永遠ではないから 明日を含んだ一滴が 夜露になることはなく その一瞬に奇跡があるから 滴はなぜ嬉しいのか その奇跡が奇跡であるがゆえ
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当番ノート 第5期
「四国」より 2007 「四国」より 2007 前回より数年遡りますが、2007年に四国へ八十八カ所のお遍路へ行きました。遍路へ行く理由は人それぞれいろいろあると思いますが僕はといえばどんな理由があったか、当時はいろいろ思うところもあり四国へ行ったと思いますが、今思えばなんてことはない理由だった様にも思います。遍路中特別大きな変化などはありませんでしたが、巡礼の道という場を借りてひたすら太陽の光を…
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当番ノート 第5期
こんばんは。浅田です。 今日は、ちょっと、急遽予定外の話です。 これまで三回も、読んでいただいていたらお解りかと思いますが、予定外もなにもないだろうと言われたらそうなのですが。 いや、でも、予定外なんです。 久しぶりに、すごく心の関節が柔軟で、自然と涙が出そうなくらいの幾つかの感動を、ついさっきしてきました。 そう。ついさっきのことを書きます。 僕はこの一週間、ちょうどあるところで自分のつくったも…
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当番ノート 第5期
あの日、あの人に。 出逢ってなかったら。 私の今は、全く違うものになっていただろう。 それとも。 その出逢いがなくとも。 抱いていた夢は、とても単純で、 自分さえ動けば、すぐに叶うものだった。 ただ、その時の私に必要だったのは。 それをあの人は、いとも簡単に。 たった一言。 「来ちゃえばいいじゃん?東京」 ずっとその場所に縛り付けていたのは、 他の誰でもなく、自分自身だった。 東京へ通う新幹線から…
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当番ノート 第5期
古池や/蛙/飛び込む/水の音 (↑区切りごとにリンク張ってみた。) 誰でも知っている、と思われている一編の俳句でさえ、言葉の一つ一つには膨大なリンクが張られていて、 その「本当のすがた」なんて誰にもわからない。 そしてその膨大なリンク情報の中から選択を行っているのは読者であって、 つまりは、意味と言うのは、作品とその鑑賞者のあいだで、その関係性に応じて立ち上ってくる ものなのだなあ、やっぱり、とか…
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当番ノート 第5期
一週間、早いなあ。 今週も書きたい事は何もないや。だから簡単な更新でごめんね。 毎回毎回ジムジム言ってるけど、今もまだ毎日ジム通いですよ。 ランニングマシーンを傾斜10の坂路にして、ひたすら登って(?)る。 トレーニングは楽しいなあ。 今はこれ書かないとダメだからパソコンの前でコーヒーを飲んでいて、 その前は台所まわり(洗うスポンジとか排水口周辺)を熱湯消毒してた。 さらにその前には毛布を干してホ…
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当番ノート 第5期
白い足跡が残る頃 電車の吐く息の中で 知らぬ間に伸びた君の髪が 時間を告げるように揺れた ぎこちなく君は歩き出す 僕はそのあとを追いかけて ぽつんと立つ姿をのぞき込み いつもと変わらず閉じこめた Our finder Our finder 見つけたいんだ Our finder 二人で Our finder Our finder その向こうに見える未来に 呼んで 5時10分の秋の風にさらわれないで …
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当番ノート 第5期
二度三度抱き寄せられる腕枕 吾が埋もれるほどの肩の広さよ 抱きすくめぽんぽん我をあやしつつ 先に眠りにつく男を撫でる あのあとの記憶がないと先手打つ 男ってやつぁいつもこうだ この花を千切ったところでなにもかも 変わると思えぬ夜が明けて 戯れて じゃれて乱れて我に返る 「虚しい」という字に よく似ている
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当番ノート 第5期
シリーズ「ELEMENT」より 2011 シリーズ「ELEMENT」より 2011 このシリーズは「山」の前作にあたるもので、このシリーズの発展させたものが「山」となります。このシリーズは地球を一つの生命体と捉え、地球を構成する要素としての自然物や人工物を撮影し、それらの写真で構成しています。 数年前、北海道に行った時にアイヌの方とお会いし、一週間程その方のところに滞在させてもらいました。そこには…
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当番ノート 第5期
自分、という人間について、それぞれの人間がどれほどまでに興味を持っているのかは、僕は僕以外であった記憶がないのでわからない。 少なくとも僕は、相当自分に対して興味を持っているのではないかなぁ、と思う。 寧ろ、自分にしか興味がないのかも知れない。 昔は自分の外側にばかり興味を持っているのだと思い込んでいた。 兎に角自分嫌いで、自分に価値があるとすれば、価値のないことを解っているというところくらいなも…
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当番ノート 第5期
「カメラ買って正解でしたね。」 その人は、私にそう言ったのだ。 2001年、秋。 私はここ、カフェACHOで友人とお茶をしていた。 人生初となる『占い』へ行ったのは、一ヶ月ほど前のことだった。 私はこの日、2度目を終えて、初めて行った友人2人とここへ寄った。 占いに行き、自分を診てもらおうと思ったきっかけは、 職場で知り合った同い年のウエダくんが、その場所へ行ったこと。 とにかくすごいから、行って…
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当番ノート 第5期
石工だった父親の仕事場で子供の頃はよく遊んでいたが、 父や他の職人達が使い込んでいた道具は なぜかとても魅力的で、 時々、使い方もわからないままに、 欲しいとねだって、そのおっさんたちに笑われた。 また、墓石なんかの欠けた部分を修繕する時に、 父がその辺に転がっている木片を拾い上げ、 それをコテのように使って、膠(?)と石の粉を手際よく混ぜていたが、 その、ただの木片がコテと言う「道具」に昇格する…
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当番ノート 第5期
水曜日か。伝えたい事は特にないな。 ガツガツと写真を撮りたいとも思わない。 書きたい事もない。 人生が充足している気がする。 女と暮らし、馬鹿な話をし、時に威張り、時に褒められ、寝る。 これ以上の何かを求めているのかというと、全く求めていない。 酒が飲めればいい。たまにセックス。 あとは好きなミズヒキの花が年中咲いていればいいのだが、 それは叶わない。友人は、近所の猫で充分だ。 酒を飲んで、テレビ…
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当番ノート 第5期
色づいた銀杏の樹を見上げて歩く秋乃。 僕はゆっくりと歩調を緩める。 そのまま離れてゆく秋乃。 そして、後ろを振り返る。 ぽつんと立つ秋乃。 僕は静かにファインダーを覗く。 秋乃が少しはにかむ。 一瞬の静寂が訪れる。 いつものように光を閉じこめた僕は、 秋乃のもとへ駆け寄る。 そうして再びゆっくりと歩き出す。 秋の風が吹き抜ける。 (写真:2011年11月 昭和記念公園)
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当番ノート 第5期
夜のはざまにひとりの女 ビルのすきまにひとりの女 角をまがればひとりの女 女 女 ひとりの女 背中をみせてひとりの女よ 喘いでみせてひとりの女よ 産毛を逆撫でちくちくするよ 膝まづかせてひとりの女よ よく笑いよく泣きおおいに食べ 時に狂い時に沈みそして浮かびあがる やわらかなその腰つき しなだれるそのうなじ か細く力強い手首と視線 ふり返ればひとりの女 あおぎ見ればひとりの女 嗚呼 女 女どもよ …
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当番ノート 第5期
シリーズ「山」より 2012 シリーズ「山」より 2012 「星霜連関」という民俗芸能を撮影したシリーズの他に伊勢へ来て撮影しているものに「山」があります。このシリーズは伊勢神宮の鬼門の方角を守護すると言われている朝熊山という山で撮影した写真で構成しています。昔から「お伊勢まいらば朝熊(あさま)をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭で唄われるように、参宮を終えた人々は、朝熊山に参詣するのが一般的…
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当番ノート 第5期
最近、わたしはめっきり自信というモノをなくしてしまっている。 これまで、無意識に持っていた価値観みたいなものが、もの凄い勢いで音を立てて崩壊していくのを感じている。 これまでゆっくりとそれに対して考えを持つ機会を持ったことのないものが、どんどん情報として文字(言葉)というもので入ってきて、まだ自分がそれに対して何の考えも持たない無防備な状態の時に、わたしの中で芽を出し、根を張ってゆく。 しかもそれ…
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当番ノート 第5期
無花果(イチジク)。 私がこの果物を食べるようになったのは、大人になってから。 それもごく最近のことで、4人目を授かったこの夏のこと。 市内にある実家へはしょっちゅう足を運んでいる。 娘たちの習い事が実家の近くで行われるため、それを口実に。 週に一度は長女と次女をピアノの先生のお宅へ預け、 三女と私はそのまま実家へ向かい、一時間ほど過ごして帰ることもあれば、 ふたりを迎えに行き、再び戻り、夕飯をい…
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当番ノート 第5期
木を見て森を見ず、という言葉がある。 森を見て木を見ず、ということも言えるだろう。 以前、ある若いダンサーにこんな事を話した。 多くのダンサーは、自分の(要素や機能や人生の)一部として「ダンス」を考えているように思う。 それはそれで全く普通の事だが、でも、こんな考え方も出来るんじゃないだろうか。 「ダンス」というものの一部として、自分がダンサーとして含まれている、と。 「ダンス」のイデア的集合のよ…
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当番ノート 第5期
最近、靴というのはめちゃくちゃ奥が深いなあ…と思っている。 あと最近、こういう、ほら糸井重里みたいなこういう改行の文章。 この改行技をマスターしようと思っている。 だってさ、こっちの方が絶対に経済的だよ。あと、読みやすいしね。 アパートメントの原稿料は一行千円だっけ。ほら、これだけで五千円。 もう六千円か。儲かるなー。 それで靴、に話は戻るんだけど。 糸井重里みたいな極悪人だとさ、こういうフヌケた…
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当番ノート 第5期
夏は暑い。 茹だるように暑い。 毎年毎年これでもかって言うくらい暑い。 すぐに喉は渇くし、 汗でシャツが身体にまとわりつくし、 突然の夕立で洗濯物が台無しになるし、 風呂に入ると焼けた肌がヒリヒリするし、 毎日毎日寝苦しい夜がつづく。 早く秋になってくれと毎年思っている。 でも、 空がこの上なく青くなるし、 植物は生き生きとして緑を強めるし、 冷えた麦茶が最高にうまいと思えるし、 冷やし中華はじめ…
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当番ノート 第5期
魚はおぼれる 鳥はおちる 朝はこがれる 夜はしずむ 虎はなく メデューサはふるえる 夢はやぶれる 恋はかなわぬ 愛はさかれる 僕のいきる 一日にかならずどこかで 老人はしぬ 子はうまれる 若者はうつろう 女はよそおう 男はつかれる それは現実 そして今日 あらゆる未来 明日には過去 昨日は終わった
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当番ノート 第5期
シリーズ「星霜連関」より 2012 シリーズ「星霜連関」より 2012 はじめまして下平です。出身は神奈川ですが、今は作品制作をするため、三重県伊勢市に住んでます。伊勢に何故来たかというと以前から撮影していた「星霜連関」という民俗芸能や祭りを中心にしているシリーズを今度は伊勢を拠点に西日本の撮影しようというのが主な目的です。この場所を借りて、現在から過去へと時間を流し、現在の自分の写真の源流へと辿…
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当番ノート 第5期
うたがうたえるひとが好きだ。 わたしはうたがうたえない。 わたしもいつか、うたうための手と耳がほしい。 羽根を毟ってしまうのは、いつも自分だった。 飛びたい、囀りたい、虹がみたい、誰よりも傍で君を聴きたい。 夢は欲で、近くて遠い白と黒。 羽根をひろげようと懸命になることは、毟るほどに羽根を失うのと同じだった。 うたうのに必要なのは、声じゃない。 伸ばしたい手と、うずめたい耳。 鳥はきっと、飛び立つ…
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当番ノート 第5期
カレーを作る時に必ずといってよいほど思い出すことがある。 私が小学二年生の時の記憶。 一年生の時に同じクラスになり仲良くなったアサコちゃん。 そのアサコちゃんと幼稚園が同じだった仲良しのマリちゃん、 クラスは違えど、私はマリちゃんと一緒に遊ぶようになっていた。 あの頃のマリちゃんの家は、今はもうない。 二十歳を過ぎた頃、マリちゃんの家のまわりにあった田んぼは埋められ、 マリちゃんの家もいつの間にか…
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当番ノート 第5期
こんにちは。御邪魔します。 こちらのアパートメントで、これから2ヶ月間お世話になることになりました。 日玉浩史(ひだまこーし)と申します。 ブリュッセル在住ということもあり、うまい引っ越しそばなどは振る舞えませんが(ワッフルくらいならなんとか…)、 木曜日ごとの当番ノート、しっかり勤め上げようと思いますので、以後よろしゅうお願い致します。 ブリュッセルと言うと知る人ぞ知るコンテンポラリーダンスのメ…
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当番ノート 第5期
週に一回、無理矢理にでも何かを書かなければいけないという状況に自分を置いてみるのも、なかなか良い修行になるかもしれない。そう思って引き受けたここアパートメントの日記も、二回目が過ぎ三回目が過ぎるうちに段々うっとおしくなって、一ヶ月目で折り返したあたりから、苦痛になってきた。何でおれこんな事やってんだ…!? それでもまあ、世の中何が起こるかわからない。こういった事がきっかけで新しい出会いがあり新しい…
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当番ノート 第5期
僕は秋乃のことが大好きだ。 このことは出来るかぎり真っすぐに伝えたいと思っている。 だから秋乃の姿も真っすぐに撮りたいと思っている。 真っすぐな瞳をフイルムに閉じこめたいと思っている。 去年の春に恋人同士となった。 僕は長野で、秋乃は千葉で暮らすことになった。 僕にとって秋乃を撮るということが特別なことになった。 秋乃の姿が好きだ。 秋乃の心が好きだ。 秋乃の名が好きだ。 僕は秋という季節がとても…
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当番ノート 第5期
誰か胸のうちをえぐって 私を罵倒してほしい 思いつく限りの汚い言葉で あらん限りの仕打ちで 私を砕いてほしい 私の跡形などまるではじめから無かったように 誰の記憶にも残らないように 私を消してくれ 砕いてすり潰して溶かして 固めてもう一度砕いてくれないか 火をつけてくれ 切り刻んでくれ 逆さまにして血を抜き取って カラカラになった私を嘲笑ってくれ できないなら どうしたらあなたに愛されるのかを 教…