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当番ノート 第4期
前回、エドワード・ウェストンの話をしました。彼の日記を読むとウェストンの写真を最初に買い始めたのはロサンゼルスのリトルトーキョーに暮らしている日本人達だったということが綴られています。 今から90年前、絵画主義的な作風で若くして高い評価を得ていたウェストンは、その地位を捨て、メキシコの前衛芸術家達との交流の中から新しい写真表現のあり方についての実験の最中で、当時彼の新作を受け入れる様な環境はほとん…
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当番ノート 第4期
昔から、ジムなんかによくあるランニングマシンに乗って走ってる人、あれバカなんじゃないかな?と思っていたんだけど(だって同じ場所をハムスターみたいに走り続けてる姿ってマヌケにしか見えない)、最近、僕自身がランニングマシンにはまり出した!あれはおもしろい。実際やってみて思ったんだけど、あれって引きこもりとジョギングの融合だよな。引きこもりとジョギングという相反する二つのジャスティスの幸せな結婚ですよ。…
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当番ノート 第4期
世間では、夏は終わったとされている。 私は今年の夏がいつから始まって、いつ終わりを告げたのか全く検討もつかない。 私は、私以外の誰もが好意を持っていないであろう 真っ赤な口紅を塗りたくる。 旦那の顔も 息子達の顔も 近隣の住人達の顔も 別にどうだっていい。気にしていない。 私は若い頃、この真っ赤な口紅がとても似合うと褒められていた。 年老いた今、自分自身で不似合いを認めるわけにはいかないの…
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当番ノート 第4期
三回目に書いた記事、「アンテヴァシン/境界に住む者」で書いた 家族が冒された癌のことについて最初にもう少し書いておこうかなと 書き始めました。 癌になった本人の調子がいいときに、誰かが見舞いにきてくれて 果物をぱくぱくと食べてるその最中に突然大量の吐血をした 一度は私の親友の前でそれが起こった それから足の神経をつかさどる脊髄に癌が転移をした後は歩けなくなってしまって 本人が家族に迷惑をま…
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当番ノート 第4期
これが9回目、最後の当番ノート。 涙もろい。これが私。 私は映画やテレビでとんでもなく涙もろい。 映画やテレビだけではない。本も。日常も。 例えば本編が始まる前の映画のコマーシャルでさえ、そのシチュエーションから涙を流す事もしばしば。これは子供の頃からで、頭で考える前に涙が出ていると言った方が正しい。なので友達にも「なんで泣いてるのー?!」と言われても、その瞬間どうして涙したのか、うまく説明する事…
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当番ノート 第4期
「勧善懲悪ってさあ。みんな好きなわけじゃない。でもさあ、博之さん。あんたの場合、完全超悪だよ。今これ漢字に直すと全然感じが違ってくるんだけど、そのフィーリング感じてくれてる?」 「キ、キキさん!いつからココに!!いるかな??ココに!!」 「いるかいらないかで言ったら、キキさんはいるよ。でもオンバの写真は今はいらない。分かるよな、博之。」 「ええい。もうこうなった以上は仕方あるまい。かくなるうえはー…
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当番ノート 第4期
直面する壁に 三つの梯子が付いて在り 例えば私は 真中ひとつに位置をとり 上の盤石な 鉄のひとつに触れて錆を手に先に行くのか 下の拉げた 鉄のひとつに触れて錆付いた私を歩くのか 僕はまず、自分の手帳を開けてみた。八月と九月のページを。 「白いページの余白に」を書いた時、相方のお父さんの四十九日だった。 「一切を無言で。」を書いた時、海に野営に出掛けていた。嬉しいのに、で…
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当番ノート 第4期
1988年とか89年頃のことです。写真術誕生150年の節目という時期でもあって、東京では大きな写真展がたくさん開催されていました。 記憶に残っているのは、銀座の松屋デパートで、エリオット・アーウィット、ブラッサイ、アジェ、あとは池袋のセゾン美術館でも大きな写真の企画展をやっていました。プランタン銀座で開催された日大芸術学部と東京工芸大学の所蔵するオリジナルプリントが一同に展示される、という企画展も…
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当番ノート 第4期
す、すいません…!生きてます! 締め切りを大幅に遅れてしまった。。。 今までこのアパートメントの連載で、とばした人っているのかな…? 危うく、、、やってしまう所でした。 というわけで、しばらく関西にいたんですが、昨夜遅くに東京に帰ってきて、いま浅草六区のマクドナルドにいます。 ようやくWi-Fiがつながった〜! 今日はなんで浅草にいるかっていうと、cakesという所で書いた「東北」(https:/…
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当番ノート 第4期
透明な灰皿は、 短くて くしゃっとしたタバコでいっぱいになっている。 この部屋には二人のタバコの匂いが染み付いているんだろうけど、 私たちしか入ることがないので、そんなことはどうでもよかった。 私はあなたよりも先に目覚めていて、 ベッドの上でぼんやりと天井を眺めたりしている。 なんとなく顔が見たくなった。 寝息をたてているあなたの顔を見ていたら、 あなたは私の気配を…
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当番ノート 第4期
私の勘違いで今日が私の担当分最終記事と思い 最後くらい日記的に自分の好きな事に関してばばばと書こうと書いてしまったら、あと一回ありました。 でも書いてしまったものなので公開します 長文なので 読みづらくてごめんなさい そして写真も携帯やかなり古いコンデジでとったものなどばらばらで 見づらかったらまたまたごめんなさい * 写真などという一人でできる表現をやっ…
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当番ノート 第4期
午後、ブラジルのサンパウロからフランス、マルセイユに帰ってきた。 サンパウロでは夏日に恵まれた。 それまでのブエノスアイレス、ポルトアレグレの春は晴れの日が少なく、気温もぐぐぐと低かった。 初春にもかかわらずサンパウロは35度まであった。 なんて巨大な街なんだ。 ぱっと街を見上げると日本みたい。高層の建物が似ているからか。 一瞬どこにいるのかわからなくなる。 3年前に来た時もそうだった。オフィス街…
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当番ノート 第4期
「で、ネジー。ニノが向かった先は本当にこの島であってるのか?」 「おそらく。フェリーにこのような紙切れが落ちていました。最初は子どものイタズラかと思いましたが。」 森田は紙切れをじっと見つめる。そこにはこう書いてある。 アイコー印刷 営業部長 二ノ宮敬二 43歳 「森田刑事。しかしですよ。持ち出しの現行犯で逃亡している男が、こんなものを」 「ちょっと待ってくれ!」 「刑事!」 森田は勢いよくフェリ…
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当番ノート 第4期
指で掘る|干上がり|瓦石|あなたは寝なければならない|私を裏切るかもしれません|輪転|今朝は風を感じること|可能な伝送|岩礁|九月|私が見ていたのは|泡沫|だれにでもわかることばをつかいなさい|眩暈|そこにしゃがみ込む|磁場|思考回路|混濁|忘却|置換|すべての拙さ|咽の渇き|相関するのは|微細な|裸眼で滲む|点景|線と面と|無縫|分割する必要はありません|鳥の飛跡は虚空|海猫の亡骸に滲む赤い…
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当番ノート 第4期
ルーニィ今年最後のギャラリー企画として愛知県在住の写真家、上野龍展を開催しました。元・即興演奏家の上野さんにちなみ、写真家自身のプロデュースによって、ホンモノの音楽家による演奏会を開催しました。4度開催されたうちの初回は、アルトサックス奏者の坂田明さんでした。 「向かうところ客なし」などとジョークを交えつつも、大きなプロジェクト以外にも、ぼくたちのようなとても小規模な空間でも頻繁に演奏をされていま…
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当番ノート 第4期
いま東京を離れ、関西に来ています。 それで自分のパソコンが使えないから、ここにログインするのにもわざわざグーグルのトップページから 「アパートメント」て入れて辿り着くんだけど、「アパ」て入れただけで予測変換の一番上に「アパートメント」が来るんだから やっぱここはすごいな、ていう話じゃなく、「アパ」て入れた時の予測変換の一番上は「アパホテル」だった。 それで少しの間アパホテルのホームページを見てたん…
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当番ノート 第4期
緑色は燃えるゴミで オレンジ色が燃えないゴミ もう何年もこの街に住んでいるから、 そんなことは分かっているつもりなんだけど オレンジ色は火の色みたいだっていうふうに思ってしまって 緑色のビニール袋に燃えるゴミを入れるってことに どうしても馴染まない 蒸し暑い昼間の住宅街を一人で歩いていたら、 どの家の玄関先にも緑色の袋が置いてあって 私の進んでいる道路脇に転々とそれが…
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当番ノート 第4期
まだ真夏の休日に母と偶然に、本当に偶然にばったりと新宿のドトールで会ってしまい その流れで一日デートした 何回も同じ話を繰り返すし、わたしの知りもしない、母が今親しくしている友人や ずっと過去の同級生の名前をあたかも私まで知っている人のように固有名詞をだして話してくるし 亡き父の話になれば、写真を取り出してあたかもそこにまだ父がいるような感じで 涙ぐむので わたしはというと父に関しては やはり涙…
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当番ノート 第4期
旅は続く。 ブエノスアイレスの次はブラジル、ポルトアレグレにやってきた。 南ブラジル最大の都市で大きな港町である。都市名は「陽気な港町」という意味。 18世紀中ごろにポルトガル人が移住したのが起源でのちにヨーロッパからの移民を中心に発展。 公用語はポルトガル語。ありがとうはオブリガーダ。 深夜でも鳥たちが歌っている。雨の中でも。 公園の緑がとても美しい。やはりアマゾンがある国なんだな。 到着した日…
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当番ノート 第4期
「確かに結婚出来ればいいかなあって思ってたわ。でもそれは学生時代の話。なんかあまりにも呆気なくて、さっきの結婚式。」 「それはあっこが合同結婚式に慣れていないからだよ。渋沢ちゃん?だっけ。も、自分に未来について考える貴重な時間になったんじゃないかな。だって彼女、その前に離婚式にも参列しているわけだろ。」 武智にとっては優雅なひとときだった。 「家庭か。ちょうどよい二人の距離感だ。これが商店街に机を…
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当番ノート 第4期
むこうまでぎつしりと すいれんが さいていた わたしはあなたのことを おもひだす さいているいちめんの わたしのほうの てまえを ひとつ たひせつなことは ひとすじ つながつている いとのように たれにも ふさわしくあるように きょくせん しながら つながって いとのようだから あまりたれにもきつかれないように それでもしつかりと つながつていて ふたしか とか たりない とか かんじ…
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当番ノート 第4期
ぼくが初めて写真展をやったのは、1991年の夏、19歳の頃で、東京・有楽町にあった三菱フォトギャラリーと、大阪西天満のギャラリークオーレというところです。大学の同級生だった小野里昌哉君と坂根広隆君の3人でスペースをシェアして、それぞれ20枚くらいのプリントを並べました。 応援してくれたのは、通っていた大学の当時非常勤講師だった田中仁先生で、今は別の大学で教鞭をとられていますが、未だにおつきあいをさ…
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当番ノート 第4期
締め切りというのが嫌いなので、毎週毎週土曜日にここを更新しなければ、と考えるのが憂鬱なのだけど、いざそういった憂鬱も今日を入れてあと3回しかないのか、と考えるとさみしい気持ちにもなってくる。 そう思ってふとカレンダーを見てみると、今月はよりによって土曜日が5回あるのか…。 という事はまだあと4回もここで日記を書く事になるので、まあたいしてさみしくもなくなり、そのぶんうっとおしさが勝ってきた。 外で…
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当番ノート 第4期
夢の中で爪切りをなくした 別に大切にしていたわけでもないし、 大切な人からの贈り物でもなくて。 それなのに夢の中の私はたいそう不安がって 身振りなんか考えずに落ち込んでいた 喉が乾いて目が覚めた 夢を引きずって不安定な私は また目を閉じる、真夜中に。 真っ暗になった私だけの世界で、 主人公もヒロインもぜんぶぜんぶ私の世界で。考える 夜が嫌いだ 毎日必ず夜がや…
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当番ノート 第4期
約束って なんだろう いままで 果たされない約束も 思いがけない形で果たされてしまった約束もあった ある種の約束っていうのは希望にしか過ぎないてことも ”約束”って形になった時点でそれだけで満足であることも 約束には時効だってあるってことくらい知ってる きっと私だって 置き去りにしてしまってる約束も山ほど けれども わたしは小さなひとつの約束が果たされるのを どこかで待っている気がする &…
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当番ノート 第4期
いま私はアルゼンチンはブエノスアイレスにいる。 南米には3年前にブラジルに来たことがあったがアルゼンチンは初めてだ。 今回はアルゼンチンからブラジルまで5都市のツアー。 南米への旅の準備は冬服と夏服。 朝4時集合。なので1時間だけ寝た。マルセイユからアムステルダムまで2時間。 アムステルダムからブエノスアイレスまで14時間。 到着するなりバスに乗って4時間でやっとやっとロザリオという街に着いた。 …
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当番ノート 第4期
「こう見えてもあたし大学で歴史学を専攻していたんだから。選考にモレスキンのノートを抱えてそのままトイレに駆け込んじゃった。トイレは駆け込み寺じゃないのにね。いけね、あたしあの時何やってたんだろ。若気の至りかな?そして今は薄毛のたたりね。」 「ごめんね、あっこ。この島で離婚式が御法度なんて知らなかったのよ。ついケニーさんの口車にのせられて、、、」 渋沢は自分が一体どこに閉じ込められているのかすら分か…
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当番ノート 第4期
札幌には「テレビ塔」という、地方にある東京タワー、それよりもう少し思い入れの足りないような、それでいて札幌の街の中で起点的場所にこの昭和の電波の鉄塔がある。時代の人々の気まぐれや、季節の夜な夜なに光に色を染められたりしながら、やはりでもあそこに行ったことがあるとか、ないとか、近くまではとか、地下までは当然ね、などと言われながら、昔の面影の中に忘れ過ごされて行った思い出に耐え忍ぶようにとつり、大通り…
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当番ノート 第4期
ちょっと前に、近所のライブハウスで服田洋一郎のライブがあると聞いて、その日は割と夜遅くまで作業系の仕事があったのですが、作業を途中で中断して久しぶりに演奏を聴きに行ってきました。この読者の99%の方は誰の事だかさっぱり分からん、とおっしゃると思いますけど、日本屈指のブルースギタリストで、レイジーな歌唱と、時にパンクに或る時にはジャジーな味付けのまさにワンアンドオンリーなギタープレイで40年以上も観…
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当番ノート 第4期
前回の更新の最後に「かんたんな更新でごめん…」とか書いてたんだけど、よくよく考えたら難しい更新ってなんなんだよ、とは思う。 簡単と難しいの違いは、気合いを入れたか入れてないか、くらいかな。 と、言っても、あまり気合いを入れてムズカシイ更新を目指しても何も書けなくなるから、かんたんな更新くらいで丁度いいのだろう。 そりゃそうと、アパートメントって、どこで改行入れたらいいのかわからない。 僕は基本的に…
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当番ノート 第4期
ロボットになった夢をみた。 私は私型のロボットになって、あの人の家の家事をしていた。 ロボットの私はとても賢くて、 あの人をいとも簡単に喜ばせる。 あの人はロボットの私に、 いちいち ありがとうと言ってくれるわけじゃないけれど ロボットの私に向ける視線には信頼感があって、 ロボットの私に向ける視線には安心感があって、 ロボットの私はとても満足していた。 私は有頂天になって、 とにかくひたす…
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当番ノート 第4期
太陽が昇ることもなく いつでも夜であるその森で、 その樹はいつもひとりぼっちでした その樹以外の周りの木々たちはすぐ近くに友達がいて おしゃべりができるから朝が来ずとも 雪が降り続けようともさびしいと思うことはありませんでした けれども、その樹にはそばに話かける仲間もおらず 暗い闇のなかでいつも闇の天井から降ってくる雪を 毎日ひとり見つめていました その樹のことを遠く遠くから見守っていた星たち…
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当番ノート 第4期
今回アパートメントに投稿するにあたり初めて編集作業を学んだ。 踊って、カメラで撮影して、パソコンにアップして編集作業。 おかげさまでどれだけ編集作業がハードであるか、マニアックであるか、 テレビや映画のようなハイテクな世界を作り上げている人々に改めて尊敬の気持ち。 はまったら中々でれないおもしろさが魅力だ。 あっという間に時間が過ぎていく。難しい。 気づけば眠る事も惜しいくらい没頭。 私の仕事は表…
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当番ノート 第4期
「あなたが愛するものは、あなたを泣かせもするのよ!」 渋沢は足の甲に止まった足長蜂を見つめながらケニーに言った。 「まあ、渋沢ちゃん。君は家出をしてきわけだ。卒業をすることもなしに。 でも考えてみなよ。君、卒業をホントにしてしまったら次の入学どうするの? 受け入れ先も決まってないのに自動的に卒業って、チドリー・スコットの映画じゃないんだから。」 ケニーは自分の足の裏の表部分を引っ張り、渋沢の頬をう…
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当番ノート 第4期
相方。と、彼女は僕のことをいう。人様の前で私のことを紹介する時などは「相方の蒔山です」と、僕のことをいう。結婚や籍を入れる選択肢を互いに必要としていないのだから、旦那でもなし、夫でもなし、配偶の人でもあるまいし、しかしまた彼氏でもなければ、ダーリンでもない。僕がそもそもそんな柄ではない。そういったことで、きっと相方と、こういうことになったのだと思う。 「それでは、君と僕は、芸で…
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当番ノート 第4期
今の仕事場である四谷三丁目のすぐ近くには神宮外苑があります。今ある美術大学での出講で毎日外苑に通っています。3年前から毎年8月の数日間朝から日没までの殆どをこの場所で過ごしているのですが、ぼくはこの場所が大変気に入っています。 理由は、外苑という場所が東京のど真ん中でありながら、お金を全く使わなくても普通に充実した一日を過ごす事が出来る場所だからです。 外苑の周辺には、タクシーで1メーターくらいの…
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当番ノート 第4期
やっとWi-Fiつながった〜…。締め切りを一時間(?)遅れてしまった! いま山形県の酒田に来ています。 全回ここに来た時はロクに景色を見る事も出来なかったので、日程に余裕のある今回は土門拳先生に挨拶するべく 土門拳記念館に行くぞ、と意気込んでいたんだけど、よくよく考えたら前回来たのは禁酒中、今回は禁酒開けという事で、 ここに来てからずっと酒、酒、酒、酒ばっか飲んでいる! 昨日は自転車でぶらぶらして…
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当番ノート 第4期
昨日さ、 ん? 先が細くなってる花瓶があってさ。 うん。 ちょうどなんだろ、悪い博士が緑色の液体混ぜてすごい細菌兵器みたいのを作る時に使うようなやつね。 んー。うん。 写メあるかな? ないか。どうしよ。 まあ、なんとなくわかるよ。 ほんと分かってる? 伝わってるかね? わかるって。上が細くて、下が丸く膨らんでるやつでしょ? そうそう、それにね水を入れていくのね。 うん。 そしたらさ……………
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当番ノート 第4期
ここアパートメントの一週間に一度やってくる締切に 一週間の間に そんなに劇的な出来事なんてないわぁと 学生時代に授業中に回しあった手紙やら 過去の手帳たちが入ってる、見るのも恥ずかしいような開かずの箱の封印を解いた そこにすっかり忘れていたものがはいってた それは簡易家計簿のようなもの。 上京組であった私は大学時代、家賃と高熱費は親に送ってもらっていた 生活費と遊び代はバイト代で稼いで、という経…
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当番ノート 第4期
今日はあまりにも暑い日曜日だったので海に行った。 子供の頃から海に縁がなかった。 両親がそんなに海に行かなかったせいだろう。 自宅から海までは電車か車。結構時間がかかるし、行くならば一大イベントだった。 あげくの果てに、中学校、高校と水泳の授業がなかったのでどうやって泳ぐのかも忘れていった。 日本では大きなプール施設があり、流れるプールだったりウォータースライダーといったような アトラクション感覚…
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当番ノート 第4期
「ええっ!グルメ三昧ツアー??そんなのわざわざこの島でする必要ないじゃない。 東京のデパ地下ででもやってるんだし。どうしちゃったのケリーちゃん。最近疲れが溜まってるんじゃない? グルメ三昧ツアーにでも行ってきてリフレッシュしてきなさいよ。ええっ!グルメ三昧ツアー?? ちょっとケリー。それって島でやってみたら面白いじゃない!!やろうよ。」 ケリーは疲れていた。マッサージチェアに100円追加しようにも…
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当番ノート 第4期
栗色の斑毛 猛禽ひとつ 木陰の水場の手摺に。微動だにせず おまえが 凝視しているのは 開かれた斜面に広がる 無数の花。 無言の 姿の 役割を果たすために。風の中から 現れ。欲して 鳴きもせず咽を嗄らし 気付かない 苛立ちもせず。 羅針を持たない放縦と 尾の方舵の器用は 羽搏きせずに飛ぶ狡黠を好んだ。 その唇は鉤の喙で おまえの寝所は班渓の滝を見下ろす岩の 縦割れに隆起した 崩れない上に…
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当番ノート 第4期
今年から東京以外の地方都市に直接出かけていって出張展示する「出張ルーニィ 写真へようこそ!」という企画を立上げまして、1月に岡山市に、5月に名古屋市へ出かけました。今東京には80を越える写真ギャラリーが存在し、とりわけぼくのいる新宿~四谷地区は25軒以上も集積する写真の町になっています。しかし、日頃から写真展巡りが楽しめる地域は東京の他には、大阪と京都くらいしかなく、その他の地域には、ほとんど存在…
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当番ノート 第4期
最近、男は全員座って小便する方が世界が平和になるんじゃないかと思っている。 なんでかというと、男が従来のように立って小便する限り、便器前部分が常にこぼれた小便、ハネた小便で汚れるからだ。 女は知らないだろうけど、だいたいの公衆トイレの小便器には「殿方、一歩前進」的な貼り紙がしてあって、それでもまあ ほとんどの男は馬鹿なのでそんなお願いを聞き入れる事なく、自分の好きな位置(ラクな位置)から小便をする…
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当番ノート 第4期
こんな時間に目があいた理由は、 初めは全然わからないんだけど、 首が汗でじっとりと濡れているのを確認したら、 ああ暑苦しくて目が覚めたんだとわかった。 ひとりきりの真夜中に Facebookのニュースフィードってとこには、 お盆休みで出かけるみんなの楽しそうな写真がアップされている。 私にはお盆なんて関係なくて、 夏休みなんて関係なくて、 明日の朝も、いつもより…
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当番ノート 第4期
病院という場所で病人としてではなく、 看護する側としてそこで生活をする日々を体験した事があるでしょうか 私には過去、病院で実際に寝泊まりをし、 日中仕事の時間はそこから出勤していたという日々があった 自分が検診などでたまに病院へ行く分には あのエタノール臭や(たとえ光がたくさん入る病院であっても)なんとなく 薄暗く感じる空間、それから放射能注意と無機質に冷たく書かれた文字の扉などに 早くここから…
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当番ノート 第4期
先日、マルセイユで公開中の映画を見に行った。 その作品の中である詩がでてきた。 「ことばなんか覚えるんじゃなかった」 この言葉がずっと頭の中をぐるぐるとまわっている。 フランスはマルセイユで踊れる事になって来仏した時はほとんどフランス語を知らなかった。 簡単なあいさつでさえ口にするときは緊張して声が震える。 単語も英語と違う。発音も違う。そんな中で私は孤独を感じた。 フランス人に笑って言われた。 …
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当番ノート 第4期
「で、ケニーさん。さっきから歯ごたえがコリッコリッとしてるんですけれども、 これってホントにベーコンオムレツバーガーなんですか?そもそもバーガー無いじゃないですか!」 「健次郎や。食べる時に目をつむって食べる習慣はほめたもんじゃああるが、目を 閉じておいでよ。さあおいでおいで。鬼さん、こちら。手の鳴る方へ!!」 私は(私とは健次郎のコトです)静かに目を開ける。 確かこの島には謎の甘納豆が発見されて…
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当番ノート 第4期
その月は心が渇いて仕方がなかった 霧雨が降る時が幾日かあり時折に上を向いて口を開けてみる 空気の中に滲んでいる私の心の中にはない潤いを それを胸に吸い込むと少しは きっと救われるのかも知れないと勝手をしてみたら なおさら渇いていって仕舞う 潤すものはどうやら水分のように滞留し漂い 上から下に或いはその逆に行ったり来りをするような不確定の先生の様でもあるが 決定的に必要とされる要素でもな…
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当番ノート 第4期
ぼくの本籍地は東京都豊島区で、池袋駅から北へ少し進んだあたりらしい、ということは、自分の運転免許証で知っていました。ぼくの父親の実家は巣鴨・とげ抜き地蔵の近くで、池袋は隣の町ですから昔その辺に住んでいたのかもしれないのですが、その理由については祖父母も父親も亡くなってしまっていて、ついに聞けずじまいでした。本籍の場所なんか行った事がなくたって日常生活に全く支障はなく、だからこそ、40歳を前にするま…
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当番ノート 第4期
昔、平民新聞を有料に出来ないだろうか、と妄想した事がある。 それは自分の日記は「金を出すに値する物である」と高らかに宣言する意味では全くなく、単に今も昔も生活が苦しいので、日記を読んでいる人からカンパしてもらえないだろうか、と思ったからだ。何年か前に書いたんだけど、ストリートミュージシャンや大道芸人が自分の前にひっくり返した帽子を置く事に近い。それをブログで出来ないだろうか、と。 僕の理想は平民新…
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当番ノート 第4期
いま私の頭の上には車が走っていて、 たくさんの人が歩いている 顔をあげれば 上の人達の足の臭いがしてくるようだよ。 丸ノ内線、銀座駅を降りて。 この空調の効いた地下道はどこまでも続いているような気もするし、 あっさり ぷっつりと終わりがくる気もする。 私は髪の毛をポニーテールにして、 格好悪いスーツを着て歩く。 仕事が決まらないことより何より、 こんな幸の薄い格好で歩き回っ…
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当番ノート 第4期
書くことは怖い 言葉はそのもの一つにいちいち意味があってそれが人の意識を規定してしまうから。 どう書いても受け取め方は読み手の自由だと頭では わかっているつもりでも、それでも私には怖い でもこうして書いて、残す場所を与えていただいて わたしはまた書くことになった たとえば あの人が わたしのこのエントリーを読んで にこにこしながら私の言葉を好きだといってくれたとしても 次にわたしとまた会った…
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当番ノート 第4期
朝、あの人は目を覚ます。 いつものように一日が始まる。 あの人は一緒にいるその人と一緒に旅した思い出の旅行の記憶が全くない。 確かに行ったあの場所。 たくさんの写真の中で、あの人はその人と笑顔でいる。 まばゆいほどの太陽と共に。 他にもある。失った記憶。 あの人の歴史の一部をぽっかりと。 まちがいなくあの時間はあの人と共にあった。 不思議なものでそれは地震によってできた地割れのように あの人にとっ…
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当番ノート 第4期
「ドキュん!ゴキュん!!胸の奥〜♫」 「おいおい、兄ちゃん。船の臨時便がなかなか来ないからってDAPANPをそんなにバナナを握り潰しながら 熱唱されたら、船を待ってる他のお客さんに迷惑だよ。それに何より、ドキュん!ゴキュん!じゃなくて、 ドキュん!ドキュん!じゃろうに。」 「ドキュん!をゴキュん!に歌い変えているのにはれっきとした理由があるんです。 ゴ(5)キュ(9)ん。私は59歳までに、島で恋と…
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当番ノート 第4期
八月の夏の勢いを過ぎれば予感がある どんな人の中にも冬への覚悟がある 北のもう少し北の内陸に海を知らない盆地 二本の川に挟まれその合流を抱く街 そういう土地は 寒さを逃がそうとしない 雪の影は青く 昇華した氷晶が煌めき 忽然太陽柱が現れては消え 除雪車に削り取られた雪の道は 朝の一瞬鈍く虹色に反射を起こす オーホーツク沿岸が樺太から流氷を招き入れる二月の頃 これでもかと凍れ上がる 北緯…
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当番ノート 第4期
最近ぼくの頭の中には、「出来るまでやる」ということばが常に浮かんでいます。 2011年に企画した杵島隆写真展「日本の四季」に展示したプリントは、1990年頃制作した和紙仕立てと呼ばれる大変珍しいプリントでした。経師の職人さんがカラー印画紙の乳剤の部分だけを慎重に剥がし、厚手の和紙に丁寧に仕立て直したものです。日本の職人さんの技術は、例えば新聞紙を包丁で二枚にすることが出来る程だそうで、水墨画などは…
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当番ノート 第4期
七月末。野馬追という、祭りというか神事を追いかけて、三日間、福島県南相馬市の原町区や小高区にいた。 東京に帰るとインターネットがつながらなくなっていた。 このまま更新されないアパートメントというのも気持ちが良い気がする。 野馬追行脚の三日間で出会った人たち、見た風景について、帰ってきた今も色々と考えることが多い。 南相馬の銭湯で、湯上がりのおばはんに「じゃ、来年も祭りで会いましょう」と笑って挨拶し…
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当番ノート 第4期
「じゃあ一言だけ」と遠慮がちに言ったババアが、 さっきから永遠と全校生徒の前で、なんだかわけのわからない話をしている。 蝉のミーンミーンの方が、まだ言いたいことまとまっている気がするよ。 夏の朝、校庭。 私は何時間か前まで一緒に居たあの人のことばかり考えていて、 まばたきするのも忘れてしまうくらいに忙しい。 朝方、あの人を残して 一人こっそり家に帰って着替えをして 高校生の姿になっ…
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当番ノート 第4期
ある公園へ撮影をしに行った日の出来事。 その公園には噴水があって、その周りでは鴨の親子や鳩達が 日光浴や水浴びをしていた 噴水のそばに1羽、けがをしているのか人間が近くにいても飛び立つ事のできない鳩がいた 近くには鳥達に餌をあげないでという趣旨の看板が立てられていたけれど 私はポッケの中に入れていたクッキーをその子にあげたい気持になってしまった しかし、私が一定以上の距離に近寄ってはよたよたの…
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当番ノート 第4期
夏休みが終わり飛行機で乗り継ぎの為のミュンヘン空港についた所。 相変わらず東京ーミュンヘン間、長い11時間半ほどにおよぶ機内は もう慣れてはきたものの、着いてみると一体自分は何をしてこんなにも狭いスペースで 時間が過ぎていったのかと思う。 そして毎回のように感じる事があって それは飛行機は本当に飛んでいるのか?ということ。 実感がない。 それはどこか、例えば映画の為のセットだったり アミューズメン…
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当番ノート 第4期
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当番ノート 第4期
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