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当番ノート 第7期
2ヶ月にわたり、自分の成り立ちやAsian Photo Artsがピックアップした4人の写真家を紹介してきました(2週書けませんでしたが…)。最後は私自身の思想や理想について ”Symbiosis on the Circle”, ”INSIDE OF INSIDE”をテーマに書きました。 Shota Ogino Solo Exhibition@int…
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当番ノート 第7期
7日前 お天気がよくて暖かい一日だった。上着は必要なかった。薔薇の花を一本もらう。とても赤い。 6日前 午後10時からのニュース。中国の黄砂について。以前は草や花があったところが砂漠になった。砂漠は年々増えているとか。人にできること。樹を植えること。何年、何十年、何百年かかるかわからないことを人はやっていく。 下北沢の開かずの踏切。電車は地下に潜り、1時間近く待たされた踏切はなくなった。その1時間…
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当番ノート 第7期
いやいや。 どうもありがとうございました。 木曜日というお役目も、この回で終わりでござんす。 さようなら、みなさん。 最後にのんびり「しゃもと」の、朝の生活を紹介して終わりにしたいと存じまする。 朝。7時に「お母さん、お腹すいたぁ〜」という小さい男のひそひそ声で目が覚める。しかし、「そうか、お腹がすいたのかぁ」と言ってはみるものの起きれず。トド状態。 しばらくすると、小さい男の声が大きくなってくる…
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当番ノート 第7期
写真というのは表面しか写らない。 例えば人を撮ったとして、写るのはその人の表面であって、間違ってもその人の「内面」的な何かが写るとか、そういう傲慢なことを思ってはいけない。 大体人の内面とか人間性とか、そんな複雑なものが写真一枚に表現できるなんて安直に考えている人は、結局その人の「内面」的なものを侮っているのである。逆の立場に立ってみたら良い。自分が人に撮られるとする。ちゃんとそれがそこそこ僕っぽ…
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当番ノート 第7期
. 日日すうすうとあふれてはこぼれ落ちる ことばのかずかず ふつふつと現れてははじけて散っていく つぶやきのひびき 生まれてはいつのまにか消えていく 忘れてしまう まぼろしだったかのように それが 生きているっていうことなのかもしれないけれど . . それは違うとおもう やっぱりそれはちがうとおもう でもきっとわからない じゃあそれは それで正しかったっていうこと それが ただしかった っ…
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当番ノート 第7期
人生とは、長い夢のようなもの。 大切なものが見つかったら きっと夢は醒める。 大切なものがなんなのか それを知るために、こうして生きているわけだけど 本当は・・・それがなんなのかを もしかしたらちょっとだけ、気がついているのかもしれない。 陽が昇り、日は沈む。 月は昇り、夜は明ける。 何事もなかったかのように、毎日は繰り返されていきます。 まだまだ夢は続くので 醒めるまでの時間を、風に吹かれていら…
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当番ノート 第7期
諸事情により2週間コラムをお休みしてしまい申しわけありませんでした。アップ再開します! イガラシさんとのインタビューの続きですが、今回のトピックは個人的に特別フィーチャーしたい大切なトピックだったので、あえて分けました。このトピックを読んだあと、彼の作品を見直せば見え方が変わります。 作品からにじみ出るイガラシさんのポジティブさの理由は、記憶や死と向き合う彼の日常にありました。 ※前回のインタビュ…
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当番ノート 第7期
桜の小さな花がちらちらと咲き始めました。花を数えるように、母のことを書きました。 ********** 母は料理の上手な人で、私は母の茶碗蒸しが大好きです。とろとろの卵の中に、茹でたほうれん草、炒った鶏肉、かまぼこ、椎茸、銀杏がたっぷり入っている。卵を5つくらい割った大きなボウルに菜箸を差し入れると雲を作るような上昇気流が起こります。かと思うと、すっと下降して空気をなだめる。母の手は見てなくて、菜…
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当番ノート 第7期
こんにちは。 ここ数ヶ月、お家ダンサーとして活躍中の私ですが、先週アントワープのギャラリーで踊る機会を頂きました。 今井祝雄さんの作品”on the table”という作品に出させて頂いたのです。 無事に終わり、帰宅。 お家ダンサー用のパジャマに着替えていた時、立派な太ももに立派な大きい痣を発見。 うひひ。 またしてもできてしまったか、痣殿。 私はすぐに痣を作るダンサーであ…
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当番ノート 第7期
■ 皮膜一枚の内と外。 自分と世界を隔てるもののあやふやさ。 でも人はこの皮の中で生きて死んでいく。 物理的な意味でも、陳腐を承知で比喩的な意味でも、自分と世界の関わりはこの皮に生じる摩擦係数の物語である。 その摩擦を、親和を、振動を、温度変化を、痛覚を、愉楽を、違和感を。 それが頑健であったり、逆に儚く溶け失せたりするさまを。 記録していく。 ■ 言語でしか僕らはものを考えることが出来ず、言語に…
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当番ノート 第7期
「ミモザ 」 鉛筆・紙 / 850mm×1800mm . . 。 . 恍惚の色は、身体の表面、ほんの薄い範囲を短いサイクルで輝いては消えてしまう。 何とかそのままを記憶に留めたい。 繰り返し求める以外に方法はないのかな。 . . . . . . ひどく居心地の悪い夢を見た。 食べ散らかした刺々しいパン屑を手のひらに押し付けるような。 半分濡れた床に靴下を脱がずに爪先立っているような。 . ピアノ…
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当番ノート 第7期
彼女との出逢いは、「写真」。 同じ時期に写真を始めて、空と水が好きで。 ある写真サイトで、彼女がわたしを見つけてくれて そこからお付き合いが始まりました。 写真を撮り始めて、もうすぐ5年。 夏が来たら、彼女と出逢って5年の時が満ちます。 生まれた町の琵琶湖の針穴。 この写真が撮れた時、真っ先に彼女の顔が浮かんで このうちの一枚を額装して、無理やり手渡したのが昨年の春。 今年に入って、彼女から手紙…
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当番ノート 第7期
父のことを書こうと思ったのですが、気持ちの整理がつかないままで1週間が過ぎてしまいました。昨年、島根年刊詩集に提出する予定で、秋に書いた散文を置かせてください。 「高い空の下に椅子を置く」の、梅の木が今満開です。 ******* 朝の空気が冷たい炎を孕んでやってくる季節。晩秋には早いが、山々は日毎に色を変え賑やかな秋の装いになってくる。庭の木々も伸び尽くし、我が家はすっかり緑に埋まった。 冬がやっ…
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当番ノート 第7期
木曜日のしゃもとです。 こんにちは。 皆さん、お元気ですか? ベルギーは、粉雪が降り積もりました。 寒いので今日一日、期間限定で引きこもってみました。 何もなく、無事に今日を迎えられて終われることに感謝したい。 嬉しいことも、悲しいこともずっと忘れないで生きていこう。 ずっと覚えていよう。
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当番ノート 第7期
お釈迦様は人間の苦しみをを生老病死の四つに分類したというが、それって結局四つでなくても「死」ひとつに集約できる話じゃないかと思う。要するに、死とは何かがよくわからない、というところにすべて帰結するんじゃないかと思うのだ。 なにしろ他人の死は経験できても、誰しも自分の死を死そのものとして「体験」することができない。臨死体験みたいな話も流通しているけれど、結局戻ってきているわけだからそれは死ではない。…
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当番ノート 第7期
希う 【こいねが・う こひねがふ】 (動ワ五 〔ハ四〕) — こいねがう、という気持ちは つかの間満たされるにすぎないひとりよがりな欲求などではなくて、 もっともっと いたいけで 純粋な 想い 祈り 大切なひとや もの ゆめや きもち 幾年月を乗り越えて いまここに在る もとめてやまない なにものにも変えがたいものたち ただ ただ その存在を しあわせを 願う ささやかではあるけれど …
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当番ノート 第7期
日本には「借景」という素敵な言葉があるの。 だから窓を開けたら琵琶湖っていう風景は、裏庭と呼んでいいのよ。 一言一句、同じではなかったかもしれないけれど そう教えてくださった方がおられて。 この日から琵琶湖は、我が家の裏庭になりました。 陽が昇れば、部屋がオレンジに染まる部屋。 寝ぼけた頭でそそくさと着替えて、針穴を持って外に出ます。 西側は夜明けが琵琶湖側から昇るので 朝は針穴日和です。 この街…
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当番ノート 第7期
いや、もう時効だったりするのかもと思って書いてしまおうと思っているのですが 言い訳がましく、きちんと連絡する気があったので、むしろ、お礼を伝えたいです。 黙って見逃してくださってほんとうにありがとうございます。 それはひとつの下駄箱でした。 コスモスが取り壊されるって電話があったのは、引っ越して一ヶ月も経たないころでした。 みんなが暮らしてたコスモス、かっちゃんと出会ったコスモス、あの頃の私たち全…
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当番ノート 第7期
皆さん、こんにちは。 木曜日のしゃもとです。 現在ニューヨークで「腹筋生活」継続中。 ニューヨークは大都会です。 私の友人あっちゃんとその家族に会う使命を受け、現在私はアメリカの大地を踏みつけております。 Brooklynの中でもあっちゃんの住む地域は、どことなくヨーロッパの住宅街に似ていて、私の感覚はまだベルギーにいるようだ。 とても静かで空も広く、なんだか本当に私はニューヨークに来ているのだろ…
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当番ノート 第7期
モノクロームの写真はカラーの写真よりもノスタルジックであるという勘違いがまかり通っているけれど、僕の経験上、特定の時間や特定の場所の記憶は「色」にまとわりつくことが多いのではないかと思う。「モノクロ=ノスタルジック」というのは、古い時代の感光材料であるということからの短絡でしかない。モノクロームはすでに色を省くという抽象化が一度なされているために、特定の時間・場所のくびきからは離れやすいのだ。 前…
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当番ノート 第7期
真っ青な月が海を照らす夜のことです。 おかあさんがあかずきんに言いつけました。 「おばあさまのご機嫌がまた大変悪くなったようなの。 あかずきん、今度はお前がお見舞いに行きなさい。」 「 ・・・はい。」 あかずきんはいきたくありませんでした。 でもあかずきんは小さくて、お母さんに逆らうことなんて出来ませんでした。 兄弟たちはただ、だまってあかずきんを見つめていました。 . . . 次の朝、あかず…
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当番ノート 第7期
渋滞を避けた脇道を走って、偶然見つけた港にて 陽の沈む蒼い空を眺めた、夏の夜の入り口。 あなたには、何が見えますか? あなたの眼の奥には、何が映っていますか? あなたの心の中には、何が思い浮びますか? 見る人の記憶に触れる写真が撮れますように。 あなたの言葉が聞きたくて。 —————————…
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当番ノート 第7期
■Shota Ogino以下 S.O)いつから写真撮り始めましたか? Takahiro Igarashi以下 T.I)27歳から写真を撮り始めました。 S.O)えっ、そんなに遅くからだったんですか! T.I)来てもらった展示のときが初展示だったので、そこから逆算して2年前から写真を撮り始めたので27歳からですね。 ■S.O)撮り出すきっかけは何でしたか? T.I)元々、中学、高校とバンドを組んでい…
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当番ノート 第7期
私が詩のようなものを書いていることをいつしかかっちゃんに知れてしまった。 どうしてだろう。 思い返すとそのきっかけが全然わからない。 友達になったきっかけ 人を好きになったきっかけ 文字を書くようになったきっかけ 生まれてきたきっかけ どこがどうしてそうなったかはわからないけどとにかくそうなった。 そうなったってことのほうが大事で今の自分がいることがわかればいいのかもしれない。 どこがどうしてそう…
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当番ノート 第7期
皆さん、こんにちは。 木曜日のしゃもとです。 「腹筋生活」始めました。 いやに腹回りがブヨつく今日この頃、誰のせいにもできない自分の腹に言いきかせました。 ふん。 お前とももうすぐおさらばだぜよ、と。 ぷにゅぷにゅの柔らかいお腹は、それはそれで素敵だし、はっきり言っていいのなら自慢しても良いくらいだ。 もともとバリバリ踊っていた時も私の腹には「ぷに」っと肉がついていた。 決してキン肉マンには慣れな…
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当番ノート 第7期
「あなたは上老尺老、上老尺老、とずっと弾いてるだけでいいから。はい、行くよ」 簡単に言うけど上老尺老(ドレミでいうとソミシミ)って、指使い的に、けっこうキツいフレーズなのだ。僕みたいに薬指を使ってしまう半端者(三線は基本的に薬指を使ってはいけないことになっている)は、薬指と小指がツリそうになってしまう。 しかし、地元の流派の師範である先生とその一番弟子の女性(ムツミさん)に挟まれて、さぁ一緒に弾こ…
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当番ノート 第7期
ゆきのうたごえ 前篇はこちら — 8・ ゆきのこたちのうたごえにとりつかれたみっつむすびさんは ゆきのなかにすっかりうまってしまっていました。 「しっかり!」「だいじょうぶ!?」きづいたひとつむむすびさんとふたつむすびさんが みっつむすびさんをゆきからひっこぬきます。 ゆきのうたごえはうつくしいけれどとらわれてしまうとたいへん。 ゆきのこたちにつつまれてべつのせかいにつれていかれること…
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当番ノート 第7期
望さんに初めて逢ったのは お祖父ちゃんのお葬式でした。 恰幅の良い身体に、優しい雰囲気。 初めて逢う、わたしの叔父さん。 当時わたしは小学生で 九州で見知らぬ親戚に囲まれて、もぞもぞしてたような記憶。 望さんは母の兄で、8人兄弟の5番目。 7番目の母とは歳が近く、特別仲が良いように感じてました。 二度目に逢ったのは、弟の結婚式。 その時もニコニコと優しい顔で、みんなとお酒を呑んでる姿を憶えています…
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当番ノート 第7期
■Shota Ogino以下 S.O)ジョンワンは何がきっかけで日本に来て写真撮ることになったんだっけ? Kim Jeongwan以下 K.J.)昔のことから話すと、小学生から映画観るのが好きで、水泳の練習終わったら、家帰らないでレンタルビデオ屋に行って映画みたり、そこの兄さんと映画について語ったりしてたんだ。 当時は法律で、日本の映画観れなかったんだけど、その時不法ルートで手に入ったものがあって…
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当番ノート 第7期
アパートに暮らすのはこれが二度め。 一度めはコスモスというアパートに住んでいた。 コスモスだからって、秋になったらコスモスの花が咲くのでもなく、宇宙というにはとてもこじんまりした2階建て・8世帯の暮らしが営まれているアパートだった。 新建築の物件で、新婚さんが半分以上を占めていた。 結婚したばかりということもあり、新婦さんたちがゴミ出しや買い物の途中で話をするようになった。 新郎さんの名前から運命…
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当番ノート 第7期
皆さん、お元気ですか? 木曜日のしゃもとです。 今回は忘れられない鳩の話。 しばらく前、私は仕事で日本にいた。 朝早く立川駅から南武線で横浜の方へ通う毎日で、軽くお化粧して外見「お仕事頑張るアラフォー」を装うことを楽しんでいた。 早朝の立川駅は混んでいる。 ペデストリアンデッキ(歩行者回廊)は駅に向かうシャキっとした活きの良い感じの人々が絶えず行き交っている。 多分は私はどちらかというとその日の活…
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当番ノート 第7期
川の写真をよく撮る。ここ数年自宅の尼崎から職場の西宮まで自転車で通っているのだが、その市境に武庫川が流れている。そこを毎日通るので撮る機会が増えた、ということもあるけれど、自転車に乗るようになって自分の体と外界のスケール感が変わってきたことことも関係すると思う。 人力で動くにもかかわらずけっこうな速度を出せる自転車という利器は、自分の体を地べたから乖離させずに長距離を移動できる。電車や自動車では失…
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当番ノート 第7期
1・ これはあるふゆのよるのおはなしです。 「今日はゆきがおりてくるよ、さぁ山のてっぺんにうたごえをききにおいで。わたしがみちをてらしてあげよう。」 ほしはもりにすむ、みつごのこびとのいえのまどをあけてきらきらとまたたきました。 みんな飛び上がってよろこんで、じゅんびをはじめます。 だってこのよるをずうっと待っていたのですから。 — 2・ さんにんがとびだしてきましたよ。 せんとうはし…
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当番ノート 第7期
時折雪が舞う、曇天の空と琵琶湖。 冬の琵琶湖に行きたいとの願いが、空に届いたような1月のある日。 行き当たりばったりで湖岸に着いたら、彼女は鞄をぽいっと置いて いざ水際へと、ハッセルくんと戯れに行かれました。 湖西は琵琶湖と山が近くて、山おろしの風が吹くところ。 打ち寄せる波よりも風が強くて、ざぁっと湖面が鳴いたりします。 擦りガラスのような、鈍色の蒼い湖。 本当に美しすぎて、ため息しか出なかった…
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当番ノート 第7期
Asian Photo Arts Artist’s Profile: Aki Saito ■Shota Ogino(以下、S.)写真を始めたきっかけは? Aki Saito 以下、A.)女、笑。その子に近づくために。 S.)映画、写真、デザイナーなど他にも表現媒体があるけど、なんで写真? A.)好きな子撮りたいとき、映画とかだとライバル増えちゃうし笑。 実際に1on1で被写体と向き合え…
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当番ノート 第7期
365日の365日ぶんの息からどうしても通り抜けることができなかった、わたしがいる。 ゆっくり閉じこもっている場所、そこが、私と本をつないでいるところ。 小学校の時、父に「シートン動物記」を買ってもらった。 とにかく動物が好きだった。 りす、ハムスター、文鳥、セキセインコ、十姉妹。 にわとりとうさぎと柴犬。 ケガしたカラスや雀。 巣から落ちたひなを拾ってきて大きくなってそれがメジロだとわかった。 …
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当番ノート 第7期
皆さん。こんにちは。 木曜日のしゃもとです。 今月10、11日とベルギーの首都Brusselsから車で1時間20分くらいの町、Hasseltの文化会館で子供のためダンスフェスティバル (Krokus Festival) があり、踊ってきました。 5歳児からの小さい人たちを対象にした作品を踊るのはこれが初めてです。 小さい人たちはとても正直なので、上演中、作品の流れの歯車が狂いだすと、すぐさま集中力…
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当番ノート 第7期
動物園の鳥類は風切羽を切って飛べなくしてあるんだ、などと聞くと、僕も一応動物好きのハシクレであるからして(枕頭の愛読書は今泉忠明『世界珍獣図鑑』)やはり胸が痛むわけだが、だからといって僕は動物園の動物は不幸だから、なんていう言い方には全面的には賛同しない。 動物を見世物にしてストレスの多い環境で飼い殺している、とナジる人がいる。 しかし野生地で生息域を狭められ数を減らしてしまった種類を、保護して飼…
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当番ノート 第7期
子供のころ、遊び疲れて足を取られて雪原に倒れこんだ、 あるゆきの日のこと。 空はくぐもっている。 うんと遠くのようで、でも手が届くくらい近くのようで、 なんだか自分がふわりふわりと地上から不安定に浮かんでいるみたいな心地でもって手を伸ばすと、 灰白色の空に溶け込んでいた雪は、とつぜんそのすがたを現して私の手のひらに舞い落ちてくる。 雪が耳のひだひだに絡まり、耳たぶがきゅうっと縮こまっていくのがわか…
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当番ノート 第7期
「あのさ、綺麗な日本の言葉を教えてよ」 ふいにそう訊ねられて 口から出た言葉は、「ゐまち」でした。 「ゐまち」とは月の名前。 平仮名のほうがしっくりくる。 ほっこり座って空を眺めたら、ゆっくりと昇り出す月。 月の名前は、風流だなぁと思う。 その昇る様を、名前を聞けば想像できるんだもの。 その人は、月の昇る空を。 わたしは、陽の沈む空を。 背中合わせに湖岸に立って、綺麗だなーとか寒いねーとか 他愛の…
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当番ノート 第7期
私の言葉よりアーティスト自身の言葉を聞いて、作品を見ていただいた方が、読者の方々にとって「表現」を感じやすいと思い、インタビューしました。価値観や写真表現について素直に、かっこつけることなく、恥ずかしそうに語ってくれました。 ©Tim Gallo TIM GALLO 1984年生まれ。ロシア出身。東京を拠点に写真家として活動中。 ポートレート写真を中心に、被写体の内面を映し出す作品を日々撮りためて…
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当番ノート 第7期
人生でたぶん一番最初にもらっただろう手紙のことを書こうと思う。 幼稚園も年中・年長組になると、盛んに手紙ごっこがはじまる。 小さな子供がはじめて書くひらがなは、左右が逆になったり不思議な絵柄になったりする。 暗号とも受け取れるその奇妙な出で立ちを前にすると、秘密の伝言を解読するような気持ちになる。 こっそりと自分だけに手渡された至福の時間。 子供が自分たちの手でひらく言葉の扉に、名前がある。 鉛筆…
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当番ノート 第7期
みなさん、はじめまして。 しゃもと、と申します。 今週は、今月始めまで行っていたアルゼンチンの話。 あちらは夏でした。 暑いところには蚊がいますので、私たちはブエノスアイレスに着くなり蚊の大歓迎を受け、めでたく肌は刺された所とそうでない所の水玉模様。 直撃を避けるため、直ぐさま私たちは避暑地へ。 蚊は極端に少なくなり、そこでしばらく海からのアルファ波を浴び続け、へろへろな日々を過ごしました。 そし…
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当番ノート 第7期
十一、二歳のころ、一年にも満たない期間だが、父方の祖父母の家で暮らしていたことがある。 田舎の小さな町で、家の便所は今では珍しくなってしまったであろう非水洗式である。そういう田舎の常として、便所は母屋から少し離れた外にあり、山間の町なので冬の夜の寒さも半端じゃなく、心細さと寒さで便所といえばことこと震えていた記憶ばかりが残る。 寒い季節でなくとも、便所にはもっと心震わせるものがいた。 田舎の便所に…
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当番ノート 第7期
手のひらから水が零れるように 記憶は薄れ 時は流れる 写真に残る記憶の欠片は 私に流れた 時の一掬 —————————————————————…
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当番ノート 第7期
わたしは現在「Asian Photo Arts(以後A.P.A.)」という国際色豊かな若手写真家が集うプラットフォームを運営している。 多様な価値観を持つ若手写真家達が集うことで互いに刺激し合い、発表の場を作り出し、作品性を高めている。 現在の主な活動は、Asian Photo Arts.blogにて、1枚の写真と短かな言葉をほぼ毎日のペースでアップすることだ。実にシンプルな活動だが、眼や思想を磨…
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当番ノート 第7期
これは私が4歳か5歳のとても小さかった頃の話です。 左、右、左、まっすぐ行って坂、上りきって左。 家を出てから幼稚園へ行くまでの道のり。 まっすぐ行って左、ちょっと右で左行って、そのあとまっすぐで坂あがって左。 どっちを行ってもいいし、それとは違うほそ道を通ってもいい。 ほそ道はよその家の裏を通って行く。柿の木やびわ、いちじくの木があった。 歩いて5分とかからなかったおかげで、幼稚園から勝手に帰っ…