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当番ノート 第22期
Simplicité:(vieilli) Honnêteté naturelle, sincérité sans détour. シンプルであること。女性名詞。「サンプリシテ」と読む。 古フランス語には、自然に備わっている正直さ、真っ直ぐな誠実さ、という意味が含まれていた。 第9回目にして最終回である今日は、概念的なお話です。 伝わりにくいかもしれないけれども、私が最も大事にしているイメージ、一番…
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当番ノート 第22期
そして生活は続きます。生活のなかで100年が経ちます。トーキョーは光の街。わたしが死にます。大往生です。いい100年だったと振り返る。おおむねいい100年だった。 というのはもちろん嘘で、いまは2015年9月の終わりのほうの夜。高校生のときからの愛媛の友だちと、愛媛とトーキョーのあいだにある夢みたいなところに来ています。夢にはよく、行ったことのない、ほんとうには存在しないだろう景色が出てきて、…
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当番ノート 第22期
「好きなところをお互い10個あげてみよう」という提案に「恥ずかしいから内緒」と逃げたのは、6個目あたりで呂律が回らなくなる様が恐ろしかったからだ。 なぜ、 あなたは今道すがらコンビニに入り、なぜその大きさのそのお菓子を手に取り、なぜその値段を安いとも高いとも妥当とも許容し、なぜあの時間にそれを食べ、なぜその時全てを食べきらず、なぜ次の日は別のお菓子を買い足し、なぜ3日後にようやく全て食べきったのか…
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当番ノート 第22期
#8 認識とイメージ 金木犀の季節だ。どこを歩いても甘い香りが漂っている。つられて昔のことを思い出しそうな気もするけれど、毎年のことなので特に何かと強く結びついているわけではないらしく、ただ初秋の集合体みたいなものがドアの向こうまで来ている気配だけを感じる。それは遠慮深いらしい。 視覚や触覚に比べて嗅覚だけを直接表す形容詞は少ないように思う。ラベンダーの香りやシナモンの香り、のといったように固有の…
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当番ノート 第22期
2ヶ月なんて本当にあっと言う間。 今回で最終回。とても寂しい気分です。 最終回の今日は、「絵を描く」という行為そのものについて考えてみようと思います。 「絵を描く」という言葉は色々な場面に使われているような気がします。例えば「夢を描く」という言葉があるように、未来の姿や物事を想像して絵を思い描いたり、目標なんてなかったとしても明日の仕事の事だったり、あーなったらどうしよう、こうなったらどうしよう、…
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当番ノート 第22期
2010年3月25日の卒業式の朝、 小雨が降る中、 僕は早稲田大学、大隈講堂前の広場で傘をさして 立っていました。 34歳になっていました。 3浪2仮面浪人し、入学して中退、復学と、 高校卒業から16年もかかってしまいましたが、なんとか早稲田大学の卒業式にたどりつくことができたのです。 僕は自分の夢を演説しようとしていました。 誰かに求められているわけではありません。 でも卒業式に出席するだけでは…
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当番ノート 第22期
コラムもどうやら、今日で最後のようです。 来週が10/1になるため。 私はここでお別れとなる。 最後に何を書こうか考えてた。 まず、これから先のブログは、 http://kokisugita.com/ で書いていくので、たまには観てやってください。 (いちおう、宣伝) あなたは、「それは絶対、不可能だ」と人に言われた時、どうしますか? 1、挑戦しますか? 2、やめますか? 私はどちらかというと、「…
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当番ノート 第22期
Bijou:ビジュー、アクセサリー、身につけるもの. 絵画や彫刻において、伝説上・歴史上・神話上の人物と関連づけられた持ち物を「アトリビュート」と呼ぶ。 額に三日月を乗せていたら狩猟と貞潔の女神アルテミス。 天国の鍵を手にしていたらイエスの弟子、聖ペトロ。 大きな袋を持った太鼓腹のおじさんは、唐時代の仏僧布袋。 アトリビュートは西洋美術の用語だけれども、観賞者が画中の人物を特定するアイテムとして、…
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当番ノート 第22期
– – – – – – – – – – – ◆前回までのあらすじ バーの片隅でわたしは作中のわたしの架空の姉に説明する。地震があったことについて、どうして書くのか。書くしかないからか。書くしかなくたって怖かったのだということ。なにが怖かったのか。 – – – – – – – – – – – 止まらなくなってわたしは作中のわたしと架空の姉に話し続ける。どんどんグラスを開けていく。『ロッキー・ホラー…
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当番ノート 第22期
たとえあの子が消えても、私がその子の代わりに愛されることはなかったのだろう。 とにかく嫌いなものが多いと非常に生き辛い。 思春期の私といえば今に比べて「嫌い」が多く、また周りも等しくそうだっただろう。いろんなものや人を、容易に許せない。顔が、声が、態度が、話し方が、先生に褒められるあの子の得意顔が、彼の染めた髪が、規則に従順な彼女の長いスカートが、彼の好きな彼女が、みんな「嫌い」塗れである。他者に…
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当番ノート 第22期
#7 夢の解釈について(2) 〈 私はある植物について論文を書いた。その著書が私の前にある。私はちょうど、一枚の折込みの色彩図をめくっているところである。植物標本集からとってきたような、乾燥した植物の標本が、一冊ごとにとじこまれている。 〉 これはフロイトが自身の見た夢として報告したものだ。この夢を見た日の朝、彼は「シクラメン科植物」というタイトルの、この夢の論文に関係するらしい書物を見たという。…
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当番ノート 第22期
早いもので、この連載も残すところあと1回となりました。 今回はデジタルでイラストレーションを描いていて思ったもどかしい部分を。 前々回ぐらいに記事を書かせていただきましたが、木鳥worksさんからさそっていただき、谷町6丁目の整体院「草枕」さんの店内の壁に絵を埋め込んでいただきました。その時の発注ですが、壁に埋め込むもの、額の中に入れるものと直接壁に絵を描くものそれぞれを発注いただきました。額や壁…
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当番ノート 第22期
1975年、愛知との県境にある、岐阜県の山奥で僕は生まれました。 僕が幼い頃住んでいた家は、小さな山の上にある一軒家で、何代も続いた旧家でした。 藁ぶき屋根に五右衛門風呂、火鉢まであるという、江戸時代のような住まいが僕の原風景です。当時はアスファルトの道路もなく、一番近い店まで歩いて30分かかりました。 母親が嫁いできたばかりの頃、深夜人が近づかない裏の林に幼児がいるのを見かけ、幽霊がでたと…
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当番ノート 第22期
阿蘇山が噴火したと、言われて、騒がれてますが、 阿蘇を経由して帰りましたが、いつもと代わりない日常が、そこにはありました。 先日、活動をはじめて丸10年が経ちました。 ありがたいことに、東北のお世話になっている方々が、ツアーを組んでくださり、 高千穂、阿蘇、山鹿、由布院と、巡っておりました。 道案内役と、神社での奉納実演。 台風や豪雨の中で、大変な中、お越しくださった皆様をお連れして。 最後は阿蘇…
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当番ノート 第22期
Automne:秋。 木々の葉や果物など、様々なものが色づく季節。 山種美術館で開催中の「琳派400年記念 琳派と秋の秋の彩り」展。 季感を大切にしたこの展示には、秋の色が溢れている。 福田平八郎「彩秋」1943年。 福田平八郎のデザイン感覚は、レオ・レオニの絵本に通じるものがある。 都会的で大胆で、色彩豊かなのに過剰さがなくて、とても優しい。 秋の色は、賑やかなのに浮ついていないのが、いい。 み…
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当番ノート 第22期
– – – – – – – – – – – ◆前回までのあらすじ 架空の姉に促され、わたしは春の大地震を回想する。すると回想のなかのわたしに「どうすればいい」と訊ねかけられる。そんなのわたしが訊きたい。どうすればいいんだ、よかったんだ! わたしはずっと怒り続けていたのだ、とおもう。なにを書いたって、過去を変えられるわけでもないのに! – – – – – – – – – – – 「それで、どうする」…
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当番ノート 第22期
「舞香ちゃんは結婚しないの?」と訊かれても、まず相手がいないんだから仕方ない。 ウェディングドレスに憧れたことが無かった。宇宙飛行士になりたいと思ったことが無いように、お嫁さんになりたいと思ったことが無いのである。それでも、「あの人の特別になりたい」と嗚咽しながら地団駄踏むような想いはたくさん知っている。とはいえ「君は彼女でも奥さんでもない、名前に縛られない特別な人なんだ」と言われた時、それはそれ…
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当番ノート 第22期
朝晩は少し寒くなり始めて、季節の変わり目を実感する今日この頃。 この当番ノートももう第7回。 本日は僕の絵本について。 今年の7月より、フランスの出版社『Lirabelle』より僕の初めての絵本「NE PLEURE PAS(英題 : Don’t cry 邦題 : 泣かないで)」が出版されました。 簡単にストーリーをご紹介させていただくと、なぜか自分で檻の中に閉じこもってしまった小鳥を、…
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当番ノート 第22期
荒川修作さんの夢は都市をつくることです。 何千人も住める、人間が死ななくなる天命反転都市をつくるのが彼の夢です。 僕は荒川さんの夢を応援したくて、 天命反転都市を実現するために、 素人のセールスマンのようなことをはじめ、 大企業に売り込みに行きました。 「荒川さんの都市を作りませんか?」 「人間が死ななくなる革命的な都市ですよ。」 でも、ずっと家にひきこもっていた素人の言葉は、社会の人々には届きま…
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当番ノート 第22期
お籠もりへ行ってきました。 今回、お籠もり自体は1人で行なったのですが、 映像制作の会社をされている関根さんに映像を撮っていただくことになり、熊本からご一緒しました。 もともと、ALLWAYS三丁目の夕日や、アンビリーバボーなどの映像制作会社に勤務されており、 3年前に独立され、実際にお会いしたのは先々月。 意気投合し、これから一緒に映像をあつかった作品を創りましょうね!と打合せをした際、 高千穂…
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当番ノート 第22期
Pluie:雨。空から降ってくるもの。 ギリシャ神話で黄金の雨粒に姿を変え、空から降ってきたのは、全能の神ゼウスだった。 意中の娘が幽閉される塔の小部屋へと飛び込み、契りを交わす。 Gustave Klimt《Danae》, 1906. アクリシス王の一人娘のダナエ。 「お前は孫に殺される」と予言を受けた王は、娘に男が近づかぬよう、彼女を青銅の扉のついた塔に閉じ込めた。 しかしダナエの美しさはゼウ…
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当番ノート 第22期
– – – – – – – – – – – ◆おわび 連載の原稿を落としたため、代原として夢日記を掲載いたします。 – – – – – – – – – – – 2015年08月05日 海に近い家に引っ越す。砂浜に建つ白い四角い家。わたしたち姉妹はまだほんの子どもで、引っ越しの後片付けから逃走し、海で遊ぶ。浅瀬でぱちゃぱちゃやる。すぐそばをボロボロの魚が泳ぐ。はじめはボロボロではなかった。白い光み…
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当番ノート 第22期
夏を忘れられないという顔をしていたくせに、知らぬ間に秋の空は熱を失っている。 「こんな感じの景色は、そのうち飽きると思うよ」と言われて1ヶ月半ほど経った。飽きてしまったわけでは決して無いのだけれど、道中広がる草原一つ一つに立ち止まり感嘆すること、遭遇した野生のリスやうさぎをいちいち追いかけること、白鳥一羽を一時間以上かけて丹念に撮影することは、やはりもうやめてしまったかもしれない。 誰かの私に向け…
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当番ノート 第22期
#5 夢の解釈について(1) 「夢の検閲官」という筒井康隆の短編小説がある。フロイトの精神分析学を下敷きに、夢の検閲機能を擬人化したものだ。彼らの役目は、眠りを妨げるような直接的な思想や願望を歪曲させたり象徴に置き換えたりすること。ここでは最愛の息子を亡くした母親の夢を検閲し、あらゆる技を駆使して変換していく様子がコミカルに書かれる。通っていた学校は楽しい思い出のある別荘に、いじめを見て見ぬフリを…
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当番ノート 第22期
気づけばこの当番ノートも、もう6回目。あと3回で終わると思うとなんだか寂しいですね。 最近観た映画のセリフで「この世で一番恐ろしいことは、夢が叶うことだ」って言葉にゾッとしました。 前回プラネタリウムでのイベントをお知らせさせていただきましたが、今日も1つおすすめのイベントをご紹介できればと思います。 9月19日(土)〜27日(日)に三重県・名張市にあるsensart galleryにて、黒田武志…
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当番ノート 第22期
荒川さんの天命反転漫画を描いてからも、 僕は商業誌でプロの漫画家になる道を、模索していました。 僕はいつも、人間と妖怪が出てくる漫画をかいていました。 妖怪の絵は得意だったのですが、人間の絵があまりに下手すぎて、うまく描けず、それが悩みでした。 そのことを、同じように漫画家をめざしている、一週間だけ付き合った女の子に相談すると、 セツモードセミナーにいくといいよと、教えてくれました。 セツは絵の学…
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当番ノート 第22期
昨日から熊本へ出張しており、 今日は今から高千穂の神社へ籠もり、作品制作をしてくる。 今までも神社に居候して制作してきたけれど、それは社務所の中で。 今回は、ご神体のある、とても貴重なスペースで制作をさせていただく。 空海や、良寛。 彼らは仏教や密教だけれども、 私の尊敬する文字を書く表現者たちは、 何年もこうした行をおこなっていると聞く。 ただ、私は修行者でもない。 修験者でもない。 私が書を始…
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当番ノート 第22期
Gâteau:ガトー。お菓子。男性名詞。 《La princesse Néfertiabet devant son repas》,2590−2565 BC. 焼き菓子に手を伸ばすNéfertiabet王女。 古代エジプトでは、埋葬用の壁画に、死者の食事風景が描かれた。 こんなにも昔から、甘いものは人々の心を掴んでやまない。 この世で最も儚げなお菓子は、六花亭の「六花のつゆ」だと思う。 蓋を開けた瞬…
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当番ノート 第22期
– – – – – – – – – – – ◆前回までのあらすじ 嘘のタカダノババ、嘘の映画、嘘の夏を書き、そして雪を軸に嘘の思い出を交えながら一足飛びに大学時代を振り返るわたしに、幻の姉が問いかける。「他には?」「他にって?」「他に、ここにはどんな嘘を書いたん?」わたしはおもう。嘘をつくことと、黙っていることは同じだろうか。 – – – – – – – – – – – ほんとうは、目をつむって…
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当番ノート 第22期
車に撥ねられたが「大丈夫です」と言って起き上がり、カゴが凹んだ自転車を引いて帰ったのは10歳の夏だ。一人だった。 そう実は私、人間ではありません。 という話ではない。思うに、そのとき母や友人がそばにいたら大声で泣いたのだ。手を差し伸べられるまで地べたに倒れたまま立ち上がらず「車にぶつかった」という状況に合わせた悲惨さを、体感以上に体現したはずだ。 声に出すと、感情と感覚が増幅する。締め切り前など、…
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当番ノート 第22期
#5 音とイメージ(2) 音と言葉を考えるとき、韻は大きな要素の一つだ。けれど昔ながらの詩歌の世界では日本語での押韻は欧米の言葉に比べ影を潜めている。古くは漢詩の頃から韻の文化は知られていて、日本語でもこれまでに多くの人が挑戦してきただろうし、昭和期にはマチネ・ポエティックという定型押韻詩を作ろうという試みもあったが、いずれも定着はしなかった。日本語は一つの子音に一つの母音という単純な音節構造のた…
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当番ノート 第22期
去年の夏、うちのアトリエにある坪庭でイラガの幼虫(毛虫)が大量発生しました。今年もやつらはそこにいます。今年もこの季節がやってきましたね。 第5回となる本日は、絵のモチーフに多い星とプラネタリウムのイベントについて。 前回でも書かせていただいたとおり、個人的に描く絵、repairで描く絵もまずストーリーを考えてから絵を描き始めます。自分の中でストーリーを持ち、頭の中の辻褄を整えてから描かないと、や…
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当番ノート 第22期
今から考えれば、僕にとって、それは偶然ではなく、必然としか思えない、出会いでした。 荒川修作 彼に出会わなければ、僕はこんな生き方を選ばず、人間らしく生きていたでしょう。 荒川さんに出会ったことで、僕の生きかた、世界に対する考え方は、根源的に変わってしまいました。 荒川さんは世界的な芸術家であり、建築家です。 大学の恩師が「有名な建築家の安藤忠雄だって、荒川修作には、逆立ちしたって、かなわない」と…
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当番ノート 第22期
東北から台風直下の九州へ帰ってきました。 外がゴオゴオ、ガタガタとなる音を聞きながら、今日は記事を書いています。 神社での居候の話は、来週ちょうど高千穂の神社にてお篭もりをするので、その際にお話しようかと思います。 そのあたりから、作品への感情や考えの話も一緒に。 今回、東北では山形、福島、宮城とまわっていました。 震災の被害のあった場所もみながら、塩竈に立ち寄り、お寿司屋の若旦那を紹介いただき、…
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当番ノート 第22期
Claude Monet 《Saint Lazare》, 1877. (修道院を改装したパリの科学技術博物館。交通手段の棟。) Voyage:旅。距離のある場所への移動。男性名詞。 Louis Antoine de Bougainville(ルイ・アントワーヌ・ドゥ・ブーガンヴィル)は、18世紀フランスの探検家。 1766年、学者達を連れて、世界一周の旅に出る。 マリーアントワネットが”Japon…
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当番ノート 第22期
ある日わたしは一週間のロシア旅行を終えてトーキョーに戻ってくる。トーキョーはロシアのモスクワから飛行機でだいたい10時間、愛媛の伊予三島から高速バスでだいたい10時間の距離にあります。愛媛とトーキョーをつなぐバスの10時間以上をわたしはほとんど眠ってすごすのだけれど、モスクワからの10時間についてはぼんやり窓の外を見てすごしました。空のきれいなグラデーションを見た。飛行機がぐんぐん夜明けに飲み込…
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当番ノート 第22期
バラが100本送られてきたけれど、その人が別の人に101本贈っているのを知っているので素直に喜ぶことが出来ない。 というのはフィクションであり、今のところバラが100本送られるようなロマンチックな人生ではないようだ。 兎角、私の喜びは私の経験上でのみ完結するものではなくなってしまった。初めて得た一等賞であってもみんな仲良く一等賞と知ったなら、勿論そんなものに意味は無い。金色のメダルが欲しいのではな…
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当番ノート 第22期
#4 音とイメージ(1) 眠れないときは羊を数えなさい、と言われる。子供の頃は頑張って数えたが、飽きて目が冴えるばかりで効果があったような気はしない。羊を数える習慣が元はイギリスから来たもので、羊のフワフワしたイメージやのどかな光景、繰り返しによる催眠効果の他に、英語ならではの仕掛けがあると知ったのは大人になってからのことだった。sleepとsheepはよく似た発音のため、one sheep, t…
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当番ノート 第22期
夏も終わりに近づき、夜も少し涼しくなりましたね。皆様、元気にお過ごしでしょうか? 僕はというと、ここ数日食中毒で寝込んでしまいました。いや〜、えらい目にあいました。 第4回となる本日は僕のもう一つの活動である、絵と音と言葉のユニット「repair」についてご紹介させていただけたらと思います。 「repair」は先に言った通り、「絵」と「音」と「言葉」を使った「芸術活動」を目的としたユニットです。メ…
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当番ノート 第22期
「何をやってもうまくいかない時は、神様がくれた長いお休みだと思う。」 昔ヒットした「ロングバケーション」というドラマに、こんなセリフがありました。 早稲田を中退し、フリーターをしながら漫画家を目指していたころの僕は、まさにロングバケーション真っ只中で、何をやってもうまくいかず、どうしようもない日々を過ごしていました。 エロビデオ屋のバイトをしながら、妖怪がでてくる漫画を描いていました。 講談社のち…
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当番ノート 第22期
こんばんは。 杉田廣貴です。 今回は、前回の続きではなく、今出張先である東北にて出会った1人の職人との学びを紹介します。 今、私が主宰する言葉ギフト.comの個人的な宣伝やトークセミナーのため東北にいます。将来的に、こちらでも言葉ギフト展をおこなうつもりでもあります。 震災があったから、東北の方を元気づけようとか、そういった気持ちではなくて。 ただただご縁があって、そのご縁を大切にしていたいから、…
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当番ノート 第22期
Vin:ワイン。男性名詞。 バッカスに祝福された飲み物。 フランスのワインは、多くの銘柄および畑が男性名詞。ぶどうの品種も、また然り。女性名詞のロマネ・コンティやラ・ターシュなどは珍しい部類です。 それでも、人々は、ワインを女性に例えることが多い。ロマネ・コンティの初代醸造長、ノブレ氏は、ワインは女性そのものだと言っていた。 「愛情の注ぎ方、愛情の量によって育ち方に違いが出る。非常に繊細で多彩な性…
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当番ノート 第22期
トーキョーにはミンミンゼミがふつうにいるので最初の夏はわりと驚いた。それまで住んだことのある土地はアブラゼミとクマゼミばっかりで、ミンミンゼミがいるとすれば山奥の涼しいところ、そうでなければミンミンゼミの声なんてテレビのなかの「夏の演出」にきくばかりだったから。だからトーキョーに夏が来ると、ミンミンゼミをきくと、フィクションにいるような気持ちになります。 都会の夏についてのフィクションなら前に…
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当番ノート 第22期
500点以上作品が展示されていたはずなのに、1200万円の値札がついた三角形のことしか覚えていない。 LondonにあるRoyal Academy of Artsで開催されているSummer Exhibitionでは、12000作品の応募の中から選ばれた500作品が展示されている。そういう展覧会には、日本にいる時から久しく足を運んでいなかった。 知り尽くした現実と永久に未知の真実、理解不能な評価と…
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当番ノート 第22期
#3 不滅のイメージ(後) 不滅のイメージは聖と俗のせめぎ合いだ。 死のもたらす距離は故人を誰彼構わず尊い存在にしてしまい、美化を押し進めていく。遠く遠く、向こう側からもこちら側からも力が届かない土地へ行ってしまい、そうしてあらゆる力が無効になって初めてこちら側が一方的に結ぶことができる協定がある。もはやペンも剣も持たず、脅威を失った存在は無条件に理想化されていく。 ところで一方では俗へと引き込も…
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当番ノート 第22期
一週間って24時間しかないんじゃないかと錯覚するぐらい、時間が経つのが年々早く感じてきた今日この頃です。 3回目の本日は、僕の作品にはかかせない印刷について。 仕事で絵を描く場合、大抵は大量生産が前提にあります。デジタルの場合、スキャニングの手間が省けたり、修正も比較的しやすいので、仕事とするにはアナログに比べて有利な面があるかなと思うのですが、1点ものの「芸術作品」という観点からすると、やはり一…
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当番ノート 第22期
1999年の春、 三浪二仮面浪人して、23歳で早稲田大学に入った目的は二つありました。 面白い人にあうことと、 夢を見つけることです。 僕は昔から漫画家になりたいと漠然と思っていたので、 漫画サークルに入ることにしました。 早稲田はとにかくサークル数が多く、1000以上あると言われているのですが、漫画サークルだけでも6つありました。 その中でも弘兼憲史や、やくみつるが出身で、有名な漫画研究会の新歓…
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当番ノート 第22期
2回目のコラムです。 杉田は、元気です(^^) 先週、用事があって、宮崎県の高千穂に行ってました。 日本の心や文化を学びたく、 長崎の神社に居候していた経緯があります。 それで神社・仏閣は私の大切な場所なんですが、 今月末、高千穂のとある神社の神域で、1晩だけお篭もりすることになりました。 8年ぶりではありますが、1人だけは初めて。 1人、無言で書を書き続けるか、何をするか、今は検討中。 そこで味…
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当番ノート 第22期
Fleur:花。女性名詞。語源はラテン語のflos。「最上の部分、最も良い部分」を指す言葉です。 しかし「最上の状態」は永遠ではない。つぼみがほころび、花開き、うなだれ、朽ちていく。 人々は洋の東西を問わず、花の最上の姿を留めようとしてきたようだ。 福田平八郎、初期の作品。「牡丹」1924。 普段のモダンにグラフィカルな福田のイメージとはほど遠い、京都で妖しげな日本画が流行していた頃の作品。 宋・…
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当番ノート 第22期
トーキョーではずっと一人暮らしをしてるので、トーキョーのわたしはずっとひとりです。それまではずっと姉と同室だった。長いあいだ、二段ベッドの上に姉が、下にわたしが眠っていた。そのせいでいまではときどき幻姉がある。「げんし」と読みます。たとえば夜眠れなくて仰向けに携帯電話の画面を見つめながら、体勢を変える。すると携帯電話の画面の光は部屋の壁などを明るく照らしてしまう。わたしはとっさに「あ、姉を起こし…
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当番ノート 第22期
結論、この世の中を一人で生きていくことは出来ない。 28歳なんだからそんなことくらい解っている。 一人で済ませられるのなら、全て一人で済ませる方がずっと楽だと思っていた。「一人でやってしまおう」というのは、何でも一人で背負い込む頑張り屋さんと見せかけて、恩義、信頼、義務、連帯責任、役割分担、期待、それらから逃げるように導き出した答えだったかもしれない。バスケットボールを受け取ったら誰にもパスせずゴ…
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当番ノート 第22期
#2 不滅のイメージ(前) 砂の上の絵が波にさらわれていくように、誰かの死後そのイメージは記憶から少しずつ流れ出ていく。どんな顔だった、どんな手だった?何を着て何を歌い、どんなふうに名前を呼んだ? 時間が流れる限り私たちは死んだ人のことを忘れ、死んだ人もまた私たちのことを忘れる。かぐや姫は月に帰るとき羽衣を着せかけられて地上でのことを忘れる。日本の三途の川も西洋の忘却の河も、その水を飲むと生きてい…
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当番ノート 第22期
どうもお疲れ様です! 日下です。 2回目の今日は、今担当しているお仕事を元に、実際にどうやってデジタルで描いているかを、簡単にご紹介できればと思います。 まず今日ご紹介するお仕事はこちら。 兵庫県は丹波にある酒蔵「山名酒造株式会社」から発行されている季刊誌「酒蔵便り」。年四回発行され、僕は今年1年間イラストからデザインまで担当しています。 ちなみに今回ご紹介するのは夏号です。 簡単に説明させていた…
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当番ノート 第22期
「サッカー選手になりたい」 「漫画家になりたい」 「新幹線の運転手になりたい」 世界には、様々な夢があります。 夢に向かって突き進んでいる人もいれば、 夢が見つからずに悩んでいる人もいます。 そもそも夢なんて必要ないという人もいます。 確かに夢なんてなくても、楽しく生きている人はいっぱいいます。そんなものにこだわる必要なんてないのかもしれません。 でも僕は、夢にこだわり続けて生きてきました。 とい…
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当番ノート 第22期
これから2ヶ月、こちらにコラムを掲載いたします。 といっても、あまりコラムを書かない(苦笑) コラムの書き方が、あまり分からない。 作品づくりは、がんがんやれるのにね(T~T) ですので、 あまりカッコ良く、こちらに書くんでなくて、等身大のコラムを書いていきます(^^) 杉田廣貴といいまして、 プロフィールなどは、 http://kokisugita.com/ でご覧いただければと思います。 私は…
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当番ノート 第22期
Appartement(男性名詞):アパルトマン、マンション、(複数形で)王宮・城館の居住部分。 フランス語のappartementの語源を辿ると、ラテン語のappartiamentumに行きつく。分割されたもの、シェアされたものという意味。 あるいは、19世紀フランスの小説、フロベールの「ボヴァリー夫人」で使われるような古フランス語では、言葉はより親密な意味を持ち、「慣れ親しんだ空間」「個人にと…
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当番ノート 第22期
トーキョーに来てもうだいぶ経ったんじゃないかとおもう。それで、わたしのトーキョーについてを書きます。トーキョーに来てから本格的に続けていることに短歌があるので、短歌についても書けたらとおもいます。ひとつの記事につき、1つか2つの好きな短歌を紹介できたら。 わたしは四国の愛媛からここに来ました。愛媛では中学生と高校生で、吹奏楽部員をしていた。夏はそのころ強烈に吹奏楽の夏でした。中学も高校も毎日が…
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当番ノート 第22期
社会に「あなたはどう在りたいのか」と問われたら、大抵応えなければならない。その機会は面接だったり、尋問だったり、はたまたプロポーズだったり、生きていれば様々な形でやって来る。 28年間生きた東京を出てイギリスに制作拠点を移すことに決めたのは、今年の4月だった。いつかでいいやと思っていた英会話も、海外での制作活動も、今すぐにやってやろうと奮い立った日を覚えている。そして現在、目で見るもの、肌で感じる…
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当番ノート 第22期
最近、またティラノサウルスの姿が更新された。研究が進むにつれて毛が生え、顔は大きく前足は添えもののようになり、今まで私たちが親しんできた獰猛な肉食恐竜のイメージとはかけ離れつつある。 それは「正しい」姿ではなかった。だからといってイメージ自体が急に消えるわけではないが、それはかつて実在した生き物という肩書きを失い宙吊りになってしまった。 やがて教科書の図版は描き換えられ、ジュラシックパークで機敏に…
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当番ノート 第22期
はじめまして、日下 明と申します。 フリーランスのイラストレーター・グラフィックデザイナーをしています。 また、絵と音と言葉のユニット「repair」に所属し、そこでは絵とトロンボーンを担当しています。 朝弘さまよりお便りいただき、こちらに2ヶ月間、土曜日に入居させていただく事になりました。 さてさて、何を書かせていただこうか… 色々悩んだのですが、せっかくなので、僕の絵を描く道具でもある「デジタ…