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当番ノート 第24期
アパートメントの連載も早いもので、今回で最終回。この2ヶ月は、毎週締切に追われているうちに、あっという間に過ぎていった。 連載の文章を最初から読み返してみる。書きたかったことはどれだけ書けただろうか。高校入学後のこと。浪人中のこと。早稲田での学生生活。卒業式に父ちゃんが上京して、友達を交えてみんなで飲んだこと。書きそびれたこともたくさんあったけど、なんとか無事に最終回を迎えられてほっとしている。 …
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当番ノート 第24期
他愛もなく わたしはひどく脆い 真っ暗なわたしの部屋 黄緑色の灯りが ひかえめに点滅している 布団の中にもぐりこみ その声を待った いつのまにか 眠りに落ちて朝が来る 曇った窓 そこによく指で絵を描いた はじめて買ってもらった12色のクレヨン オレンジ色ばかりがみるみる小さくなった 不幸なとき 幸福だったときのことを思い出す 心地よくさせてくれるのは 雨の音と匂いだけ 他愛もなく あなたたち…
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当番ノート 第24期
今回で連載も最後になりました。毎回〆切ギリギリまで入稿を遅らせ続け、担当の方へはご迷惑ばかりお掛けしてしまいましたが(涙)、、こまめに思考を言語化する習慣をいただきこのような機会に感謝しております。そしてなにより毎週書くということがいかに大変なことなのか身に染みております。(笑) さて、手前みそですが以前に少しこちらでご紹介したこともあるノルウェーのデュオ・ユニットPJUSKとオーストリアの音楽家…
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当番ノート 第24期
「音楽があなたにとっての味方でありますように。」 これは私が番組で必ず最後に言っている言葉である。 しかし、いつこの言葉を考えたのかは全く覚えていない。 気づいたら言っていた。本当にそうなのである。 ラジオDJとしてこの言葉を発してきて、 多くの人から「この言葉が大好きです」と言って頂いた。 この言葉には様々な思い出がある。 あるミュージシャンはゲスト収録の時に、この言葉の後にスタジオの中で涙を流…
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当番ノート 第24期
19歳で上京してから、8年経つが、いまだに一人暮らしをしたことがない。予備校時代の下宿から始まり、大学の寮を経て、今の墨田の長屋に至るまで、ずっと誰かと共同生活をしている。今まで家賃が3万を超えたことはない。経済的にも助かるし、周りに人がいる生活は単純に楽しかった。 そんな中でも、一番思い出に残っているのは、早稲田の学生時代に2年間暮らしたシェアハウスだ。大学から徒歩3分、都電荒川線早稲田駅の目の…
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当番ノート 第24期
さすがに一日に二回も面接があると疲れる。家につくなりすぐさまベッドに横になった。 何もする気になれず、スマフォの画面をただいたずらに眺めては、天井の薄いなみなみの模様に目をやり、てきとうな一点を見つめていた。 ふと、スマフォが光り、一通のメールが届いた。今朝、受けてきた会社だ。 「・・・・残念ながら今回はご希望に沿えない結果となりました。今後のご活躍をお祈り申し上げます。」 30社以上受けていた駒…
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当番ノート 第24期
今週はずっとバタバタしており、ご多分に漏れず今回も〆切直前に催促いただきながら書いておりますm(__)m 今回はちょうどICCにてクリスティーナ・クービッシュのオープン・トークが開催されるということで勝手に紹介してみたいと思います。 僕が初めてクリスティーナ・クービッシュの作品に出会ったのはもう10年以上もまえのこと、同ICCにて開催された『サウンディング・スペース─9つの音響空間』という展覧会で…
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当番ノート 第24期
アパートメントの連載が決まった時。 当初は朗読ライブで読むような詩や言葉を書き下ろしていくことをイメージしていた。 そんな時、lynch.のライブを観た。 「この曲に対して私はどんな言葉を乗せるのだろうか。 改めてそのことに時間をかけて深く向き合ってみたいと思った。」 一回目に書いた私のこの気持ちに火をつけたのは、lynch.だ。 2010年4月から2014年3月まで担当した、FM-FUJI「RO…
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当番ノート 第24期
父ちゃんと母ちゃんの馴れ初めの話が好きで、友達にも今まで何度か話してきた。 沖縄本島の北部にある今帰仁村(方言では「やんばる」ともいう)で10人兄弟(5男5女)の七番目、三男として生まれた父ちゃんは、昔から勉強嫌いで、仲間とやんちゃばかりしていたそうだ。他の兄弟はマジメな人が多く、大学を出て、地元の銀行に勤めたり、学校の校長になった者もいるが、父ちゃんは、高校を出たらすぐに、家を飛び出して、土方仕…
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当番ノート 第24期
好きなものは何?って訊かれたとき、京都って答えるようになったのはおそらく彼の影響だろう。 始発で東京駅を出発し、二時間ちょっとで京都駅についてしまう。 「女の一人旅なんて素敵ね」なんて会社の先輩に言われたけど、忙しい夏のこの時期に有休で三連休を取った私に対する皮肉の意味も込められてる気がした。女の一人旅。 荷物は、リュックの中に入れた文庫本、財布、銀塩のかわいいカメラ、行きたい場所を記載したメモだ…
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当番ノート 第24期
雅楽をご存知でしょうか?雅楽は中国大陸、朝鮮半島から渡ってきた千数百年に及ぶ日本最古の音楽で「世界最古のオーケストラ」と言われています。面白いのは複数の弦楽器、管楽器、打楽器によるオーケストラ編成であるにも関わらず指揮者がいないということです。西洋音楽的な主役による絶対的な統括力によって推進するのではなく、各奏者の阿吽の呼吸によって合奏されるというのは非常に日本的な姿勢のように思われます。 雅楽を…
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当番ノート 第24期
ラジオDJとしてデビューした時から、40代になったら本格的に朗読がやりたいと思っていた。 高校生の時、NHK杯全国高校放送コンクールの朗読部門に挑戦した。 放送部の顧問の先生と何度も練習をしたが、コンクール当日はあまりの緊張で上手くできなかった。 今でもキリキリ痛むくらいの記憶。 その時点で朗読がイヤになってもおかしくはないのだが、 何故か私は物語を声に出して読むことが好きだった。 FM802でデ…
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当番ノート 第24期
歌舞伎町の区役所通りを新大久保方面に少し進むと、左手に風林会館というビルがある。風林会館は、新宿歌舞伎町の中でもとりわけ付近のアウトロー密度が高い事で有名な総合レジャービルだ。1990年代の危険な歌舞伎町のイメージの最先端にあった場所で、1階にある喫茶「パリジェンヌ」は暴力団関係者による会合が頻繁にあったり、銃撃事件が多発するなど伝説的な喫茶店として名を轟かせていた。 その向かいに思い出の抜け道と…
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当番ノート 第24期
大きなチャイムが12時を告げた。 僕は勉強をしていた手をとめ、顔をあげると同時に、彼女のくっきりした二重の瞳を捉えていた。お互いの目が合った。いつもと変わらず。その瞬間に目が合うことを僕達はもう既にわかっていた。 僕と彼女は図書館の自習室にいた。そこは、四人掛用の木製テーブルが計八台あり、休日は受験生や読書をしにくるお年寄りで、すぐに席は埋まる。ただ、その日はいつもと違って、ちらほらと空席が目立っ…
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当番ノート 第24期
かつてこの国には『FADER』という音楽雑誌があった。。というわけで今回はこの音楽雑誌FADER編集発行人でもあった佐々木敦さんの著書を取り上げてぜひ紹介したいなと思います。自分の知る限りこれまでご紹介してきた音楽含めたこの周辺の分野(とりわけインプロヴィゼーションとサウンドアート)について同時代性のある内容を日本で初めて書かれた方だと思いますし、自分にとっても影響は大きく、フリーインプロビゼーシ…
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当番ノート 第24期
2016年が始まった。 今年の自分がどう行動していこうかと考えた時に、私はどうしても“難民”のことを考えてしまう。 2015年12月6日。 エイズ孤児支援NGO PLAS 世界エイズデーチャリティパーティーで司会をした。 PLASのイベントでの司会は2008年から続けている私の大事な活動の一つである。 私が番組で社会問題を初めて扱ったのは、1993年。大学2年生の夏。 帝京大学放送研究会TUBEに…
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当番ノート 第24期
新年あけましておめでとうございます。 今年も引き続き、ご一読いただけるとうれしいです。よろしくお願いします。 早いもので、連載も折り返しを迎え、今回を除けば、残すところ、あと4回。 フェイスブックやツイッターで反応してくれる人以外は、誰が読んでくれているか、いまいちわからないのだけれど、年末に出先のイベントでたまたま会った知人が、「連載読んでるよ~」と言ってくれたりすると、「あ、意外とみんな読んで…
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当番ノート 第24期
「今年は良い年だったのかなー」 と、うしろにはてなを浮かべてしまうようなことを、ここにきて不意に考えます。少なくとも嫌な年ではなかった気はしますが、ただこれは時間の仕業で、都合よく嫌な記憶だけが薄くなってしまったからなのかもしれませんし、よくよく思い返すと嫌な年だったような気もします。忘れているだけで。 12月31日を担当するのも何かの縁ということで、ふと立ち止まって、今年あったちょっとした自分の…
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当番ノート 第24期
今年はやたらとアルバムリリースが重なりました。自分の場合は物書きなんかと同じで作品毎の題材と内容に合わせてレーベル(作家でいう出版社にあたる)を決めるという形なので、結果として各レーベルのリリーススケジュールが重なったということなのですが、それでもそれなりにパブリシティやるとなると結構大変だったりします。。が、我が子の晴れ舞台に何もしない親でいるわけにはいきませんからねっ。殆どがヨーロッパのレーベ…
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当番ノート 第24期
ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。 今年はこの曲と生きたと言っても過言ではない。 ストレイテナーを初めて知ったのは、ラフォーレミュージアム原宿で開かれたイベントライブ。 そのイベントに出ているART-SCHOOLを観に行き、彼らの出演が終わって帰ろうかと扉に手をかけた瞬間、 私の後ろで鳴っている音に惹かれた。 えっ?何??と思って振り返ったら、ステージにはヴォーカルとドラムのみ。 えっ…
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当番ノート 第24期
実家から荷物が届いた。母ちゃんからは、クリスマスプレゼントのニット帽と手袋。母ちゃんはけっこうマメで、誕生日やクリスマス、バレンタインと毎年、何かしらプレゼントを送ってきてくれる。実家からの贈り物は、そこに言葉がなくたって、いつも温かい気持ちにさせてくれる。 父ちゃんは自家製の油みそと豚の燻製、島らっきょを送ってくれた。父ちゃんの手料理は絶品で、今までシェアハウスやCan’s BARな…
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当番ノート 第24期
改札を出てきた僕に気付いたみち子さんは、軽く会釈をしにっこりと笑っていた。 ベージュのダッフルコートに白のスカート、緑と赤の混じったチェックのマフラーという格好の彼女に、ごめん待ったかな、と訊くと、ううん全然だよ、と静かに言った。いかにも初めてのデートだというやり取りを済ませ、新宿から六本木に向かうため地下鉄を目指し歩き出した。 「今日はどんな授業だったの?」 口を切るのは決まって僕のほうだ。 「…
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当番ノート 第24期
先日、作曲家の友人とコライトしていた際にふと言われた「随分いろんな音楽本読むんですねぇ」の一言。学生の頃から読書自体は結構好きなほうでいまでも比較的様々なジャンルの本を読むことが多いので、特別に自覚は無かったのですが確かに言われてみれば結果として結構音楽本が多いかもっ。 というわけで今回はそんな数ある音楽本の中から、読み物として(ディスクレビューなどのカタログ的なものを除いて)これは!と思う面白か…
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当番ノート 第24期
パソコンの画面を見つめる。 画面に写る楽曲の秒数を見ながら、キーボードを叩いて文字を綴る。 この連載の原稿を書いていて、ふと気づいたこと。 曲紹介でこんなふうに言葉を書いたのは初めてだ。 私の曲紹介の言葉は、手書きだ。 CDプレーヤーのタイムカウンターを見ながら、紙に曲紹介の言葉を書く。 キューシート(ラジオ番組の進行表)に書かれた、 アーティスト名と曲名、イントロの秒数、完奏の時間が書かれた部分…
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当番ノート 第24期
自分の過去に関する記憶がとても曖昧だ。誰かに昔のエピソードを聞かされると、「え、そんなことあったっけ?」と新鮮な心持ちになる。人間は一度覚えたことは決して忘れないというが、何かのきっかけがないとなかなか思い出すことができない。三日も経てば、たいていのことは忘れている気がする。意識的に残したり、思い起こす作業をしないと、今の僕のように、いろんな場所で、いろんな人と出会い、いろんな経験をした、というふ…
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当番ノート 第24期
仕事から帰ると、あきはベッドの上から窓の外に浮かぶ満月を見ていた。 部屋に入ると、あきは振り向きもせず 「また行ってきたの?別にかまわないのだけれど、その匂いはもうここにはいらないのよ」 とおかえりよりも先に言い、白いワンピース姿で、開いた窓の縁に両肘を乗せ、まだ満月を見ていた。師走の冷たい風が窓から流れ込んでくる。付き合ってから二回目の冬だ。 たぶん一生のうち行くことはないだろうと思っていたキャ…
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当番ノート 第24期
いよいよ年末感出てきました今日この頃。ちょうど一昨年前のこの時期、「都市と自然」をテーマにゲストディレクター坂本 龍一氏を迎えて開催された<札幌国際芸術祭2014>のプレイベントでゲスト講師としてフィールド・レコーディングを用いたサウンドデザインのワークショップをやってきました。(もう札幌は雪が降っていましたっ)札幌のサウンドアーティストJunichi OGUROさんと共に坂本龍一氏が審査する…
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当番ノート 第24期
2015年3月21日。 FM-FUJIで震災特別番組 学校訪問「10代ラジオ」が放送された。 この写真は、共に番組を進行したフォトジャーナリストの佐藤慧さんがスタジオ収録の様子を捉えた一枚。 番組では、世界各国を取材している佐藤慧さんの講演を聞いた中学生が自らの感性でラジオから言葉を伝えた。 ディレクターから、この番組で最後にかける曲を選んで下さいと言われた。 震災特別番組、10代とのラジオ、それ…
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当番ノート 第24期
何かの拍子に僕が「ままならないなあ」とつぶやいたのを、そのとき一緒にいた後輩の高田が「喜屋武さんっぽい」といたく気に入り、この間、こんな似顔絵を書いてくれた。友人たちに見せたところ、「おー、似てるー」とのリアクション。寝起きとはいえ、もじゃもじゃの髪、無精髭、半開きのうつろな目にジャージ姿はお世辞にも清潔感があるとは言い難い。自分のだらしなさは自覚しているつもりだが、こうしてビジュアルで突きつけら…
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当番ノート 第24期
あたしが星を見ることが好きになったのは、叔父である忠おじちゃんの影響だ。 母子家庭で、まだ小学生になったばかりのあたしは忠おじちゃんによく預かってもらっていた。あたしとママが住むアパートから歩いて10分くらいの距離に忠おじちゃんの家があり、仕事で遅くなるので、学校からそのまま寄るように言われていた。 最初は、ママが帰ってくるまで一人でお留守番する、と言って泣きわめきながら家中を走り回ったものだ。よ…
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当番ノート 第24期
今回ご一緒させていただいた出演アーティストについてもいくつか紹介しておきたいなと思います。まるで自分の心の中を覗いたとしか思えないくらい好みにストライク!なラインナップとなっており、これまでに来日することのなかったベテラン勢も多く参加する正直気楽にお客さんとして楽しみたいと思うような内容でした。 ■FRANK BRETSCHNEIDER Olaf Benderとともにドイツのエレクトロニック・ミュ…
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当番ノート 第24期
私がラジオDJになったのは、音楽を伝えたい。その気持ちだけだった。 だから、私は、曲紹介に何よりも力を注いでいる。 ラジオDJが伝える曲紹介の言葉。 その言葉にをどれだけの時間をかけているか。 曲に対して思い入れが深ければ深いほど、その言葉をどこまでも悩む。 イントロで話すほんの数秒の曲紹介に、何時間も何日もかけることを、 私は何度繰り返してきただろう。 例えば、L’Arc~en~Ci…
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当番ノート 第24期
旅をするように生きたい。 いつからか、そう思うようになった。 19歳で石垣島から東京に出てきた僕は、大学卒業後、就職しないで、ふらふらと気の向くままに生きてきた。夢もない、金もない、女の子にもモテない、というとだいぶパッとしない生活だが、様々な人の縁に恵まれたおかげで、楽しく、ほがらかに日々を送ることができた。そして、気がつけば、いつの間にか28歳になっていた。 「なんで自分はここにいるんだろう?…
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当番ノート 第24期
ベッドから起きないと止められない位置にアラームを置いたのは昨日の僕だ。 三枚の衣服を重ね寝巻きにし、さらに羽毛布団二枚に包まれても十二月の八王子はとても寒く、もう一度目を瞑ればしばらく帰ってこれない。 AM8:00と表示されたスマートフォンを止め、我慢できずに暖房をつけた。 一人暮らしの朝に食べるものがあるほど、きっちりとした生活を送っていない僕はコップ一杯の水だけを飲んだ。東京のあまり美味しくな…
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当番ノート 第24期
鈴木 悠平さんからの依頼により運営するウェブマガジン「アパートメント」の「当番ノート」コーナーで約2カ月間(計9回)に渡って連載記事を書いてゆくことになりました。何かと気ぜわしい年の瀬によくわからないまま引き受けてしまったせいで早速初回の記事掲載が遅れそうになりあわや失態というスタートですが(笑)、どうぞよろしくお願いします。 内容については基本的に自由に!とのことらしいのですがCINRAでの過去…